届かぬ想い

桜 奈美

第1話

冬の冷たい雨は

私の体に差し込んで

痛くて震えている


こんな時は側にいて

温めて欲しいけど

あの人は遠くで私に気付いて無い


私の小さな手では

この体を包む事は出来なくて

どうしたらいいのか彷徨っている


あの人は私に笑顔を見せるけど

それは私を見ている訳では無くて

ただ皆に愛を撒いている


きっと雨と同じで

一瞬で全てに染み込みながら

心をも奪い去って行く


もう考えるのは止めようと

我に返ったつもりでいても

あの人は私から消えてくれなくて


もどかしさの中で

私は今も想い続け生きていて

平気なフリをして心で泣いている


このままずっと

花火の様にドンと打ち上がって

パッと消えながら余韻を残す

それが繰り返される

たぶん永遠に


それでも

あの人の笑顔に私は救われながら

今日も生きている


嫌いになるのなんて

あれこれ言い訳をすれば

簡単だと思っていたのに


またあの人は

輝く笑顔で偽り無い姿で

目の前に現れて去って行く


そして私は

愛しく想いながら泣き続け

ココにいる


それで良いとも思える

あの人はあの人のまま

変わらないで輝いていて欲しい


私の最後の想いは

叶わぬ事の無い哀れなモノでも

あの人がソコにいてくれれば

それだけで私は何も望まなくていい


同じ空間の中

同じ時間を過ごし

触れられなくても

話せなくても

私はあなただけを想っている

いいんだよね

きっと






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

届かぬ想い 桜 奈美 @namishi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る