第43話 招かざる者


〇シェーンブルン子爵領  ゼレニス教会支部 本堂


俺は礼拝用の椅子に腰を下し前の椅子に足をのせ、不敵に笑っいながら急な来訪者である俺に驚いてる連中に告げる


「ようっ!なんかお邪魔だったかなぁ?クククク・・・俺も一緒に見物させて貰いに来たぜぇぇ」


「ふっ不届き者ぉぉ!!出合え!!侵入者だぁぁ!!」


中央の巨大なゼレニス象の前で大声で俺を指さしながら叫ぶ司祭、すると本堂の両脇の控室から合計40名近い騎士と武装した教会騎士が俺達の左右を取り囲む


「ダキ、ミホーク」


「「御意」」


【森槍】(しんそう)


【鎌鼬】(かまいたち)


椅子に座り欠伸をしてる俺の背後で左右に分かれダキは左側にミホークは右側にそれぞれ手を翳し精霊術を使う


左の連中は足元から細い竹が幾つも生え十数名の騎士達の身体を貫きそのまま張りつけにする


右側から突進してくる騎士の最前列に居た5名の身体が輪切りに切り割かれその場で崩れ落ちる


「ヒィィィィ」


「何だァァ何が起こったぁ」


突然の惨状に慌てふためく騎士達


「な、なにをしておる!早く始末し無いか!!」


狂気をはらんだ怒声で騎士達を焚きつける司祭・・・・あの顔何処かで・・・俺は顎に手を置いて思い出そうとしている、そんな中でも次々とダキとミホークに始末される騎士達


【息吹】(いぶき)


【死霧】(しむ)


ミホークは手の中に木製の弓を作り出し反対の手の中に矢を生成すると、弦に矢を掛け思いっきり引き絞るとミホークの大きな胸がブルンと揺れ矢が撃ち出されると、騎士3名が貫かれ教会の壁に縫い付けられる


「んなぁ!何て威力だぁ!」


次々矢を生成して弓で放つと、次々騎士の眉間に命中し頭を貫かれる


「い、椅子に隠れて距離を詰めろぉぉ!」


再びミホークの手に枝が折り重なり、今度は巨大なブーメランが生成される、ミホークは振りかぶりブーメランを放つと教会の机や椅子を薙ぎ飛ばしながら隠れて居た騎士の身体ごと粉々に破壊してミホークの手に戻ってくる


「ふぅ~」手を軽くポンポンと叩きながら俺に向かってニッコリ無邪気な笑みを見せるミホーク、ふと隣のダキに気付き


「ダキィ~手伝おうかぁ~?」


少し意地悪気に言うと、冷ややかな目で


「はぁ?もう終わりましたえ?」


ダキが作り出した黒い霧の中から悲鳴や雄叫びがさっきまで聞こえていたが、今はすっかり静かになっている


ダキがすっと手を横に振ると、黒い霧がはれてその場には白骨と化した騎士達のすがたが有った


ダキが手をパンと叩くと、白骨が一斉にその場に崩れる


「久々にお前等の力を見れて俺は嬉しいぞ」


「「有難き幸せ」」


俺の言葉にその場に傅くダキとミホーク


・・!?


