黒い部屋
三椏香津
黒い部屋
”ー黒い部屋は好きですか?”
平日の昼下がり、母親がパートに行ったのを確認し手から部屋を出た俺は、いつものようにシャワーを浴びた後台所を占領しはじめる。
パソコンが起きるのを待っている間、腹の虫を泣き止ませるために冷蔵庫の中を漁る。冷ご飯と、きっちり一人分を残してラップされていた肉野菜炒めを取り出した。
「豚肉とキャベツと人参…またかよ。」
レンジで同時に温め、冷ご飯をおかずの入った皿に移した。これだけじゃ足りないから、この後いつものようにカップラーメンチーズマシマシを作ろう。
「はぁー食った食った。洗い物はお任せしまーす。」
前にそのまま流しにおいていたら母親に怒られた。なので今回はちゃんと水につけておくことにする、これで親から何も言われないだろう。
ここ何週間か剃るのが面倒で髭が伸びた顎を触りながら、いつものようにネットサーフィンを始めた。
「ーったくどいつもこいつもつまんねー投稿ばっかりしやがって…。ん?」
DMだ。もしかしたら先日メッセージを送った自撮りのかわいい大学生かもしれない。…その淡い期待は一瞬で消えた。見たことない黒いアイコンからのDM
だった。
「”黒い部屋は好きですか?”やべえ、これ赤い部屋のパクリか?なつかしw」
少しは時間つぶしになるだろうと、俺はその下に続くリンクを迷わずクリックした。
しかし実際開いてみるとそこは、ただの黒が基調のインテリア専門の通販サイトだった。黒いレザーのソファ、正方形にカットされた組み合わせ自由の畳、黒い収納ボックス…その他もろもろだ。
「つまんね。てか俺、今のところ外に出る予定ないし。
ープツンッ
「あぁ?」
突然パソコンの画面が真っ黒になった、まあ中古のポンコツだからな、少し待てばまた画面が付くだろう。
普段はそこで形態を触りだす俺だが、なぜか妙に画面に違和感を覚え、目が離せなかった。
そして気が付いた、いつもなら画面に反射して映るはずの俺が映らないのだ。
黒い部屋 三椏香津 @k_mitsumata
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