堕天の品格

紫乃美怜

プロローグ

 天高く、楽園と呼ばれるそこには、いと貴き唯一なる神と、彼に仕える多くの天使が暮らしております。

 中でも一羽、神に特別の寵愛を受ける、美しい天使がおりました。白くつやめく長髪に、エメラルドの瞳は深く澄み、他のどの天使よりも輝く白い翼を背負った美貌の天使――。

 愛を糧とする天使らにとって、神の心を惑わせるほどの彼の美貌は酷く疎ましく、やがて生まれてくる嫉妬という名の感情は、信仰への猜疑さいぎを煽り、多くの天使らを堕天の道へといざないました。

 美貌の天使は楽園の秩序を乱した罰として、楽園を追放されてしまいます。

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