透明な劇場で今宵
大和滝
踊る人
とある夢を見た。
貴女の身を包んでいた薄紅色のドレスはとても綺麗で、貴女の可愛らしさをより引き出していた。
それなのにどうだ。僕の身を纏わりつくこの真っ赤な
憤りを隠せなかった悪夢に拍車がかかりやすい。
貴女は公爵様と共に一夜を踊り明かし、舞台の上で一つになった。
あぁ、また貴女は観客を魅了し、感動に落とし込む。しかし。
妬けてしまうよ公爵様。そこにいるのは僕でありないのに。夢の中でさえ僕は立てないと言うのかい?貴方の場所には。
僕は目の前で繰り広げられることに耐えきれず、あの日貰った剣で自分の頸を
まったく、目覚めの悪い朝だった。当たり前か。
「まだ赤かったじゃないか」
「1、2、3、4、5、6、7、8!」
黒、緑、黄、紫。カラフルな色のシャツを着た人たちが数字に合わせて頭からつま先までを細かく、かつ激しく動かしている。
僕の数える声を頼りに動く彼らはいわゆる僕の部下だろう。時に誉めることで鼓舞し、気付けをすることで伸ばす。それが僕の役目だ。
「
「はい!」
部下の不出来は僕の責任。必ず育て上げる。それが騎士長の務めだろう。
「貴方は間違っています!」
体育館中を響き渡るこの美声はあの人の声だ。
演劇サークルの花形の貴女は今日も姫を演じている。僕にとってはどこに居ようとも最高のプリンセスだというのに。
しかし、僕は王子ではない。僕は所詮は舞台の下で踊るダンサーで、あくまで騎士に過ぎない。貴女の隣にはいつになっても立てていない。
貴女との関係はいつだって浅い。
貴女は僕の頭に水をかける。
貴女は僕の服をボロボロに切り裂く。
ある時、僕はつい貴女に粗相を口にした。
「醜くならないで」
貴女は僕を思い切りぶった。華奢な体からは思いもよらない強さを出すものだから、飛ばされてしまった。そしてそれに唆られた僕はつい魔が刺して、貴女の小指を噛んでしまった。
貴女の血の色は赤色で、そこらの人となんら変わることはなかった。
それなのに、貴女が特別に感じてしまうのはきっと、貴女は姫なのでしょう?
あぁ、さぞかし貴女の色は、濁りをしらない、無垢で、純粋な色なのでしょう。
『今夜、二人だけの舞踏会を。
僕と一曲踊っていただきたい。』
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