第4話 絵本の世界ヘルメット

私と夫は、ものすごい頭のいい息子の両親だ。

毎日毎日勉強漬け。週に6回塾。勉強しかしていない休みの日。

両親にとって、息子は自慢の息子だった。

あの息子は、私達にとって、たまものだった。

1年生から毎日勉強漬けで、100点未満なんて取ったことはない。

みんなからも尊敬される。自慢の息子だった。

頭が良すぎるせいで、あの子はクラスメイトから少し距離を置かれているようだ。

まあ問題はない。

友達なんか作って遊んでいるよりも、勉強のほうがはるかに大事だ。

まあ、ということで、息子は、毎日毎日ずっとずっと、ただ勉強だけをしている。

そして、あの息子には大大大好きな絵本があった。

ちなみに、私の息子はダンスが大好きなのだ。

どうでもいいけど、私が好きなのは「」

大好きな本。それは、「あかいくつ」だった。

あの子は踊るのが大好きだったんだ。

だから、ダンスがやりたいと必死でせがんできたが、「だめ」と何回も何回も言ってやった。

それで、やっと諦めたようだった。

・・・あ。帰ってきた。

ん?なにか持ってる。

「母さん、みてみて。これ買ったんだ。『絵本の世界ヘルメット』だって。いいでしょ?絵本の世界に入れるんだって!これで僕も好きなのに入れる!」

私は、それを見て心を奪われた。

ほしい!ほしい!ほしいほしいほしい!!!!!!!!!!!!

「あんたはそんなもの買ってないで勉強しろ!!!」

「っ!母さん、わかったよ・・・」

息子がトボトボと部屋に戻っている間に、私はそのヘルメットを持ってリビングに。

「えー、なになに?ヘルメットをつけて対象の絵本を読む・・・か。かんたん」

まずは、息子の絵本で試す。

わあ。本当に入った。

そういえば、この終わりどんな感じだったけぇ・・・

まあやんややんやで靴を履いて舞踏会に。

「あ、あれ・・・?ぬげない!!!」

そして、どんどん頭がクリアになっていく。

結末は・・・

そうだ。主人公が足を切断しに行くんだった・・・

物語のとおり、私の足は首切り役人の元へと勝手に動いていく。

「足を切ってください」

「わかったよ」

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!!!!」

痛みにうめき、悶える。

息子にひどいことをしてごめんなさい・・・息子を自由にさせなくてごめんなさい・・・許して、許して・・・

あのとき、主人公は、どんな気持ちだったのだろうか。

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