第6話 隠し部屋に経験値(冒険者狩り)に、思わぬ拾い物

このダンジョンには隠し扉が幾つもある。

勇者たちは何度か来た事があると聞いたが、隠し扉に気づかないなんて【広範囲マップ】を持っていなかったのかねぇ?



「キヌ様、ありましたわ!」

「罠がありそうだね。マップに黄色の点があるってことは罠だよ」

「どんな罠でしょう?」

「石でも投げてみるかい」

「はい」



こうして石を投げてみると窪みが沈んで横から槍が飛び出してきた。

なるほど、あのくぼみを踏むと串刺しになるって訳だね?



「落とし穴系じゃなくて良かったねぇ」

「落とし穴だったらあれくらいの石では動きませんわ」

「とはいえ、あそこの窪みにだけ注意すればいい。行くかい?」

「行きましょう! 誰もまだ手にして居ないお宝はワクワクしますわ!」



こうして窪みに気をつけつつ歩き、直ぐに壁のあるそこを調べていると、更に窪みが合ったので「女は度胸ってね!」と叫んで拳で押し込むと扉が開いた。

その中に入って行くと宝箱があり、鑑定するとミミックではなさそうだ。

開けてみると真っ赤なローブが入っていて、【鑑定】してみると『バービニクローク:効果疲労回復効果』と書いてあり、しかも3着入っていた。



「へぇ……魔王のマントは付与で疲れ知らずが入ってたけど、コイツは疲労回復効果があるらしい。着てみてもいいかい?」

「キヌ様は疲れが溜まるとお婆ちゃんに戻っちゃいますもんね」

「そうそう、シオシオって……失礼だね!」

「ふふふ」



そう言って笑うピアに呆れつつも、アタシはこの赤いバーミリクロークと自分の着ているマントを交互に見た。



「いっそ二重で着ちまおう。お洒落もたまにはしないとね」

「では、いっそ親子らしくお揃いにしましょう?」

「そうだね、親子で周ってるって思われた方がいいからね」



こうしてマントを脱いで真っ赤な『バーミニクローク』を装着し、その上に魔王のマントを軽く羽織りお洒落の完成。

確かに何かが癒されて行くような感覚はする。



「あ、これマジックポイント回復ですわね」

「ああ、なるほど。それで血行が良くなってるんだね」

「そうみたいですわ」

「ありがたいねぇ。後一つは持って行こう。その内仲間が出来た時に取っておくのもいい」

「そうですわね!」



こうしてまず一つ目のお宝を取ると、アタシ達はその場を離れゆっくりと窪みを踏まない用意進み、財部屋はガラガラと音を立てて崩れて行った。

後三つ隠し部屋があるみたいだけど……さてさて、楽しみだねぇ。

その前に――。



「ピア、あそこの冒険者はアタシ達のレベル上げに丁度良さそうだよ」

「おおっ! 経験値見つけましたわ。周囲に誰も居ませんし隠れる場所はありますものね」

「ここは霧も微かにある。【もくもく霧】を微かに出しながら、相手に隙を与える為に【麻痺の香り】か【常闇の誘い】どちらかを使えるかい?」



そう問い掛けると、ピアは暫く考え込んだ後「霧と常闇なら出せそうですわ」と答えた為、

霧を発生させて貰いながら銃が届く範囲まで近づき木々に隠れる。

そしてピアがオッドアイを光らせてから「『常闇の誘い』」と呟くと冒険者たちは慌て始めた。

その瞬間をアタシ達が逃す筈など無いのだが――。



「ピアは4人、アタシは1人貰うよ」

「畏まりましてよ!」



そう言うとピアは狙いを定めてリボルバーを一発、二発とうち二発で脳天を貫いたようだ。

徐々にスキルは上がっているようで何より……アタシはアイツかね?

1人リーダーのような男が「お前ら何がどうなったのか説明しろ!!」と叫んでる所で、脳天にバン!! と打ち込んで倒すと、ピアはスキルが切れるまでの間に3人までは倒した。

しかし一人逃走しようとしたので足にアタシが撃ち込み地面に倒れる。



「いでえええええ! いでえええよおおおおおお!!」



そう言ってのたうち回る頃には周囲の皆はあの世行き、アタシ達は走ってその場に向かい、ピアは男の額に銃を当てると――。



「チェックメイト、ですわ♪」



そう言って引き金を引いて男を倒した。



「さ、早く財布と金目の物を貰っちまおう」

「そうですわね、サクサクッとアイテムボックスに投げ入れちゃいましょう!」



こうして冒険者の身体から財布と金目になる物、後は護符などを奪い取り、5分経つと死体はホームへと消えて行った。

その時、マップに人気を見つけアタシとピアがそちらをみると、震えている何かがいるのに気づいた。

そこにカツカツとヒールを鳴らして近づくと――。



「おや、アイツ等のポーターかい?」

「ひっ!!」

「まぁ、獣人ですわ」

「ああ、オオカミ獣人だね。珍しい」

「まぁ……奴隷の首輪までありましてよ!」

「アイツらが死んだから奴隷の首輪が発動しなかったんだろう。奴らがホームに戻って行き変えるまでの間に奴隷の首輪を外そうかね」

「それがいいですわ」



アタシが手を伸ばし首輪を触ろうとしたのだが――。



「ど、ど、奴隷じゃなくなったら……ご飯も、水も……貰えません!」

「そうかい、ならアタシがアンタを貰おうかね」

「え!?」

「ヒヒヒ……悪いようにはしないよ。丁度ポーターが欲しかったんだ」

「まぁ、ポーターと言いつつ追い剥ぎをさせるつもりですわね?」

「そうとも言う。死にたく無けりゃいう事をお聞き」

「ひゃい……」



涙を流し震えるオオカミの少年の奴隷の首輪を魔王の権限により破壊し外すと、取り敢えずこの子のみすぼらしい姿を何とかしたくて、ピアと話し合い一旦仮の拠点を此処に作る事になった。

無論この子の持っていた鞄は有難く貰ったよ。

いい事はするもんだねぇ?



「これから見る事、話す事は絶対に誰かに口にしちゃいけないよ? いいね?」

「は、はい!!」

「宜しい。じゃあ二人共先に入りな」

「は、入るとは」

「はいはい、一緒にいきましょうね?」



ピアがオオカミ少年の手を引いて木の中に入ったのを見計らいアタシも中に入る。

ずっと裸足だったポーターの少年をまずは綺麗にしないとねぇ。



「まずは風呂からだね。シャワーで綺麗にしよう、ピア、入れて来てくれるかい?」

「分かりましたわ」

「その間にこの子の服とかを用意するから、良く洗い良く乾かしてバスタオルで包んで連れて来るんだよ」

「わかりましたわ!」

「あの! ここは……」

「まずは身綺麗にしな。取って食いやしないよ」



そう言ってシッシと手をさせると少年は耳を垂れ下げてピアに連れて行かされていた。

さて、金はまだ【ネットスーパー】にあるから……あの子を鑑定した時服のサイズは頭に入っている。

さてさて、とんだ拾い物だね。

どうしたものか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る