ぞっとする昭和怪談『恐怖の個室病棟 真夜中の面会人』

redrock

第1章「救急搬送」

全て実話です。


大気汚染が深刻な問題になった昭和……


灼熱のアスファルト道路に砂埃が舞う国道〇〇号線を、営業車で走っていた時のことです。突然トラックが車に追突、頭を強く打った私は救急搬送され、目が開いたときは病院のベッドにいました。


右手首と左足そして首をギプスで固定され、左腕は点滴注射、鏡で顔を見ると包帯をぐるぐる巻かれまるでミイラのようです。


医師によると、「歩けるようになるまで半年以上かかるかも知れない」とのことです。


先日妻が第二子を出産し今も入院中。私の母に預けている長男はまだ五歳と小さく、家族や仕事のことを考えると強い絶望感が襲ってきます。


当日は面会謝絶で次の日の朝、私の母と幼稚園に通う長男、そして会社の同僚が見舞いに来てくれました。


皆私の姿を見て絶句しています。


夕方一人になり病室を見渡すと、部屋の中央に私のベッドが一つだけあり、左側に冷蔵庫とテレビ、そして入口ドアの横に着替えを入れる一人用の縦長ロッカーが六個も並んでいます。


白い壁は所々黒ずみ、天井は雨漏りの跡なのか茶色のシミがありました。


ここは古い病院で私がいるのは広い個室ということに気が付きました。


五十代の神経質そうな顔をした婦長が私に訊きました。


「真ん中ではなく窓際にベッドを移動しましょうか?」


外は車道で車の通りも多く私は事故を思い出すのが嫌なので、「このままで大丈夫です」と断りました。


そして婦長に「ここは元々相部屋ですか?」と尋ねました。


「そうです。六人部屋でした。今は救急の患者さん用として使用しています。もしかするとこの部屋に突然患者さんが運び込まれるかも知れないので、その時はお願いしますね」


婦長にちょっと怖いお願いをされました。


異変が起こったのはその日の深夜です……


 

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