愛の結晶

@yukoko1234

愛の結晶

娘の麻美(まみ)が失踪した。千景はその知らせを聞いたとき、千景は、夫に話す前に風呂掃除を始めた。汚れが気になっていたのもある。しかし、それ以上に動揺したからだ。精神を落ち着けるには、家事が最適だ。手を動かすかすことで、心の平安も得られることだけでなく、何かしら成果を得られる。主婦にとってマルチタスクは重要だ。千景は風呂場のカビ取りまで終えると、改めて、状況を整理することにした。


麻実の婚約者、秦からの電話だった。

『申し訳ありません。麻実さんが置手紙を残して失踪しました。』

最初の言葉を聞いて思わずはあ?と間抜けな声を出してしまった。千景のことなどお構いなく秦は続ける。

『置手紙には、しばらく1人になりたいから、探さないでください。落ち着いたら貴方と話し合うために戻ります。とあったので。警察にも行ったのですが、成人女性が自発的に失踪した場合は、あまり積極的には動いてくれないそうで。そちらには、連絡ありましたか?』

『い、いえ…。』

『僕には分からなかったのかもしれませんが、もしかしたらマリッジブルーだったのかもしれません。そういう機敏には疎くて…。』

『いえ、貴方が謝ることではないのよ。そうね、私からも連絡してみるわ。』

『ありがとうございます。』


それがさっきまでのやり取りだった。

娘の麻実は自慢の娘だ。親の贔屓目かもしれないが、頭脳明晰、容姿端麗。性格も悪くはない。少なくとも、社会人となっても学生時代の友人とは交流があるようだ。一年に何回かは旅行にも出かけている。つい一か月前には、お土産だって渡してくれた。

気が付くと風呂掃除だけでなく、カビ取りも終えてしまった。やることを終えてしまったから、とうとう夫に話さなければならない。幸いさきほどよりは落ち着いてきた。きっと冷静に話し合えるはずだ。


風呂場から夫の雄二の書斎にノックする。

返事はないが、了承を得たものとして部屋に入った。

雄二は、相変わらずゲームに夢中で、千景のノック音に気づいていなかった。

「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

「…何?」

雄二は、ゲームを中断されることを何よりも嫌う。若い時からそうだった。不惑を超えたのだから、子供っぽい趣味は控えてほしいところだった。

「麻実ちゃんがいなくなったのよ、秦くんから連絡があったのよ?」

雄二が面食らった顔をした。

「どうしたの?いなくなったって?」

「置き手紙を残して、いなくなったのよ。自主的にいなくなったから警察も動けないみたいだし。何か聞いてない?」

「知らないよ!どうしよう、麻実に何かあったら…。」

「ちょっと辞めてよ、とにかく今は情報を集めないといけないの。」

「ああ、もしかしてあの男に暴力でも振るわれてんじゃ…。」

「秦くんを疑うのはやめて。あの子がそんなことする子じゃないわ。」

「だいたい俺はこの結婚に賛成じゃなかったんだ。麻実に結婚は早い。」

雄二は自分の世界に入り込んでいる。娘がいなくなったのに、ある意味幸せな男だ。

「あのね、婚期逃したら、惨めよ?世間はそういうことを指摘するのはいけない風潮だけど。とにかく、貴方も麻実に連絡して頂戴。貴方からいうともしかしたら、連絡あるかもしれないわ。」

これ以上言うと喧嘩になりそうだったので、会話を切り上げて部屋から出ることにした。


全く夫は暢気なものだ。若いころはそこが良かったのだけど、緊急事態には役にたたない。この性分は、彼が生まれた家に関係がある。彼の実家は裕福だった。少なくとも千景と違い、私立大学に通いながらバイトもしたことがない。千景は、授業料の安い国公立でかつ奨学金も最大限に活用していた。金持ち喧嘩せずとはよくいったものだ。

怒りが娘から夫に向かいそうになっていることを自覚し、千景は溜息をついた。

彼のことは愛している。でも、それは彼の家柄も込んでいる。そしてそれは彼も同様だ。千景の稼いでくれるお金も込みで、彼は自分を愛している。それはお互い様だ。それでも無性に虚しくなる。セックスをして、子供を産み、育てても分かりえないのが夫婦なのかと。なのに、それらを経ない友人とは、伴侶より分かり合えることもある。秦の母親で、親友の麻衣に連絡することにした。彼女なら、分かってくれるはずだ。



千景から電話が来た。もちろん、千景の娘のことだろう。麻衣は、慌てず電話に出た。

「もしもし、ちーちゃん?」

高校生から使用している愛称で呼びかけた。

「ごめんね、麻衣。こんなことになって。」

「ううん、麻実ちゃんが無事にだといいね。」

「麻衣も大変なのに、ありがとうね。全く私の馬鹿娘ったら…。」

「きっとあの子にも事情があるのよ。それに、秦は旦那に似て気が利かないところもあるからね。」

「そんなことないって!貴方の子だもの。学歴も職歴も完璧で、性格も穏やか。何が文句あるのかしら。」

千景は麻衣のことを過剰にほめる。これは高校生の頃からの習慣だ。千景は、自分が認めた相手には、賞賛を送る。それが過剰だと思わないこともなかったが、悪い気はしないので、そのまま受け取ることにしている。

「そんな、麻実ちゃんだって、超高学歴じゃない。仕事も国家公務員でさ。」

秦は、地元の中堅国公立卒で、父親と同様、警察官となった。大卒とはいえ、ノンキャリアだ。手堅いといえば、そうかもしれない。対して麻実は、私立学園の幼稚舎から付属の大学に通い、現役で国家公務員試験に合格している。現在は、地方都市で経験を積んでいるが、そのうち中央に勤めることが確約されている。こういった女は、婚期を逃しがちだが、幸い、幼少期から、母親同士が互いの子供を交流させていた結果、高校生頃から付き合い始めて今に至る(途中で別れて別の相手と付き合ったりしたようだが、納まるところに納まったはずである。)

それから、取り留めない話を小一時間続けて、電話を切った。

千景と電話すると時間なんてあってないようなものだ。今度は直接会いたいと思ったので、メッセージアプリでお茶の誘いを送った。そうだ、百合子も誘おう。高校の友人グループで近隣に住んでいるのは、千景と百合子だけだった。大人になっても変わらない友情はありがたい。特に女は、結婚、出産、仕事で、それぞれの道に分かれ疎遠になりがちだ。千景は、教頭に上り詰めた才女であるし、百合子は、派遣とは言え大手メーカーを何社も経験している。自分は結婚してから専業主婦だったが、彼女らは変わらず交流してくれている。また、結婚前に勤務した会社も外資系ですごいとほめていた。実態は、ただの金融業、ぶっちゃけると金貸しのコールセンターなのだが、彼女らは、外資のバリキャリと麻衣を崇めていた。自分の仕事に誇りを持てない時期だったので、その言葉は当時の麻衣を救ってくれた。

女の友情は儚い。この言葉は、千景と百合子の友情には当てはまらなかった。今回のことも友情があれば、乗り越えられるだろう。

婚約者に逃げられたにも関わらず、息子の秦は平静に見えた。もしかしたら、内心はショックを受けているかもしれないが。秦は、親の自分が言うのもあれだが、どことなく浮世離れしていた。別に禁欲的とか貧乏な生活をしているわけではなかった。むしろその逆だ。

それなりに裕福なものを与えてきた。そのせいか、何かに執着する気質が薄い。その割には、成績は中の上を常にキープしており、いじめられたこともない。思春期を迎えて、大きな反抗期もなく、同じ男の子を持つ母としてかなり楽だったと思う。そこそこモテてはいたので、彼女も麻実以外にもいた。ただ、うまくいかない時、追いすがったりする様子はなく、別れても淡々としていた。これは本命ではないからだと思うことにしていた。結局、麻実には結婚するくらいには情があるはずだからだ。

それに男性は本命と見定めた女性への献身は、女性には理解しがたいものである。麻衣は旦那のことはそれなりに好きだから結婚したのだが、(そもそも好きでなければ、結婚などしない)旦那は、麻衣がいないと死ぬとまでは言わないが、いないと抜け殻になりそうな気がする。それほど麻衣への想いが強い。麻衣自身もそこに胡坐をかかないようには努力した。セックスは好きではないが、彼が望むのであればできるかぎり応えてきた。風俗で働いたことはないが、気分が乗らない日は風俗嬢の気が分かる気がした。料理だって、苦手で正直、栄養さえ摂取できればよいと思っていたが(外食は別である。なぜなら、金を払っているからだ。払ったものに見合うものが提供されるべきだと考えている。)、三食、ネットでレシピを見ながら手作りしている。

