第37話 ダリオスのダンジョン2

「そこ、そこの人なんであんたまで顔に色塗ってんの?」


なんか近所の村人が来て俺たちを手伝おうとしている?


なんか勘違いしているような気がする。


「あんた達、あれじゃろ、あの、人を驚かせるやつ。」


「まあ人を驚かせる事に違いはないんだけど。そんなにおおっぴらにやる事でもないんだがな。」


スーリゲーブに面白い計画を聞いた後輩の商人エジサスはその計画の実行中なのだがなんか調子がおかしい。


この計画はダンジョンから魔物が出てきて近隣の村を脅かしているって噂を流して討伐隊を動かす振りをしながら軍が動くきっかけを作るって言うのが目的なんだけど。


その近隣の村人がお祭り気分で集まってくるってのはどうなんだろう。


「俺なんか間違ったかな?」


「あれー。ここでも仮装大会している。」


なんか冒険者の女が子供を連れてやって来た。


「ジュネは初めて?あっちこっちで魔物の格好をする人達がダンジョン前に集まっているのを見たよ。」


「あんたらも出演するんか?」


頭に角をつけて顔を青く塗った人が声をかけてくる。


「出演って何?」


サーフラが聞く。


「テレビって動画の魔法具知っているか?」


どこの転生者がそんなものこの世界に持ち込んだんだよ。


「なんだかビックリテレビの仕込みみたいなのをしてるから仲間に入れてもらうんだよ。」


でも、主催者の商人は困惑しているみたいだ。


「ちょっと、ちょっと待って。ここに勇者とか剣聖とかの役はいらないんだけど。」


ムール達を見てエジサスが声をかける。


「え?オレたちダンジョン攻略に来たんだけど?」


「ここ、中級クラスのダンジョンだよ。子供とか女性だけじゃ危ないよ。」


と言いながらエジサスはパエリの額の紋章を見る。


「まさか本物の勇者って事ないよね。コスプレだよね、それ。」


この人なに言ってんの?って顔をしてパエリがエジサスを見る。


「どうした?旦那。」


顔を緑色にした冒険者が近づいてくる。


「勇者のコスプレか?えらく可愛らしいな。」


そう言いながらパエリの頭を撫でた手が額当てに触れるとバンっと弾かれる。


「なんだ?ひどいじゃないか。」


と言いながらパエリを見るが別にパエリが動いた様子はない。


「もしかして?」


そう言って冒険者はパエリの額当てに手を伸ばす。


額当てに触れた途端に手が弾かれる。


「ほほほ本物?!本物の勇者だ。」


「本当か?」


エジサスはその冒険者に聞く。


「偽物ならこの勇者の紋章は身につけられない。」


「たとえコスプレの衣装でも勇者でない者が勇者の紋章をつけることは出来ないんだ。」


「ええええええ。まずい、まずい、やばいやばいやばーい。」


「なんでバレた?勇者にはなんでもお見通しなのか?」


1番バレちゃまずい相手が来てしまった。


素性や目的がばれていたら帝国が滅びてしまう。


どうしよう、どうしようどうしよう。


「解散!撤収だ撤収!」


急に慌ただしくなって商人と冒険者が蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまった。


仮装した村人達がボーっとしている。


「なんかイベント終わったの?」


ムールが聞くけどあんまりよくわかっていないような雰囲気。


「すげーな、あんた達が仕込みの方か?」


なんか村人が盛り上がっている。


「驚かせようって準備している方が実は驚かされる側ってビックリだよー。」


「手が込んでるなー。おもしれー。」


「それで撮影魔機はどこなん?わしらも撮って撮って。」


何事なん?


ジュネが首を傾げている。















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