第31話 最果ての村の村長と話し合い、協力体制を作り上げ……

最果ての村の村長は、アタシが魔王と知って腰を抜かしていた。

まさか魔王が住み着いているとは思わなかったからだろうねぇ。



「で、この最果ての村から魔王領のダンジョンまでの往復の馬車を出したいんだよ。無論協力してくれるだろう?」

「そ、それはその」

「村の活性化にも繋がる。これからドンドン冒険者がやってくるよ? 大金を持った冒険者の為に宿屋を作って御もてなしするのも、一つの村の活性化になると思うんだけどねぇ?」

「そ、それはそうですな!!」

「んふふ……お互い利益をだそうじゃないか。共存ってのは、大事だろう?」



そう伝えると村長は顔を青くしながら「その通りで! その通りで!」と壊れた人形のように口にしていて、アタシは溜息を吐くとトントンと机を指で叩いた。



「こっちはもう準備は出来てるんだよ。後は村長次第。解るね?」

「お、お好きにして下さい!!」

「話が早くて助かるよ~! ダンジョンまでの乗合馬車は金貨1枚、キッチリ冒険者に伝えておくれ!」

「はいいいいい!!」



こうして最果ての村の村長から乗合馬車の許可を貰い、既に出来上がったダンジョンに冒険者を運ぶ手筈は整った。

既に大きな乗合馬車が数台待機しており、後は金貨1枚でダンジョンまで連れて行くようにデュラハンに伝えると、大きく会釈して金貨の入る袋を腰に添えている。無論聖魔法に弱いデュラハンの為に、聖魔法を弾き返すアクセサリーもつけているので守備は上場かね。



「さて、後はダンジョンの方だが――」



そう言ってフォルの待つ家に入り、軽く挨拶をしてから家経由で魔王城に戻れば、各扉から好きな階に行けるようにしている為、動きやすさが良くなった。

曾孫のカナデが手掛けたダンジョンには、一階に受付があり、奥へ入ろうとすれば透明な強化ガラスの自動ドアがあり、そこで受付して【魔王城カード】を得た者しか中に入れない仕組みになっている。

無論拠点の中だ。壊す事なんてできやしない。

強化ガラスから見えるコンビニは、知っている奴にしてみれば耐え難いほど魅力的に見えるだろうよ。ヒヒヒ。


牛丼屋やカレー店、パスタ専門店にちょっとお高い焼き肉店。焼き肉店での酒は無論アタシ達のいた世界の酒が用意されている。

酒が大好きな冒険者の為に、酒屋も用意してある。

無論売っているのは一本に絞ろうという事でビールのみ売っているがね。

もちろん法外な値段設定だ。

酒好きなら嫌でも買うだろうし、日本の酒は美味いからねぇ……ヒヒヒヒヒ!



「守備はどうだい?」

「曾婆様。ええ、守備は上々。いつでも冒険者を受け入れられますよ」

「簡単なカジノ風にって言ったら、まさかこうなるとはねぇ」



魔族に直ぐカードなどを覚えさせるのは無理だと判断したカナデは、スロットマシーンを主軸に、ジャラジャラと煩いあの店を再現した。

ドツボにハマれば抜け出せないのは間違いないだろう。

カジノはこれ一つで十分なのかと聞いたら、「これだけでも奴らにとっては刺激になるでしょうね」と笑っていたので、任せることにした。


そして何よりゲーセンだ。

女性向けや若い層の為に作られたゲーセンは兎に角広い。

クレーンゲームに可愛いグッズ。

コイン落としにダンスゲーム。

こちらも煩いったらないが、ドンドン金を落とせるようにしてある。

可愛く映れる写真の機械なんてかなり置いてあり、女性たちは挙って写真を撮っては盛り上がるだろう。


そうなると――このダンジョン内では厳つい装備で歩くのは似つかわしくなくなる。

その為、女性服、男性服と、アタシ達のいた世界の服が売られていて、それもまた高い値段設定だが、頭からつま先までオールセット販売にしているので、購入してオシャレを楽しみながら過ごせるという訳だ。



「一階は上々だね。二階の冒険者専用の温泉宿や高級ホテル、普通のホテルにカプセルホテルも見てきたが、あそこも中々だった」

「ありがとうございます」

「コンビニもあるから十分だね」

「ええ、大きめのコンビニを3軒用意しました」

「よしよし……金をドンドン落として貰わないとねぇ」



クスクスと曾孫と笑い合い、第三層は雰囲気も夜の街を想定して作られていて、サキュバスやインキュバス達の犇めく娼館エリアになっている。

その為のエロい下着売り場も作っていて、サキュバスやインキュバス達にはとても好評だった。

無論魔物専用のコンビニは各所にある。

後はお気に入りの娼婦や男娼に貢ぐための店も多く存在し、お気に入りになれば外に連れ出せる事も可能だ。


また、警備に関しては武器ではなく銃を使わせるようにしている。

所謂拳銃だね。

武器を持って襲ってきた輩は速攻足を狙われて【魔王城カード】を没収される。

そうなれば、金貨500枚を支払わねば二度と入ることは許されない。

銃をリザートマン達に教えるのは、ピアとトッシュに任せた。

警備を行うリザートマン達の為に、腕が鈍らないように射的場だって作り上げた。

ドンドン上達しているだろう。



また、モーダンに頼んでいた計算に強い魔族や魔人も用意され、彼らが日々入ってくる金の管理を行う。

金の持ち逃げ禁止だが、毎日馬鹿になりそうなほどの金を目の前にしても大丈夫な者を選んだそうで――魔人となったドラゴン達だった。

金管理はドラゴン達に頼んで、後は冒険者を待つのみとなったが、意外と早くこの魔王領に出来たダンジョンは目についたようで、デュラハンの運転する乗合馬車に乗って冒険者たちが次々訪れるようになるのに、そう時間は掛らなかった。

アタシとカナデは冒険者の振りをしながら様子を見る事が出来たし、受付を済ませて【魔王城カード】を手にした冒険者たちが次々ダンジョンに入ってくると、真っ先にコンビニへと走っていく。


カナデは各所の売り上げが見れるタブレットを手に「いい傾向ですね」とホクホク笑顔で口にし、冒険者たちが金を落としているのが面白いらしい。

さて、冒険者にとってこのダンジョン――どう見えるかねぇ?





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