俺色に染め上げろ

結丸

第1話

 家の近くのスーパーには、よく塗り絵が飾られている。

 なぜかというと、そのスーパーのオリジナルキャラクターの塗り絵が配布されているからだ。

 子どもたちがその塗り絵で遊び、できた作品をスーパーに設置してあるポストに入れると、毎月飾られる仕組みである。

 スーパーのオリジナルキャラクターは鳥をモチーフにしたかわいい見た目だ。

 雀にもフクロウにも見える茶色い姿は、丸っこくて愛着が湧く。


 私は4歳の息子と手を繋いで、壁に展示された塗り絵を眺めていた。

 勢いよく線をはみ出した鳥、お花をいっぱい頭につけてもらった鳥。

 みんな個性があってとてもいい。

 私の息子の絵は、鳥の足元に真っ赤な車が書いてある。


「鳥さんに車を書いてあげたの?」


 そう尋ねると、息子は胸を張って頷いた。


「うん! かっこいいでしょ」


 かっこいいねえ、と相槌を打つ。

 そんなときだった。


「あらっ、◯◯君のママ!!」

「こんにちは、××ちゃんママ」


 声をかけてきたのは、同じ幼稚園のママ友だ。


「××ちゃんの絵も飾ってありますよ」


 私が笑顔で絵を指差した。

 だが××ちゃんはお母さんの手を握りうつむいてしまう。


「どうしたの?」

「それがねえ、いつも遊んでる子に、あの絵が変だって言われちゃったらしくて、落ち込んでるの」


 ああ、なるほど。

 私は塗り絵に視線を戻した。××ちゃんの書いた鳥は、真っ青に塗られている。

 元が茶色だから青に塗ったことを指摘されて傷ついてしまったのだろう。


 どう声をかけたものか迷っていると、息子が××ちゃんに駆け寄った。


「へんじゃないよ!」


 息子の声に、××ちゃんが顔を上げた。


「へんじゃないよ! ぬりえは、おれいろにそめあげていいんだよ! だから、あおくてもいいんだよ」

「……そっかあ」


 その言葉に、××ちゃんの顔が明るくなっていく。

 ナイスアシストだ。息子よ。

 ××ちゃんにすっかり笑顔が戻って、一件落着。


 ──あとの問題は、息子がどこであんな言葉を覚えたのか、調べるだけだ。

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俺色に染め上げろ 結丸 @rakake

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