第62話 勇者たちをは元の世界へ戻る決意をする
――勇者side――
王国では、俺とユキコを殺すための断頭台が用意されていると聞いてゾッとした。
本当に俺達は要らなくなったのだと理解できたからだ。
元の世界に……戻れるだろうか。
カナデに頼めば、戻らせてくれるんだろうか。
分からない……ただ、頼みの綱はカナデだというのだけは分かった。
「ねぇ……私たちなんで王国に命狙われてるの? 悪いことしてないよね?」
「ああ、悪いことは……してない筈だ。魔王討伐してないからかもだが」
「……なら、魔王倒せば?」
「僅かに可能性が上がる程度だろう」
そう、魔王討伐をすればもしかしたら……。
だが待ち構える上に登る為のダンジョンは、魂が抜けるような場所だった。
あんなところを通ったら廃人になっちまう……。とてもじゃないが扉まで行きつく事なんて不可能だ。
やはりカナデに助けを求めよう。
キヌ様の傍に居るか、無理なら元の世界に戻して貰おう。
それくらいしか……生き残る道は無いのだと悟った。
それから俺は日々カナデが来るのを待った。
二週間目に差し掛かろうかと言う時に、やっとカナデを見つけて駆け付けた。
「カナデ!!」
「おや、断頭台が見えている勇者じゃないですか」
「話がある。大事な話だ」
「ふむ……。私も暇ではないですが、話位は聞きましょうか」
「すまない。助かる」
そういうとイートインスペースの端に座り、俺とユキコは「キヌ様の傍に居られるならそれが一番だが、無理なら元の世界に戻りたい」と言う旨を伝えた。
するとカナデの婚約者だというピアと言う女性が怒りの形相に変わったが、カナデが手を出して止めると、彼女は溜息を吐いてジト目で俺を見てきた。
「話は分かりました。キヌ様の傍は無理なので、元の世界に戻るプランで行きましょうか」
「ほ、本当か!?」
「ただ、禊の時間は必要だと思いますし、まず貴方、結婚しているでしょう?」
「ああ、ユキコと結婚してるが」
「離婚して貰います」
「「は?」」
「結婚したまま元に戻すことが出来ないんですよ」
そう呆れた様子で語ったカナデに、俺達は頷き合うと「離婚する」と口にする。
元々近場にいい女がいなかったからユキコとミツリと結婚していただけで、体関係はユキコとはあるが、ミツリとはない。
それに、子供も出来なかったんだし、問題ないだろう。
「出来るだけ迅速に、早めに帰って頂きたいので特例ですよ?」
「すまない!!」
「何せ、人間国は今大変ですからね……。あちらこちらからスタンピードが起き、街や村は襲われて屍の山。勇者はその間遊び惚けていたんですから」
「そ、そうなのか!? 冒険者達はどうした!! 冒険者達がダンジョンで……」
「その冒険者達は何処にいますか?」
「「……」」
流石に気づいた。冒険者達は確かにここ魔王領ダンジョンに入り浸っている。
外でスタンピードが起きた事を知っている者は少ない……。俺だってカナデに聞いて初めて知ったくらいだ。
「な、んで……冒険者達は……」
「貴方もしていたのでは? 魔物討伐の依頼は国から来ていたでしょう?」
「へ……?」
「他の冒険者も一緒ですよ。各ギルドから、国から魔物討伐の依頼は来ていたんです。でも、それを破り捨ててこのダンジョンに居続けた」
「あ……」
「これも、魔王様が元魔王を不意打ちで殺した弔い合戦の一つなんですよ。元凶はあなた方ですね」
そう笑顔で答えたカナデに、俺は立ち上がろうとして膝から崩れ落ちた。
俺の所為で沢山の人が死んだという事になる……。
勇者? 俺が? 笑わせる……大量殺人者と同じじゃないか。
国王が俺達を断頭台に送るのも無理はない……。
「そ、そうか。俺の、俺達の所為で……」
「結局は結果論ですよ。元魔王を殺さなければこうはならなかったでしょうが、どの道勇者は使い捨ての駒。役に立たなくなれば放置するか、殺すに決まっているでしょう?」
「――っ!」
「だから元の世界に戻れば済んだ話なのに……厄介ですねぇ」
そこまで言われて、自分が一体何をしでかしたのか……そして俺と言う存在がこの異世界に居続けたことで起きてしまったスタンピードの事も……全ての元凶が自分にある事を知り体が震える。
ど、どうしたらいいだろうか。
ユキコとは離婚するが、人の命の責任なんてとれやしない。
「心配せずとも、魔王様がお戻りになったら元の世界に戻る手配をしますよ。あなた方はこの世界に居ても邪魔なので」
「「邪魔……」」
「存在自体が災害なんですよね」
そこまで言われては、最早言葉は無かった。
周囲の笑い声も、話し声も耳には届かない。
ずっと耳鳴りがして――ツウッと鼻血がでた。
「魔王様が帰宅するまでは節約しながら魔王領ダンジョンにいることですね。最果ての街に戻れば殺されますよ」
「あ、ああ」
「そう、するわ」
「それから、魔王様は数日前から人間の王国の城へ赴いているので暫く留守です。その間は出来るだけ三階には行かず、二階か一階でお過ごしください」
「分かった」
こうしてカナデは立ち上がりいなくなると、俺とユキコは座ったまま沈黙し、お互いに乾いた笑いしか出ない。
自分たちが全ての元凶だと言われたらそれまでだ。
だが、そう差し向けたのは――?
「人間国、魔王が行って大丈夫か?」
「寧ろ、人間国の王様の方が大丈夫なのかしら……」
「ああ、それもそうだな」
そう語りつつ炭酸のジュースを飲むと、俺とユキコは何もせず一日ぼーっと冒険者の様子を見て過ごした。
この状態を作ったという魔王とは一体……。
「人間の国を亡ぼす為にこのダンジョンを作ったのだとしたら……」
「私たちと同じ……異世界人?」
「はは、まさか……な」
――俺は脳裏に一人の美女を思い浮かべ、必死に頭を横に振ったが不安は拭う事は出来なかった……。
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