【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!
第59話 大事な【何か】を放置し、キヌマートの事で荒れる王国③
第59話 大事な【何か】を放置し、キヌマートの事で荒れる王国③
――王国side――
何か、足元から崩れていくような感覚。
それが何なのかは分からないが、玉座にドサリと座ると頭を抱えて大きく溜息を吐いた。
何故、どうして、あの精鋭部隊に一体何があった?
そう思っても答えは出ず、精鋭部隊の金庫を凍結しようものなら間違いなくワシを殺すと言わんばかりの殺気を放っていた。
国庫から出している金だぞ?
国の金で魔王領に金を落とすとはどう言う了見だ!!
――そう言えば勇者たちも!!
「誰か!! 誰かいないか!」
「はっ!」
「すぐに国庫を調べてこい!! とんでもないことになっているかもしれん!! 財務大臣と一緒に行け!!」
「わ、分かりました!!」
そう叫ぶとワシは震えながら玉座に座りなおす。
国庫は沢山あったのだ。
しかし、最近のスタンピードが起きそうな地域に騎士団を派遣したりなんたりで随分と使ってしまった。
今も沢山の書状が届くが、最早手におえない状態になっている。
冒険者ギルドに、魔王領に行っている冒険者を戻すよう指示も出したが、冒険者達はその通達を無視したのだ。
これでは各地でスタンピードが起きる!!!
何としても阻止しなくては!!
それから暫くして顔面蒼白の財務大臣が謁見の間に駆け込んできてこう叫ぶ。
「ここここ……国庫がありません!!」
「なんだと!?」
「もう殆ど残っておりません!! 一体何に使われたのです!? 誰です使ったのは!」
使ったのは精鋭部隊と……勇者達!!
その事にハッとなってワシも立ち上がり国庫のある金庫へと走った。
無論王太子も財務大臣もついてくる。
金庫に到着し中を確認すると――あれだけあった、腐る程あった国庫が……。
思わず膝から崩れ落ち、消えた国庫に言葉を無くす。それは王太子もだった。
「な、ぜ」
「父上は仰ったじゃないですか。勇者たちに『金は自由に好きなだけ使っていい』と」
「言った……な……」
「その結果がこれですよ……ははは、勇者じゃなくて国を亡ぼす悪魔だったんですか?」
「~~!! 勇者を討伐せよ!! 絶対に許してはならん!!」
「ですが勇者は魔王ダンジョンですよ」
「くっ!! ならば勇者たちの使う金を凍結せよ!!」
「はっ!!」
取りあえずはこれでいい。
後は精鋭部隊の金庫の凍結だ!!
直ぐに復活はしないだろう国庫だが、国全体が安定すればいずれは――!!
「国の安定に全力を注げ!! わずかに余った国庫は使えないが、後日払いだと言って何とかしてこい!! くそ……キヌマートどころではないぞ!!」
「陛下!! すでに数か所スタンピードが起きる前触れです!!」
「くそ!! 民を非難させろ!! 村や町を捨てさせるんだ!!」
「受け入れ先がありませんよ!」
「今からではもう遅すぎます!」
「あ、あああ、ああああああ!!」
ここにきて一気に現実が襲い掛かってくる。
何時までもキヌマートに気を取られていたせいで、大事な国内に目を向けられなかった!!
急ぎ執務室に走り、溜まっている書類に王太子と一緒に目を通していく。
どこもかしこも危機的状態で、最早我が国でもどうすることも出来なかった!
「た、他国に要請を」
「勇者がいるのにか? と言われるのが落ちだろうが!!」
「しかし!!」
「勇者討伐を国を挙げて伝えよ!! 国家の反逆者だとな!!」
「はっ!!」
そう言えば大臣たちは走り出し、召喚した勇者たちを国家反逆罪の刑に処した。
これで他国に救援要請ができる筈だ。
間に合わなくとも、スタンピードには間に合わなくとも、支援はして貰える筈だ!
「隣国に救援要請せよ!! それから城からほど近いダンジョンには騎士団を!」
「はい!!」
「他の街や村は諦めよ……っ!!」
「「「「陛下!!」」」」
「国が亡ぶよりはマシであろう!?」
そう情けなく叫ぶと皆押し黙り、諸々が後手に回ってどうしようもないことに、今更になって気づいたのだ。
慌てたところで、国が亡ぶのだけは防がねばならない。
その為には隣国に救援要請を出すのは仕方ない事。
数百年前ならば獣人国にも救援を出せたが……今では断交して長い。
とてもじゃないが助けを求める事は出来なかった。
ワシの代で亡ぼうとする人間の為の王国……。
その切っ掛けは沢山あるが、最大の危機を作ったのは召喚した勇者達!!
おのれ、おのれ、おのれ――!!!!
「勇者たちを捕えたら斬首刑とする!! 断頭台を用意しておけ!!」
「はっ!!」
――こうして、人間王国に召喚された勇者たちは、全ての責任を負わせるという意味も込めて国家反逆罪とし、今後追われる立場となった訳だが……それらを一部始終、魔王たちが見ていた事には気づきもしなかった。
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