書き起こし9
そもそも神様というのは、姿かたちを持たないものなんですね。
あ、え〜「持たない」だと語弊があるので言い換えますと、見ることを許されないものなんです。人間がその目で認識することさえ憚られるような、非常に高位なご神霊として神様はいらっしゃる訳ですから。
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そうですね。
ですので例えば、あ〜『常陸国風土記』にはですね、神様が出現した際、人々が見ないように一目散に逃げた。なんて記述もあったりします。
なので、御神体という言葉がある訳なんですね。日本では仏教の伝来以前は、神様がおられるとされていた場所そのものを崇拝、礼拝の対象としていました。神様そのものを偶像的に崇拝することは、禁忌だったわけです。
えーところがですね、仏教の伝来、波及とともにですね、神様を人の形に起こしたようなものも増え始めたんですね。
まぁとはいえ、慰霊や呪詛の封じ込めとして作られたなんて言われている場合は、やはりご開帳の段階で坊主が逃げてしまう。なんてこともありますね。
有名なお話ですが、えー法隆寺にあります夢殿の秘仏ですね、救世観音様が聖徳太子の怨霊であると騒がれていた時は、あーこれはご開帳の際に大変な騒ぎになったそうです。
まぁっ、え〜なのでそもそも、仏教と、日本古来の日本の神道では、崇める対象を偶像化するかどうかといった点が、対蹠関係にあったわけですね。
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あっいい気づきですね。
そうなんですよ。この説明だと、仮に偶像化したとしても「日本古来の神様の姿は見るべきでない」という部分がネックになっているんですよね。
なので、じゃあそれをどうしたかというと、日本の神様が仏教へ帰依なさるといった神託があったということにしたんです。そうであれば、仏教に従って造像しても問題ないわけなので。
でも、まぁこれも、メタなことを言えば、その時代における宗教的覇権に基づいた社会構造によって発生しうる、利権潮流の変化に伴ったPR活動の一環ですよね。目にみえる方が宗教としては圧倒的に有利なので。
なので、まぁこの時代でよかったですよね。
もし今が仏教伝播の時代で、シフトチェンジしたい神道派が「神様が偶然俗身を離れられた」なんてやったら、大炎上ですからね(笑)
今でも下手すれば右翼に叩き切られますよ(笑)
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そうですねぇ、私も仕事柄と申しますか、仏道を志し修行を重ねる身ではありますので、えー神様という存在を十把一絡げに扱うことは大変難しいと申しますか…
うー、やはり皆様の中にございますイメージがですね、例えば仏様、神社におられる神様、氏神、サ神、国之常立神、と言われても「神様」とまとまった認識になってしまうんですねぇ。
え〜しかし古神道でありますとか、鎮守の森でありますとか、あーあるいはより局所的な民間信仰としておられる神様でありますとか、もうまさに八百万の神々がいらっしゃいますので、そうなってきますとやはり、取り合うことができる案件も限られてきてしまうんですねぇ。
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んーそうですねぇ…
なので…んー…
ここ…あー●●さんですよねぇ…
いや〜…ん〜…
いやっお話はわかるんですけど、そうですねぇ…そのぉ…
ん〜あまりね、こういう言い方をしてはいけないんですけど、あ〜…あまり関わりたくはないと申しますか、え〜…
これーはー…ちなみにどちらでお知りになられましたかね…?
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あっ██先生の…なるほど…そうですねぇ…
じゃあもう概要は…ですよね、そうですよね、はい。
ん〜すみません…ちょっと、私の存じ上げているお話につきましては、あ〜ちょっと…お伝えするのは難しいかなぁ…と…
いや、すみません、わざわざ足を運んで頂いたのに…はい…
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以下文章は██教授による論文の一部抜粋、要約
《●●神社における考古学的調査および研究の動向》
郷土史研究に使用された文献によれば, ●●神社は1802年(享和2年)に建設されたと記されている(〇〇 , 2011: 25)
研究対象となった文献そのものの基礎的な信憑性は極めて高く, 問題となっている●●神社以外の記述に関しては, 現在発見されている考古学的な証拠との齟齬は概ね見られない.
●●神社の問題点は, 主に建材の種類や建築手法が明治以降(〇〇 , 2002: 103)に使用され始めたものであったという点である.
また, 1802年以降の●●神社が存在しないはずの期間にも, ●●神社で行われた政に関する記述が数多く発見されている.
よって該当地域は, 約60年間にわたり存在しない神社を「存在するもの」として記述し続けていた疑いがある.
架空の神社を記述するに至った原因については, 現在調査中である.
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