第14話  雪の夜の奇跡

ピクセルの生き物たちの訪問が宿に新たな活気をもたらしてから数週間が経ち、温泉宿は初冬の寒さを迎えていた。雪が静かに降り積もる夜、ミコトとその仲間たちは宿のロビーで暖炉の前に集まり、外の雪景色を眺めながら温かいココアで体を温めていた。


「こんなに美しい雪の夜は、何か特別なことが起こりそうだね」とミコトが言うと、レオはうなずきながら、「雪がもたらす静けさは、まるで時間が止まったようだ」と感慨深げに答えた。


そのとき、サラが静かに言った。「実は、雪の夜は精霊たちがこの世界と最も近づくときだと古い伝承で読んだことがあるわ。もしかしたら、今夜は私たちにとって何か意味のある出来事が起こるかもしれない。」


彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに、宿の外から優しい音楽が聞こえてきた。それは、どこからともなく響いてくる不思議なメロディで、聞く者の心を和ませるような美しい旋律だった。ミコトたちは好奇心に駆られ、音楽の源を探しに外へと出た。


外に出ると、雪が積もった庭が幻想的な光で照らされているのを見た。光の源は庭の中央に立つ古い桜の木で、その下では小さな雪の精霊たちが踊りながら音楽を奏でていた。精霊たちは、ミコトたちが近づくと、歓迎するかのように踊りを大きくしていった。


ピクシーが興奮して叫んだ。「わあ!雪の精霊たちだ!これは雪の夜の奇跡だよ!」ピクセルキャラクターたちもこの光景に魅了され、精霊たちと共に踊り始めた。


雪の精霊たちは、ミコトたちにこの冬が宿にとって豊かで幸せな季節になるように、との祝福をもたらしていた。彼らの祝福を受けて、ミコトたちはこれから訪れる冬に対する不安を忘れ、希望と喜びを感じるようになった。


奇跡の夜が明けると、雪の精霊たちはどこかへ消えていったが、彼らが残した祝福は宿に温かな光を残した。その日から、温泉宿はより多くの旅人たちを惹きつけ、雪に閉ざされた冬の間も温かさと活気に満ちていた。


この雪の夜の奇跡は、ミコトたちにとって忘れられない思い出となり、温泉宿の伝説の一ページとして語り継がれることになった。「ピクセル湯けむり慕情宿」の物語は、季節を越えて新たな奇跡を迎え入れ、宿の歴史に彩りを加え続けていく。

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