皇妃ジョセフィーヌとファイアオパールの物語
エモリモエ
play of color
神は愛だというけれど愛は私の神じゃない。
ばれてるだろうから白状するけど、全ては
でも。
それはあなたも同じこと。
そうよね、私のナポレオン・ボナパルト?
人は私を恋多き女と言うわ。多情で薄情な女だと。
自分でもそう思う。
だって淋しいのは嫌い。
それだけよ。
そんなこと、あなたはお見通しだったわね?
たかが恋。
ほんの一瞬、身を焼く炎。
ファイアオパール。
透き通って煌めくオレンジ色の石に虹色の斑が入った見事な宝石。その斑模様は角度を変えるたび次々に色を変える。
見飽きないわ。
あなたはこのファイアオパールを私の冠に仕立てて「トロイの炎」と名付けたわね。
トロイの木馬で有名な戦争の引き金となった伝説の美女ヘレナを想起したのでしょう。
可愛い人、私をヘレナのような美女だと?
石の中に散った輝きが色彩を変える。
こんな風に角度によって違った色に見える現象を遊色効果と呼ぶんですって。
素晴らしい赤の遊色がほんとうに炎のよう。
宝石の中で燃えている。
この石は私に似てるとあなたは言うけど、私に言わせればあなたに似ているわ、愛しの皇帝。
そうそう、シェイクスピアも書いていたわね。
「あなたの心はひどく
ひどい男。
あなたを手放すのは辛いのよ?
離婚の理由は分かってる。
情熱的だった関係があまりにあっけなく終わったことは、とてもショックだったけど。
所詮は似た者同士のふたり。
あなたのことは分かるのよ。
あなたは一番高いところに立ってみたいのね。
そのためには高貴な血筋との婚姻が必要。
だから私を捨てただけ。
いいわよ、遠くに行けばいい。
私があなたの立場ならやっぱり同じことをしたわ。
移り気なのは仕方ない。
遊色はその色を変えても、石そのものが変わるわけじゃないけど。
あなたの魂は炎と同じ。
燃え尽きるまでは終われない。
全ては遊戯。
勝つか、負けるか。
でも、あなたにだったら、そうね。
最後くらい負けてあげてもいいわ。
皇妃ジョセフィーヌとファイアオパールの物語 エモリモエ @emorimoe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます