絵画詐欺に引っかかった黒歴史

逢坂 純(おうさかあつし)

タージマハルのコピー絵画を買わされた絵画詐欺の黒歴史

絵画詐欺って知っていますか?僕が大学生の頃、流行っていた新手の詐欺でした。夜、一本の電話が僕のアパートに掛かってきました。

その声は女性でした。

「こんばんは」

とても感じのよい声だけ聴けば、美人を連想させる美しい女性の声が聴こえました。

何と言われたのかは忘れてしまったのですが、僕はその女性に言葉巧みに、駅前のビルの会議室へと誘われました。今考えると、そんな会議室に誘われること自体、怪しすぎるのですが、その時の僕は、何の疑問も感じずに、バスに乗って駅前に行きました。

夕方の6時過ぎでした。

僕は指定されたビルの三階の会議室に向かいました。一つの会議室に明かりが点いていました。

そして会議室を覗いてドア越しから室内を覗くと、そこではセミナーらしきものが開かれているようでした。並んだ机ではギッシリと聴講者が居て(今考えると多分、その半分以上がサクラ)、そして前方のホワイトボード前には、男が何やら熱弁していました。皆、男の話を真剣に聞いていました。僕はその光景に違和感を感じてしまい、その場を立ち去りました。

そこで、バスに乗ってアパートに帰っていたら、あんなことにはならなかったのです。

僕はそのセミナーらしきものが、気になっていたのだと思います。アパートに帰らずに、ビルの入り口のところで、ウロウロとしていました。すると、先ほどの講師らしき男がビルから出てきて、僕に声を掛けました。

「セミナー参加者だよね?」と。

僕は頷き、男に誘われるままにファミレスに一緒に入って行きました。男は僕に何か飲み物を頼むように言い、僕はコーヒーを頼みました。男もコーヒーをウェイトレスに頼むと、

火を点ける時に音が良いジッポで(デュポンのライター)で煙草に火を点けました。僕は男が煙草を噴かすのを見て、カッコよさと大人の雰囲気を感じました。

何故だか男は僕に自分の夢を語らせました。

将来に夢いっぱいだった僕は30分程、自分の将来の夢を語りました。

一通り男は僕の夢の話を聞くと、大きなファイルをテーブルの上に出し、

「その夢を叶えるのなら、この絵を買った方がいい!」とファイルを開き始めました。

そこには幾つもの絵画のコピーした絵がありました。

「どれがいい?」

僕はその絵の中から、一枚の宮殿の絵を選びました。後で調べたところ、それはインドのタージマハルの絵だということが分かりました。僕が絵を選ぶと、男は契約書をテーブルの上に出し、僕に契約書を書かせました。

僕は自分の夢を叶えるためならと、男の言葉巧みな嘘に騙されて、契約を済ませました。

後日アパートにタージマハルの絵と、高額な金額の明細書と数十回ローンの請求書が届きました。その絵のことが後日、実家の両親に知られるのですが、両親は物凄く怒った後、絵の解約手続きに奔走してくれました。尻拭いをしてくれた両親に感謝ですが、僕にとっては、これも黒歴史でしょうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

絵画詐欺に引っかかった黒歴史 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画