「あぁぁ思い出した!あのクソ坊主、確かバウディとか言う名前だった」


「んなぁ!?貴様ぁ何故儂の名をぉぉ!!」


「司祭おさがり下さい!!此処は私にお任せを、このような下賎の豚、直ぐに始末して見せます!!」


バウディの前に立ちあがり俺達を睨み付けるのは、先ほどゼレニスに託宣を貰った貴族の子息の様だ


「おおお、これはこれは貴族の坊ちゃんではないですか?ご尊名をお伺いしても?」


「無礼な!!先ず下民のお前が名を名乗れ!!礼儀知らずの豚共が」


俺は前の椅子を蹴り飛ばしゆっくりと立ち上がると貴族のガキの前に歩みより胸に手を当て軽く頭をさげる


「これは失礼を、私はオベリスクのロンと申します、別に覚えて頂かなくて結構です」


「俺はカミル フォン シェーンブルンだ!先ほど女神ゼレニス様より水系中級魔法【水迅】のお力を賜った!貴様のその体で味わうが良い!!」


「おおお、それは楽しみで御座います、是非この身で受けさせて下さい!!」


両手を広げゆっくりとカミル少年に歩みよると


【ウオーター・ブレード】


カミルが詠唱と共に縦に手刀を切ると水の刃が俺の身体の中心に迫る


シャーン!!


水しぶきの弾ける音と共に俺に水の刃が命中する


「口ほどにもない・・・減らず口を3枚におろしてやったものを・・」


「何ですか?これは新手の水遊びですか?」


「!?」


既に俺を始末出来たと思って振り返り両親の元に戻ろうとしていたカミルは俺の声に驚き再び俺を睨み付ける


「何故生きてる!?直撃したぞ!!」


「ああ、確かに折角のお気に入りがビシャビシャですね」


「くっ!!これなら【ウオーター・ハーケン】」


今度は横に手刀を振り、横真一文字に水の刃が俺の胸部に直撃する


シャーン!!


先ほどと同じ様に水しぶきが弾けた音と共に水の刃が弾ける


「こ、今度こそ・・・」


「何だぁ?さっきと縦か横かの違い?なぁカミル君よぉそろそろ水のお遊びは良いから水の中級魔法を見せてくれよ」


俺の様子に驚愕しながら背後で目を見開く両親に縋るような目で訴える


「父上ぇ母上ぇ!!」


「カミル!!【ウオーター・バレット】」


「どきなさい!カミル!!【ウオーター・バレット】」


両親二人とも水系の魔法使いの様だが・・・・


「二人とも初級か・・・・」


俺は避けるのも面倒なので、そのまま水の弾丸を体に浴びながらシェーンブルン子爵夫婦の元に行きニコリと笑うと


【溶解】(ようかい)


すると二人の身体から炎が発生し一気に燃え上がる、出火した足元は既に炭化している


「ぎゃぁぁぁ!!あつぃぃ」「体がぁぁ焦げるぅぅ」


悲鳴と叫び声を上げるシェーンブルン子爵夫婦に告げる


「ククク、そうだろう、そうだろう、この炎は鉄も溶かす炎だからなぁ~、ほれ自慢の息子君に消火してもらったらぁ?」


「!?カミルぅぅ!!早く火を消してくれぇぇ」


「カミル早くお願いよぉぉ」


しかしカミルは狼狽するばかりで、一向に魔法を撃つ気配がない


「カミルぅぅ!!早くぅぅ!!!」


【ウ、ウ、ウオーター・バレット!!】


カミルの手から無数の水の粒が弾丸の様に撃ち込まれ、両親を包む炎と衝突する


シュュ~と水が一気に水蒸気と化し鎮火していく【ウオーター・バレット】【ウオーター・バレット】


カミルは必死になり両親に向かって水の粒を撃ち込みなんとか炎が収まったが現れたのは炭になった両親の姿だった


「父上・・母上・・・そ、そんな・・・」


「あ~あ、それとさぁ・・・カミル君、熱く熱っされて急激に冷やされるとぉ~」


カミルの目の前で炭化した両親がボロボロに崩れ去る・・・・


「て、事になるから覚えておこうねぇぇ」


おれはその場に膝から崩れるカミルを放置し、司祭の元に向かった


「よぉ!バウディ司祭久しぶりだな、覚えてるか?俺の事」


腰を抜かし地べたをバタバタと叩き後ろに逃げようとする司祭にゆっくりと歩み寄る


「し、知らぬ!お前などしらぬ!!!」





「だそうだ、女神ゼレニス様よぉ~! いや・・破界樹 ゼレニス」









【世界に仇成す者よ・・・】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る