第52話 少女と精霊王


〇シェーンブルン子爵領 交易街 中央広場



「さぁここからが本番だ、久々に出した黒曜石の剣だたっぷり楽しませてくれよ」


俺の手には黒く怪しく輝く剣が一振り握られていた



黒曜の剣:別名ソウルクラッシュ、黒曜石という超硬度の原石を土の精霊達に掘り出させ、木の精霊により作り出された暗黒樹を燃料に炎の精霊の火力と水の精霊による冷却を糧に作り出された剣は切り割いた相手の魂をも破壊すると言われる魔剣である


一振りで切り割いた魔人アルカミルは、直ぐに結合し修復をしている・・・・が


「さぁお前に残されてる魂は後2つだぁぁ」


魔人は奇声を上げながら、再び両腕を素早い動作で交錯させながら魔法を放つ


【アイス サイズ】


【ボルケーノ ブライド】


【!?】


しかし、撃ち出されたのは氷の刃のみ・・・・溶岩の棘の弾丸は出現しない


氷の刃を軽く黒曜の剣で弾き肩に剣を担ぎ笑みを向ける


「あらぁ~なんか溶岩の魔法使えないみたいだねぇ~」


「魔法の根源たる種子を砕いたか・・・ソウルクラッシュ・・魂砕きとは良く言った物だ・・」


傍観していたバウディの口に宿ったゼレニスが此処に来て喋り出した


「ああ、お客さん無料で見物頂くのは此処までとさせて頂きますので悪しからず」


そう言うとバウディの口の肉片を真っ二つに切り割いた、ポトリと地面に落ちた肉片はそれ以上ゼレニスの言葉を発する事は無くなった


「ぎゃぁぁ、痒い痒い痒い寒い寒い寒いぃぃぃ」


暴れまわりながらも、氷の刃と水の弾丸魔法を無差別に打ち出す魔人


「はぁ・・ゼレニスが居なくなった突端発狂したか・・・魔人とか言っても不完全なもんだな・・・」


魔人の頭の中には今だ2つの魔法種子が混在しており、ゼレニスの庇護の元で制御していた種子が制御が外れ。各々が勝手に自分の意思で行動を初めてしまったのだろう


「残りの精霊量も少ない・・まぁこの辺が潮時か・・・・ソウルブレイク!!」


狂った様に無差別に暴れ回る魔人の目の前に一瞬で移動し十字を切る様に剣閃を走らせ魔人の体を4つに分断すると、魔人の肉片はその場に崩れそれ以上蘇生する事は無かった


異様な姿をしていた魔人アルカミルは、徐々に元のアルシアの姿に戻ったと思った瞬間に灰色のカスとなり消えてしまった


「・・・・・ふぅ・・・やっぱり1日に何度も(ハイブリッド)複合精霊術を使うと精霊量の消費が激しいな・・・」


教会内で使った時空爆裂の時みたいに出血こそしなかったが、急な眩暈から黒曜の剣を杖にしてその場に膝を着く


「はっはっ・・・はっ・・・ダメだ・・ここいら一帯の小精霊を全て使ってしまった・・・」


目の前の地面がグラグラと揺れ起き上がる事が出来ない・・


「ファリスを・・・召喚せねば・・・・・」


しかし俺は召喚する事が出来ずそのまま視界が暗転する






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・



『エスト・・・エスト・・・・聞こえますか?』


・・・・誰だ・・・捨てたはずの俺の名を呼ぶのは・・・・


『エスト・・私です・・・』


私?・・・知らない声だ・・しかし懐かしい・・・


『私の声が聞こえているなら、北に向かいなさい・・・帝都グランディで、貴方を待ってる人が居ます・・彼女をどうか・・・たす・・け・・・』


!?


眼を覚ますとベッドの上だった・・・部屋の中を見渡すと木造の壁と、小さなテーブル


テーブルにはひび割れた瓶の中に水が入ってる様だ・・・寝ていたベッドはシーツは掛かっているがその下は藁で出来ており触るとザラザラする


感触を確認していると部屋のドアが開き小さな女の子が小さな桶に水を入れて拭いの布を浸したものを持って入ってくる


「あ、お兄ちゃん目が覚めたの?」


小さな女の子は両手が塞がっているので体を押し当てる様にドアを閉める


「ここは何処だ・・・?君は・・・」


そう尋ねようとしたが少女の目線は俺の方を向いてない・・常に一点を見つめた状態だった


「お嬢さん、君の名は?」


そんな少女の持つ桶毎少女の手を取り尋ねると、少女は首を傾げながらも嬉しそうに答える


「私、メリィって言うの!!」


「そっか、ではメリィ譲この度は私を助けて貰った事改めてお礼を申します」


メリィから桶を受け取りベッド脇の台に乗せるとそっとその手に口付けをする


「わぁぁお兄さん、カッコいい、メリィお姫様みたい!!」


嬉しそうに微笑むメリィに尋ねる


「メリィはこの家にご両親と暮らしてるのかな?」


するとメリィは少し悲しそうな表情をするとブンブンと横に首を振る


「うんん・・・お母さんはだいぶ前に子爵様にお仕えする為お屋敷に働きに行って帰って来ないの・・・お父さんもお母さんを迎えに行くってお屋敷に行ったきり未だ戻って来ないし・・・」


