第40話 謎の花火師
夏の訪れと共に、温泉宿では毎年恒例の夏祭りの準備が始まっていた。この年は特に、夏祭りのフィナーレを飾る花火大会に注目が集まっていた。その理由は、宿に突如現れた謎の花火師、ソウマの存在だった。
ソウマは若く、花火の製造と打ち上げの技術に長けた職人で、彼が手掛ける花火はその美しさと独創性で知られていた。彼はどこからともなく現れ、ミコトに自分の花火を夏祭りで披露するチャンスを求めてきた。ミコトは彼の情熱と才能に感銘を受け、彼に花火大会の主導権を任せることに決めた。
ソウマの花火は、通常のものとは一線を画していた。彼の花火は、夜空に大きな絵を描くかのように展開し、見る者の感情を動かす物語性を持っていた。その花火の中には、龍が天に昇る様子や、大海原を渡る船の物語など、様々なテーマが込められていた。
夏祭りの夜、宿のゲストと地元の人々が集まり、ソウマの花火が始まるのを待っていた。花火が始まると、その圧倒的な美しさと創造性に観客からは感嘆の声が上がり、夜空を埋め尽くす花火の輝きに皆が目を奪われた。
特に印象的だったのは、花火で描かれた「森を守る精霊」の物語で、この花火は森から精霊が現れ、自然と共に生きる大切さを説くストーリーだった。この花火は、観る者に環境保護の重要性を感じさせると同時に、夏の夜の空に感動をもたらした。
花火大会が終わった後、ソウマは静かに宿を去ろうとしたが、ミコトは彼に温泉宿での継続的な仕事を提案した。ソウマはこの提案を受け入れ、温泉宿の一員としてその技術と芸術を宿のために捧げることを決めた。
ソウマの花火は、温泉宿の夏の風物詩となり、毎年多くの観光客が彼の花火を見るために宿を訪れるようになった。その花火はただの観光アトラクションでなく、芸術作品としても高く評価され、温泉宿の名声をさらに高めることとなった。
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