折鶴

時無ロロ

折鶴

黒山くんが入院した。人が良いがどこか抜けている担任の提案で、クラスの人数分の千羽鶴を贈ることになった。それは千羽鶴と呼べるのか。


黒山くんの入院理由はきっと、河野達からの苛めである。殴ったり蹴ったりじゃない、やった当人達はおふざけだと思ってるかもしれない。けれど僕は河野達が誂う言葉を発する度に、黒山くんの顔が僅かに歪んでいたのを知っている。


知っていたのに、僕は何もしなかった。

僕が声をかけたって迷惑じゃないか?逆上した河野達から僕が苛められはしないか?そもそも思い過ごしじゃないか?


知ってたとか心配してたとか、何もしなかった僕が言ったって嘘っぱちにしかならない。いくら脳内で自分を悪者にしたって、黒山くんが救われる訳じゃない。

僕が追った鶴は歪で酷く不格好だった。


千羽居なくても折鶴を贈ろうと提案した担任のほうがよっぽど。

「だりー」と言いつつも、手先が器用な河野達が追った鶴のほうが、よっぽど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

折鶴 時無ロロ @tokimuroro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