うそツキ

@soranisiyuito

うそツキ

一匹のキツツキがいました。

森の仲間達からそのキツツキは嫌われていました。

というのも、彼は嘘をつくからです。

森で迷った人間が、村はどっちだ、と尋ねると、右だ、と答えるのです。村は左にあるのに。

キツツキは、嘘をつくのが楽しいんだ、と言いました。

しかし、キツツキの頭が赤いのは、真っ赤な嘘をつくからだ、と、みんなから馬鹿にされていました。



「僕はみんなになんと言われようと、辛くなんかないさ」

キツツキは夜中、お月様にそう語りかけました。こんな僕でも一緒にいてくれるのは、黄色くてまんまるのお月様だけでした。

「本当にそうかい?」

お月様は僕に言いました。

「あぁそうとも。僕は、僕にとって楽しいことをやっているだけだ。周りから咎められる理由なんてない。騙される方が悪いんだ」



それから日を重ねるごとに、前までまんまるだったはずのお月様は、だんだん欠けていきました。

「お月様やい。どうして君はそんなに小さくなってしまったんだい?」

「キツツキくん。私はもうすぐ死ぬんだ」

お月様はそう言うと、シクシクと涙を流してしまいました。

「そんな!」

キツツキにとってお月様は、唯一の友達でした。

キツツキは、森のみんなに、お月様を助けるようにお願いしに行きました。


「クマさんやい。お月様がもうすぐ死にそうなんだ。一緒に助けてやれないか」

キツツキがそう言うと、クマさんはこう答えました。

「どうせまた嘘なんだろう。僕はもう信じないから!」

キツツキはクマさんを騙して、落とし穴に落としたことがありました。


「ウサギさんやい。お月様がもうすぐ死にそうなんだ。一緒に助けてやれないか」

キツツキがそう言うと、ウサギさんはこう言いました。

「お月様が死ぬわけがないじゃない。お月様はずっと昔から、お空で私たちを見守ってくれているのよ」

ウサギさんもキツツキの言うことには、耳を貸しません。

キツツキはウサギさんに、良い巣がある、と言って、蛇さんの住んでいる洞穴を教えたことがありました。


「リスさんやい。お月様がもうすぐ死にそうなんだ。一緒に助けてやれないか」

キツツキがそう言うと、リスさんは答えました。

「僕がキツツキの頼みを聞く必要なんてないじゃない。僕は今、ドングリ集めで忙しいんだ」

キツツキはリスさんに、美味しそうなドングリがたくさん落ちている場所がある、と言って、トゲトゲでいっぱいの草むらに連れ込んだことがありました。





「僕の言うことなんて誰も信じてくれやしなかった。お月様、助けてあげられなくてごめんね」

キツツキはその夜、ずっとずっと泣いていました。

もうお月様は、ほんのちょっとしか残っていませんでした。



次の日の夜。

とうとう、お月様は空に現れなくなりました。

「僕が嘘をついていたから、誰も僕の言うことなんて信じなかったんだ」

キツツキは、一晩中泣きました。そして、もう二度と嘘はつかないと誓って、森のみんなに謝って回りました。



それから、数日が経ちました。

キツツキは空を見上げると、そこには、死んだはずのお月様がいました。キツツキはとても驚きました。

「キツツキくん。もう嘘をつくのはやめたのかい?」

お月様は、キツツキに優しくそう言います。

「うん。僕は、嘘をつくのはやめたんだ。森のみんなにもちゃんと謝ったよ」

「そうかそうか。それは良かった」

お月様はそう言って、笑顔になりました。

「ところで、お月様は死んだんじゃなかったの?」

お月様はふふ、と笑って答えました。

「あれは私の嘘だよ」

お月様には、満ち欠けというものがあって、あれは新月だったんだ、と教えてくれました。



それからというもの、キツツキは嘘をつくのを一切やめ、森のみんなと仲良く暮らしましたとさ。




おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うそツキ @soranisiyuito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る