空から落ちてきた超巨大要塞戦艦✕巨大ロボット

第1話・この異世界宇宙の形状が明らかになって大ショック……知らなければ良かった

 コチの世界〔異界大陸国レザリムス〕の中央地域にある【バロメッツ村】──ある日、空に穴が開き宇宙空間から、超巨大な船と巨大ロボットが村に落ちてきた。


 ちょっとした振動に、小屋の作業場で機械修理をしていた。

 北方地域出身の十六歳の少年技術者【ラチェット・レンチ】ことラチェットは、窓辺に寄って外を見た。


 地面に巨大な物体が突き刺さり、白煙が上がっているのが見えた。

「なんだぁ? この作業場から、そんなに遠くない場所だぞ」

 ラチェットは、好奇心から落下地点へと向かう。


 落下地点には、すでに数名の異世界住人が集まって、クレーターを見下ろしていた。

 ラチェットは、クレーターの規模と落下物の目測質量を、持ってきた羊皮紙に書き込んで計算をはじめる。


(これだけの質量がある物体が落下してきて、この程度の衝撃で済んだというコトは……なんらかの未知の力が働いていたってコトか)


 ラチェットは、落下物の衝撃で第二の中央湖が誕生しなくて、良かったと思った。

 その時、ラチェットは足元に銀色に光る金属片を発見した。

 拾い上げてよく見ると、金属片には点滅している箇所がある。

「なんだコレ? 落下物の破片かな?」

 ラチェットが、そう思って金属片を眺めていると。

 いきなり点滅する金属片がしゃべった。

《おい、小僧……ここは、どこだ?》

「うわぁ⁉」

 驚いたラチェットが、金属片を放り投げようとすると。

 しゃべる金属片が慌てた口調へと変わる。

《やめろぉ、いきなり話しかけたオレが悪かった。落ち着け、さっきから拾ったヤツに放り投げられぱなしだ……頼むから今度は投げないでくれ!》


 ラチェットは、金属片を遠方に投げるのをやめた。

《助かった……オレの名前は【ガルム】三ツ首のガルム……落下の衝撃で本体の頭から飛び出しちまった》

「本体?」

《あそこに、地面に突き刺さった姐御と一緒に転がっているだろう……三ツ首の機体が》

 ラチェットは落下物の方に視線を向ける。

 超巨大船の近くに、三の首がある巨大ロボットが転がっていた。

 真ん中の首は二ツ目で、肩にある左右の首は一ツ目と三ツ目だった。


《真ん中の首がオレだ、一ツ目と三ツ目のヤツは気にするな……頼みがある、ここは目立つから。おまえの家に連れて行ってくれ……腹も減っているから、何かエネルギーを食べさせてくれ、落下時の衝撃をやわらげるための緩衝シールド発生に、オレも姐御もエネルギーを使い過ぎた》


 ラチェットは、ワケもわからないまま。喋る金属片を持ち帰った。

 家に到着して机の上に金属片を置くと、金属片は勝手にエネルギーの吸収をはじめた。

 ロウソクの炎や、可視化された電流が金属片に流れ込む。

《ふぅ、生き返ったぜ……この世界にも、物理的な高エネルギーがあったコトは驚きだな》


「物理エネルギーって電気のコト? ボクの作業場は特別だよ、コチの世界の他の家では電気を発生させる生物は飼っていないからね……仕事柄、電気は必要だから」

《コチの世界と言うのか、小僧名前は?》

「ラチェット……ラチェット・レンチ、北方地域の技術者……いろいろと聞いてみたいコトがあるけれ……アレ?」


 ラチェットが金属片を見ると、鼻提灯を出して金属片は眠っていた。

「なんだ、この金属片? 寝ている? まっ、いいか」

 ラチェットは、そのまま金属片を寝かせて修理作業を再開した。


  ◇◇◇◇◇◇


 三時間後──目覚めたガルムの金属片が、ラチェットに言った。

《よく眠ったぜ、頭スッキリだ……聞きたいコトがあったら、答えてやるぜ》

「じゃあ、ガルムの弱点と。本体を分解できるポイントを」

《ぶっ飛ばすぞ、そんなコト教えられるか……別の質問にしろ》


「それじゃあ、どうしてこの世界に落ちてきたのか……その経緯を」

《そういう質問を待っていたんだ、オレと姐御は宇宙のとある星の戦場で戦っていた……宇宙って理解できるか? この異世界でも》

「知っている人は知っているよ、天動説でしょう異界を中心に星が回っているという」

 

《天動説……まっ、いっか。長い間続いた星間戦争だったが、ついに和解して集結した……平和になった途端、オレと姐御は廃棄された》

「要するにお払い箱とか、用無しってコト?」

《ちったぁ、配慮して言葉を選べ……姐御がそんな言葉を聞いたら、微笑ながら粒子系ビームの〝ミラクルタキオン粒子ビーム砲〟をぶっ飛ばされて終っているところだぞ》


 ラチェットは、ついでにガルムが姐御と呼んでいる超巨大宇宙船と、ガルム自身の動力源についても質問したみた。

 ガルムはあまり、その方面には詳しくないらしく。

 適当に言葉を濁した回答で……超巨大要塞宇宙船の動力エネルギーは、異世界の人間にはわからないオーバーテクノロジーで。


【ミラクルタキオン粒子波動】と。


宇宙空間に存在する謎の物質【ダークマター】と。


【生物の生体エネルギー】を併用したハイブリッドエンジンだと説明した。


《姐御の体のコトはオレも詳しくは聞けないからな……オレ自身も、自分がどんなエネルギーで動いているのかなんて興味ないからな……おまえたち人間だってそうだろう、いちいちどんな栄養素を取り込んで生命活動をしているなんて考えながら食事しているか?》

「そこまで考えながら食物摂取はしていない……さっきから会話の中に出てくる、姐御について知りたい」


《姐御は姐御だ、超女型要塞【プルシャ】姉型……今は異世界に落ちたから【超異世界女型要塞プルシャ姉型】だな……姐御は、宇宙要塞形態から人型形態に変形するぞ、変形したプルシャの姐御を見て驚くなよ》


 ガルムの金属片が少し意地悪そうな口調で、余計なコトをつけ加えた。

《おまえたち、異世界人は知らないみたいだから教えてやるよ……おまえたちがいる、この銀河の形状は良く言えば〝巻き貝型〟悪く言えばウ●コ型だ》

 知らなくても良かった余計な事実をガルムから教えられた、ラチェット・レンチは悲鳴を発した。

「ひぇぇぇぇぇぇ!」

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