瑠花、ここに居ろ

海星

第1話 はじまり

―――――――――秋の昼下がり。


公園のベンチに座る女の子の横に座った。


「可愛い…てか、綺麗…」

「どこ見て言ってんの?」

「その顔。」

「は?馬鹿じゃないの?」


「…学校は?」

「今日は行かない日。てかあんたは?」

「俺、ワケあり。」

「じゃあ、あたしもワケあり。」


「なければここにいないよな。」

「うん。そういこと。」


「俺は、暴力父ちゃんから逃げてきた。この間、母ちゃん守ろうとしてすっ飛ばされて頭打って目覚めたら病院にいた。母ちゃん守る方法は、母ちゃんの親の居るここに俺が家出して母ちゃんにだけわかるヒント残す事くらいしかできなかった。俺はそんなとこ。あ、名前、涼太。」


「あんたもなかなかだね。涼太?あたしは瑠花。あたしは…」


瑠花が拳を握りしめたので、

そっと上から包み込んだ。


「言いたくなきゃ言わなくていい。」

そう言うと、

「…父さんに触られてる。…その、、体。変な事も…。」


瑠花は顔を赤くしてそう話した。


「…苦しいね。大丈夫。俺居るから。もう一人じゃないよ。」



僕がそう言うと、瑠花は大粒の涙を流した。

僕はそっと瑠花を抱き寄せた。


いつも大好きな母さんがしてくれていることを目の前に居る、一瞬で《大切な人》になった瑠花にしてあげた。


自分といるこの瞬間だけでも安心して泣いて欲しくてそうした。


当時まだ小学5年生。

僕は腕いっぱいに憂いを帯びた美少女を抱きしめた。




「瑠花、俺また同じ時間にここに来るから。」

「学校は?行かないの?」

「まだ行かない。できれば行きたいんだけど、母さんや、ばぁばたちがやってくれてるから。」


「…同じとこ行けるといいな。そうしたら一緒に行けるよね?」

「そうだね。そうなるといいね。」



――――――翌月。



2日に1回、公園で会いながら、状況を話した。

少しずつ寒さも増してきてこの日はそれを見越してパーカーを2枚羽織ってきた。

案の定、瑠花は薄着だった、


僕は静かに一枚瑠花に羽織らせた。


「…え?ありがと。いいのに。」

「風邪ひいたら会えなくなんだろ。」

「会いたい?」

「ったりまえ。」


僕は初めてこの日瑠花に唇を重ねた。


「嫌ならもうしない。」

「嫌じゃない」


僕はさらにもう一度重ねた。



「…したい?」


瑠花は僕に静かにそう聞いた。



「…したい。けど、瑠花とはしない。」

「どうして?」

「……母さんが好きだから。いつか、母さんを嫌いになれたら瑠花としたい。なんていうか、適当にやりたくない。」


「するならちゃんとしたいってこと?」

「そういうこと。でも勘違いすんな。俺は、お前が好き。瑠花が好き。この先彼女は作るかもしれない。でも、瑠花と母さん以上なんていない。」


「わかった。でも私は彼氏作らない。」

「なんで?」

「さぁ?なんでだろ?」


そう言って瑠花は僕に唇を重ねた。


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