ピクセル湯けむり慕情宿

第43話 秋の実りと遺された手紙

秋の深まりと共に、温泉宿では年に一度の収穫祭が始まろうとしていた。宿の庭と周囲の畑では、豊かな果実と野菜が色鮮やかに実り、その準備に宿のスタッフとゲストたちが忙しく動いていた。この年は特に豊作で、収穫の喜びがいつも以上に宿全体に広がっていた。

収穫祭の準備中、ミコトとカナタは、宿の古い倉庫で奇妙な発見をする。倉庫の隅にあった古い木箱から、見慣れない手紙が見つかった。手紙は黄ばんで古ぼけており、どうやら長い時間そこに放置されていたようだった。興味を持った二人は、手紙を慎重に開いてその内容を読み解こうと試みた。

手紙には次のように記されていた：

「愛する友へ、私たちが共に過ごした日々を、私は決して忘れることはありません。特に秋の収穫祭の時、あなたと一緒に果物を収穫し、宿のゲストにその恵みを分かち合ったことは、私の最も大切な思い出の一つです。もしもこの手紙が誰かの手に渡るならば、私たちの物語と、この宿に込めた愛を未来へと伝えてください。」

手紙を読んだミコトとカナタは、このメッセージが過去の宿の住人たちの深い絆と、宿に対する愛情を感じ取り、その精神を収穫祭に反映させることを決めた。彼らはこの手紙を宿の記録として大切に保管し、収穫祭の際にゲストたちにその内容を共有することにした。

収穫祭の日、ミコトは手紙の話を全てのゲストに語り、それを聞いた多くの人々が感動した。祭りは手紙に触発されたスペシャルメニューと共に、かつての宿の住人たちが楽しんだであろう料理を再現して、ゲストに提供された。

その夜、宿の庭には温かい灯りと共に、過去と現在が繋がる特別な時間が流れた。ゲストたちはそれぞれの収穫を楽しみながら、この地に込められた愛と歴史を称え、新たな絆を育むことができた。

この収穫祭は、温泉宿に新たな伝説を加え、将来に渡ってこの宿の一員であることの意味を深めるものとなった。宿の歴史は新たな章を迎え、その物語は次世代に引き継がれていくのだった。