「そっかぁ~じゃこの家にはメリィ一人だけなの?」


「うんん、違うよ?お兄ちゃんも一緒にいるよ?お兄ちゃんはメリィのお兄ちゃんと一緒にこの家に運んだの」


「メリィから離れろ!!!」


メリィの手を取り話を聞いていると部屋の入口から怒鳴り声が聞こえてきた


メリィよりも身体は大きいが未だあどけなさの残る少年だ・・・・どうやらこの少年がメリィの兄の様だ


「君がメリィのお兄さんですか?助けて頂き感謝します、私は・・・ロン・・・オベ・ロンと申します」


メリィの兄は俺とメリィを引き離すとメリィを守る様に俺の前に立ち鋭い視線を向けてくる


「アンタの名前に興味は無い・・助けたのもメリィがどうしてもと泣きついたからだ・・体が動くならとっととこの家から出てってくれ!」


「お兄ちゃん!なんでそんな酷い事を言うの!?」


「メリィは黙っていろ!!!」


今にも泣きそうな顔で兄の胸元に縋るメリィ・・・


「なぁメリィ?俺はお兄さんと二人で話をしたいんだ少し二人で話させてくれないか?」


メリィは俺からの言葉に納得はしてない様だが、渋々部屋から出て行った


「すまない、君と少し話をさせて貰いたくて・・・この話が終われば俺は出て行くよ」


「ああ、そうしてくれ・・・それと俺の名前はバズーだ、君とか言われるのは気味が悪い」



パズーは近くの椅子に腰を掛け俺の方を真っ直ぐと睨み付ける


「先ずは俺を助けてくれた事礼を言う・・・有難う」


俺は軽く頭を下げお礼を伝える


「さっきも言った通りだ妹のお願いだから聞いただけ・・お礼なら妹に・・」


「それで妹さん・・メリィから聞いた内容・・・」


「ああ、メリィの言った通りだ・・・だが両親の事は・・・・」


成程、察しがつく恐らく両親は・・・・しかしメリィの目の事は?


「でしたらメリィの目は・・・・」


「くっ・・・メリィの目は・・子爵様の次女アリシア様の魔法で目の中を焼かれてしまって見えなくなってしまったんだ・・・」


「・・・・・・」


「アリシア様はメリィの目を焼いて見えない様にして、親父をメリィの目の前で消し炭に・・・親父はメリィにトラウマにならない様にと悲鳴を上げる事無く燃え尽きて・・」


「そうですか・・・・」


「馬鹿な親父です、母が貴族の屋敷に連れて行かれて2年も経っているのに毎日毎日子爵様の屋敷に談判しに行って・・・生きてるはずないのに・・・」


「そうでしたか・・・」


「だからメリィにはくれぐれも家から出ない様に言っていたのに・・・」


「有難う御座います・・・私はこれ以上この家に居るとお邪魔の様です・・・お暇します」


「ああ、そうしてくれると助かる・・・妹を恨まないでくれ・・恨むなら俺を恨んでくれ」


俺は首を振り髪の毛を数本抜き部屋に有った瓶に一本ずつ入れ


【息吹】(いぶき)


土の精霊術を使い成長させる・・・・3つの瓶の植物は部屋一杯の木に成長し枝にはリンゴ、ミカン、ブドウが其々実を付ける


「こ・・・これは!?」


「助けて頂いたお礼です・・・この植物は定期的に水を与えると永遠と実を実らせます、生活の足しにしてください」


呆気に取られてるパズーに頭を下げ部屋から出ると・・・部屋の入り口に心配そうに立っているメリィが俺の方を手探りで腕を伸ばしズボンの裾を握る


「お兄ちゃん?駄目だよまだ体がちゃんと治ってないよ?」


おれは屈んでメリィの目を見つめそっと頭を撫でる


「俺はもう平気さ、メリィが看病してくれたからね・・・有難う・・【慈光】(じこう)」


「??じこう?お兄ちゃん何言ってるの?」


「メリィにもパズーにも世話になったね、この恩は忘れないよ、それじゃ元気で」


そう告げ軽く頭をポンポンと叩きメリィの家を後にした・・・・


家を出て暫くすると、男の子と女の子の歓喜に喜ぶ声が聞こえる・・・・・


ギリッ!!


俺は改めてこの腐った世界への復讐を強く誓った



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