第26話 エルフの里
世界樹の葉寿司とか、世界樹ウォーターとか、世界樹の枝で作ったお守りや木刀などを売っている露店が道の両方に並んでいる。
パエリは片っ端から露店に立ち止まってはなんでもかんでも買い込む。
「エリクサーってエルフの里のお土産物だったのね。」
サーフラが驚いている。
「ムール、お金ちょうだい。」
パエリはいつの間にオレの娘になったんだ?
こいつは多少のお金を持たせても親のいない子供達を見ると持っているお金やパンを全部配ってしまうからいつもスカンピンだ。
何に使うとか聞いても無駄なのでジャラジャラと硬貨を渡す。
エリミリア金貨なんかを渡すと受け取った方も困るだろうから、ドルクル金貨や銀貨や銅貨を取り合わせて渡す。
べつにいくら使っても減らないんだけれどね。
「あれ、食べよう。」
ってパエリが指差した先では何やら粉を練っている様子。
「蕎麦だ。」
パエリが嬉しそうにしている。
「勇者様、ここの蕎麦は絶品だよ。」
里のエルフが言う。
「里の水がいいんだよ。大昔の勇者が掘った泉の水がちょうど蕎麦打ちやつゆを作るのにぴったりだったんだよ。」
獣人族のうどんの次は蕎麦か。
どっかにラーメンもありそうだな。
勇者があの前世から召喚されて時間がいっぱいあればそういう物を作るのは自然だよな。
パエリが蕎麦を食べながら遠い目をしている。
やっぱりあの前世が恋しいんだろうな。
親や友人、好きな人もいたかも知れない。
それなのに訳の分からない世界に連れてこられて、しかもほったらかしで、自分で生きていかなくちゃいけないなんて理不尽過ぎる。
まだ子供の女の子なのに。
そう思うと可哀想で涙が出てきた。
「ムール、泣いているの?あの前世を思い出したの?」
そう言ってパエリがオレを抱え上げる。
しまった。
違う、違うんだ。
オレのことじゃないんだ。
パエリからするとおんなじか?
とにかくここはオレが慰められる場面じゃないんだ。
パエリはオレを抱えたまま言う。
「ざるはもういいから出汁に浸かったあったかい蕎麦が欲しいかな?」
「パエリもう5杯目よ。大丈夫?」
サーフラが呆れている。
「世界樹の葉寿司も食べてたし。」
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