第30話 鏡で見た勇者の屑っぷりに引きつつ……ダンジョン作りを始める

勇者たちは、どうやら別のダンジョンに潜っているようだった。

回復役もおらずポーション頼りであのデバフ……何処迄いけるかねぇ?



「おやおや、随分と弱い魔物で苦戦しているねぇ」

「適正レベルじゃないんですよ。自分たちのレベルが60あるからといい気になって向かった先はデスロードですよ。ほら」

「ああ、魔法使いが先に死んだね」

「焦ってる愚者を見るのは気分がいいですね……」

「ヒヒヒ」



あの敵の適正を知っていれば狩りはしないだろうに、魔物の適正も知らないのかい?

勇者たちが倒していたモンスターはリンク、つまり群れになって襲ってくるんだ。

その為エリア周辺にいたモンスターたちは挙って勇者たちを袋叩きにして居る訳だが――。



「あ――死んだね」

「角が痛い所に刺さりましたね。これでENDです」



ドサリと倒れる勇者に周囲にいた冒険者が敵を蹴散らしながら進んだが、勇者は蘇生魔法を待つことなくホームへと消えていった。

新たに仲間を手に入れた様子もない。と言うか、勇者と一緒に行きたがる者もいないだろうねぇ。



「今のダンジョンのモンスターの適正はレベル60で間違いはない。だが勇者たちのデバフを考えれば40レベルで妥当なんだという事を本人たちは知らないのかい?」

「知ろうとも思わないでしょう。レベル=自分たちの実力と思っていますから」

「殆ど元魔王を倒したことで得た経験値だろう?」

「ええ」



戦闘も碌にしたこともない勇者たちにとって、ダンジョンでのレベル上げはキツイ以外の何物でもない上に、回復係がいない。詰んだね。

かといって、回復係を何処かから仕入れてくる可能性もある。

例えば奴隷。金を自由に使っていいと言われているのなら可能性は高いだろう。

そこに頭が働けばの話だが――。



「この魔王領のモンスターのレベルは40から80レベルだ。勇者が入ろうと思えばチャンスさえあれば入れそうだね」

「寧ろ、入るために野良パーティーを組むくらいは平気でしそうです」

「ああ、野良で強い弱い関係なく集まってパーティーを組んでこっちに向かうって奴かい」



確かにその考えは思い浮かばなかった。流石カナデと言ったところだろうか。

魔物除けでも使えば魔王城まで来ることも可能か……。



「魔物除けを使った馬車を魔王領に用意して金をとる……ってのは、どうだい?」

「ああ、ワザと呼び寄せるんですか?」

「強い奴らはパーティーを組んで行けばいい。だが金を持っているがレベルが足りない奴もいるだろう? その為に魔王領限定の馬車を用意するのさ」

「それは良いかもしれません。デュラハンなんかに馬車を引かせればいいですし」

「目立つだろうねぇ……」



だが、こちとら魔王だ。

そして魔王領だ。多少刺激のある見た目がある奴が馬車を引いていても問題はない。

デュラハンには聖属性を跳ね飛ばすアクセサリーでも渡しておけばいいだろう。

そんな話をしていると、場面が変わってホーム前でギャンギャンと喧嘩している勇者と魔法使いを見ることが出来た。



『なんで適正レベルの所に行ったのに負けんだよ!! 可笑しいだろ!!』

『知らないわよ!! ミツリがいないのに無謀に突っ込むから!!!』

『俺が悪いっていうのかよ、この阿婆擦れ女が!!』

『暴力は止めて!!』



髪を引っ張り足蹴にする姿を他の冒険者や庶民たちが遠巻きに見てヒソヒソとしているが二人は全く気付いていない。

最後はガッ!! と顔を殴られてヒンヒン泣く魔法使いの背中を蹴り『見せもんじゃねーぞ!!』と周囲にブチ切れる勇者。

此れのどこに勇者が似合うというのか甚だ疑問にすら思う。



「勇者、屑だね」

「ええ、屑なんですよ」

「やだねぇ。勇者だけは城やダンジョンには入れないよ?」

「撃ち殺してやりたいですね」

「だが、勇者ご一行はお帰りくださいってのは良いかもしれないね」

「ははは! あとは徒歩でお帰りくださいですね」



ダンジョンの設定が出来た筈だ。

【勇者】と、【勇者の仲間である魔法使い】は入れないように設定してやろう。

目の前にコンビニが見えるのに入れないって苦痛を味わって貰おうかね、ヒヒヒ。


じゃあ乗り合い馬車ってのも、一応計画に入れるか。

一人金貨1枚にすればそれなりに儲かりそうだしねぇ……。

後はダンジョンでガッツリ金を落として貰えれば……。



「やる事は増えたね! 誰かモーダンを呼びな!!」

「はい!」

「デュラハンの確保も頼むよ! よくよく調教しな!」

「魔物ですので、魔王様のいう事は聞くかと思います!」

「よしよし……。多めに確保してきておくれ。行き帰りの馬車で使いたいからね」

「はい!!」



そう言ってマントを翻してヒールをカツカツ言わせながら支持を飛ばす。

その後ろをカナデが付いてくる。

曾孫だがアタシの後継者であることを、シッカリと魔族や魔人共の目に焼き付かせないとねぇ!!



「カナデ、これから忙しくなるよ! アンタもしっかり手伝いな!」

「言われなくとも分かってます。ダンジョン配置などはお任せください。RPG作る系のゲームもやり込んでいたので」

「ヒヒヒ! 頼りにしてるよ」

「速やかに、迅速にダンジョン内を作りましょう。この手のゲームは得意です」

「はははは!! お前は本当に最高の曾孫だねぇ!!」



豪快に笑いヒールを鳴らしながら歩くアタシに付き従う冷静沈着な曾孫。

この様子は後々城中に伝わり、「魔王様の曾孫様は次期魔王として申し分なし」と囁かれるようになるのに、そう時間は掛らなかった。


諸々の話し合いを行い、カナデが用意した大きな紙は各場所の店の配置などがされていて分かりやすい。

「ついのめり込んで書いてしまいましたね」と言いつつも、同線もしっかりしているし、詰所のある場所もしっかりと書かれている。

確かに数か所に詰所を置くのは大事だね。

詰所となりには魔族専用のコンビニが置かれているのは、士気を上げる為だろう。

道理にかなっている。



「これが第一層、これが第二層、これが第三層、こちらが第四層です。第五層の住民用の住処は人数があまりにも多いので、一軒家地区とマンション地区に分けました。それから子供たち用の保育園に病院、学校なども用意してます」

「ふんふん……いいんじゃないかい?」



魔族と言えど知識は大事だ。

知識を持っている魔族や魔人には教鞭をとって子供たちに諸々教えるのは大事だね。

特にサキュバスやインキュバスには頑張って貰わないといけないからねぇ……。

そこに行きつける冒険者がどれくらいいるかは分からないが、行けるようになったらさぞかし通い詰めるだろう。ヒヒヒ!



「さて、ダンジョンを作るよ!!!」

「「「「はい!!!」」」」



――こうしてアタシ達はダンジョン作りをスタートさせた。

そしてまことしやかに囁かれるようになる――魔王領に突如出来たダンジョンには、何があるのだろうかと……。

こうして一部のレベルの高い冒険者たちは、最果ての村を目指し始めるのであった。





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