第17話 ダンジョン2
「こんな初級ダンジョンに魔王が来るかな?」
ムールが首を傾げる。
「街じゃ、すごい噂になって盛り上がっているよ。」
パエリが言う。
ギルドでもこの為に高ランクの冒険者を集めているらしい。
「まあ、勇者がいるから大丈夫だと思うけどね。」
ってギルドマスターに笑いながら言われちゃったけどね。
あのギルドマスターパエリがレベル1だからって舐めてんだ。
勇者に限って言えばレベルとステータスは一致していないんだけどね。
「初級ダンジョンでも街に近いからスタンピードでも起こったら大変だよ。」
あっという間に街に魔物達が到達しちゃう。
とは言うものの今のところ何もおかしな事は起こらない。
ダンジョンの最下層の隠し部屋で数人の顔を緑色に塗ってゴブリンのふりをしたつもりの帝国の兵士が話しをしている。
だけどそんなにいかつい筋肉質のでかいゴブリンなんかいないよ。
「あいつらさっさと帰らないかな。」
「いくら魔物を集めてもあの2人が来て狩ってしまうからぜんぜんスタンピードなんか起こせない。」
「もう朝から30回以上周回しているからそろそろあの女の子が『お腹すいたー。』とか言い出す頃じゃないか?」
「だといいんだけどな。今日は昨日より魔物寄せ香草をたくさん持って来たし、ダンジョンの魔力補充用の魔石も持って来たからな。」
「大丈夫かなシュギル子爵。」
「だってシュギル子爵のところ貧乏だから予算オーバーになってないかな?」
「うまくいったら皇帝にご褒美もらえるんじゃないかな。」
偽ゴブリン達は盛大に魔物寄せ香草を焚き始めた。
「なんだか煙たくない?」
そばにいた冒険者の1人が言う。
ムールがクンクン匂いを嗅いでいる。
わんこかにゃんこみたいだけどこれは嗅覚強化のスキルを使っているんだ。
「ムール、そのスキルってけもみみとしっぽも出さないとダメなの?」
パエリの目つきが怖い。
「なんかかわいいのがいる!」
冒険者の女の子がムールを抱き上げる。
「プワプワであったかい。」
まあ、子供だから大人より体温が高いからね。
「は、はなせ。」
そのバインバインを押しつけるな。
匂いがわからなくなるだろうが。
「かえしなさい。」
パエリの目つきがさらに怖い。
強烈な威圧感を発して周囲の者を屈服させる。
冒険者の女の子もがっくり膝をついてムールを頭の上に掲げて差し出す。
オレは献上品か?
そうこうしているとダンジョンの下層が何やら賑やかになって来た。
「来たー。」
「スタンピードの予兆かぁー。」
冒険者は大盛り上がり。
「いけー。」
「十人長、なんか様子が変です。」
「ん?」
「あの人達喜んでます。」
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