第8話 突然のゲスト

収穫祭の成功から数日後、温泉宿の日常は再び平穏を取り戻していた。ミコトたちは、宿の運営と配信準備に忙しく、新たなイベントの企画も始めていた。ピクセルキャラクターたちも、彼らなりに日常生活に溶け込んでいく中で、この宿と地元の人々との間に強い絆を築いていた。


ある晴れた午後、ミコトはフロントで次の配信の内容について考えていたとき、突然の訪問者が現れた。ドアが開き、現れたのは見知らぬ若い男性。彼は旅行者のような格好をしており、少し疲れた様子でリュックを背負っていた。


「こんにちは、こちらは...『ピクセル湯けむり慕情宿』ですか?」男性は不確かな声で尋ねた。


「はい、そうですよ。どうされましたか?」ミコトが快く答える。


「実は、あなたたちの配信を見て、この宿を訪れてみたくなったんです。部屋は空いていますか?」男性の目は、期待に満ちていた。


もちろん、とミコトは案内を始め、彼を宿の一室に通した。部屋に荷物を置いた男性は、ほっと一息つき、窓から見える庭を眺めながら感慨深げに語り始めた。「友達から、ここの不思議な話を聞いてね。実際に来てみると、想像以上の場所でした。」


その夜、夕食時に男性はミコトたちと一緒に食卓を囲むことになった。食事中、男性は自分がゲーム開発者であること、そして最近はインスピレーションを求めて旅をしていることを明かした。


「あなたたちの宿や、ここに現れたピクセルキャラクターたちのことを聞いて、ぜひ実際に見てみたいと思ったんです。実は、私、新しいゲームのアイデアを探していて...」


その瞬間、ピクセルキャラクターたちが食堂に入ってきた。男性は目を丸くし、彼らが本物であることに驚愕した。ピクシーが元気よく男性に近づき、「こんにちは!あなたが新しいゲスト?私たちと一緒に楽しいことしようよ!」と提案する。


男性はピクセルキャラクターたちとの交流に夢中になり、次第に旅の疲れも忘れていった。そして、夜が更けるころ、彼はミコトたちに提案した。「もしよければ、この宿とピクセルキャラクターたちを題材にしたゲームを作りたいと思います。もちろん、あなたたちの許可を得てからですが...」


ミコトたちは互いに顔を見合わせ、笑顔でうなずいた。この宿が新しいゲームのインスピレーションの源になるなんて、想像もしていなかった。


「ピクセル湯けむり慕情宿」は、また新たな物語の始まりを迎えていた。ゲーム開発者との出会いは、宿にとって、また違った形での冒険の始まりを告げていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る