第6話 秘密の地下室

改修作業中、ミコトたちは宿の隅に隠された、見たこともない扉を発見した。それは、ずっと封印されていたかのように、厚い塵に覆われていた。


「ここ、一体何の部屋なんだろう?」ミコトが不思議そうに呟いた。レオは興奮しながら、自作のピックロックツールを取り出した。「これがあれば、どんな扉も開けられるさ!」


少しの努力の後、ギシリという音と共に扉が開き、彼らは慎重にその暗い部屋へと足を踏み入れた。中には、年月を感じさせる様々な家具や、壁に掛けられた古い絵画、そして大量の書籍があった。しかし、彼らの注意を一番引いたのは、部屋の中央に置かれた大きな石版だった。


レオが埃を払うと、石版には何かの文字が刻まれていることがわかった。「これ、読める人いる?」レオが周囲に尋ねる。


サラが近づき、文字をじっと見つめた。「これは古い言語...少し読めるわ。『温泉の精霊よ、我らと共にありて、この地を守り給え』って書いてある。」


カイトはその話を聞き、思案げに言った。「つまり、この宿は昔から温泉の精霊を守る役割があったんだね。」


その時、彼らは石版の下から微かな光が漏れるのを見つけた。マジカが魔法を使って石版を持ち上げると、地下へと続く階段が現れた。


一同は、階段を下りていくことにした。下には広大な空間が広がっており、その中心には輝く温泉があった。水面は穏やかで、周囲は幻想的な光に照らされていた。


ピクシーがはしゃぎながら水に手を入れると、その手からピクセルの波紋が広がった。「わあ、すごい!ここ、なんだか特別な力を感じるよ!」


その瞬間、温泉の水が輝きを増し、彼らに穏やかな力を与えてくれるようだった。サラは深く息を吸い込み、「この温泉は、ただの温泉じゃない。古代からこの地を守ってきた、温泉の精霊の力が宿っているのね。」


ミコトは仲間たちを見回し、決意を新たにした。「この秘密を守りながら、もっと多くの人にこの温泉宿の魅力を伝えよう。でも、何より大切なのは、ここに集まるすべての人たちが幸せでいられること。」


その日から、秘密の地下室と温泉は、彼らにとって特別な場所となった。温泉宿に訪れる人々は、何か不思議な力に引かれるように、心からの癒しと幸せを感じることができたのだ。

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