とにかく、麻衣は麻衣で努力してきたのである。

千景とは、高校からの友人だ。それぞれの子を幼児期から交流させてきた。千景からは、

「麻衣の子と私の子が結婚したらいいよね。」

とよく言われた。半ば本気だったと思う。結果として、それは現実となった。

麻実と秦に子供ができれば、その子は麻衣と千景の血が交わった子でもある。千景はそのことを人生の最上と考えている。もちろん、麻衣だって同じだ。なのに、少し息苦しいのはなぜだろう。友人との結晶が現実に存在することは素晴らしいはずなのに。

ふとリビングの隅に積まれた段ボールを見やる。中身は化粧品だ。副業で始めた化粧品販売がうまくいっていないせいだろう。無添加でノンシリコン。製品の品質は良いのになぜか売れない。きっと、副業がうまくいってないこと、麻実が失踪したことその他もろもろの不調が重なって、喜びを感じる機能が鈍くなっているのだ。そう結論づけて、お茶の誘いのチャットを送った。それが現実逃避だとも薄々気づいていたが、その気持ちはなかったことにした。そこにないと認識すれば、ないと同じだ。

百合子と千景から返信があった。二人とも返信が早い。二人の返信内容を確認し、今週の日曜日にお茶会をすることになった。持つべきものは、気の置けない親友だ。


お茶会当日。某ホテルのアフタヌーンティーを楽しむ会だ。時間は3時間とたっぷりある。追加料金を払えば、延長も可能だ。学生時代は、チェーン店のコーヒーショップだったが、大人になれば、背伸びした場所に鞍替えする。しゃべっている内容も変わるのだ。

少しドレスアップした(いわゆるちょっとしたパーティー用の服)し、ラウンジに向かう。

シックなレースのワンピース。ニッセンでお手頃価格で購入したとは思えないほど、高級感に溢れている。色は青とグリーンの中間色。肩が露出するデザインで、女らしさを表現している。こういった尖ったデザインは旦那にはもったないない。賞賛と軽蔑が織り交ざった女子会にこそふさわしい。戦闘服を着て準備は万端。

千景と百合子は既に到着していた。彼女らも麻衣と同じく、戦闘服に身を包んでいた。千景はマカロンカラーのピンクのワンピース。小柄な彼女にぴったりだ。そして百合子は着物だった。黒と赤の牡丹が咲き乱れている。帯は、金糸を基調とした、七宝模様だ。麻衣は着物のことは分からないが、百合子には似合っている。

「お疲れー。」

「そっちこそ!、会いたかったよ。」

「大変だったでしょ?」

「そうなのよ、聞いてよ。」

挨拶もそこそこに本題に入る。もちろん本題は、麻美と秦のことだ。

「麻美ちゃんから連絡あった?」

百合子が切り出す。

「ううん、あの馬鹿娘、何やってるのかしら。」

「仕事は?」

「それはきちんと出勤しているみたいね。」

成人した娘の職場に安否を尋ねるなど、プライドが許さない。仮にも教頭まで出世したのだ。家庭だって抜かりなく運営してきた。その結果が娘の失踪なんて無様だ。

「まあ、成人した子供の安否なんて、警察も取り合わないよね。」

麻衣がフォローを入れる。

「流石、私の女神!」

百合子は、麻衣のことをたまに女神を呼ぶ。百合子は比較的富裕層の出であるが、両親が不仲で機能不全の家庭だった。そのストレスを嫌な顔せずに麻衣が受け止め、慰めていた。その過去があったため百合子は麻衣を友情を超えて妄信している。その結果が女神の呼称である。

「麻実ちゃんは賢い子だから、すぐに戻ってくるわよ。きっとマリッジブル―よ。」

「頭が良いから、いろいろ考えちゃったんだと思うね。秦くん以上の相手はいないって分かってるはずよ。」

「だといいけど。」

お茶を一口飲む。ダージリンの香りが心を落ち着かせる。

「そうよ、20代で結婚なんて、アドバンテージを捨てるなんてありえないわ。」

28で結婚した麻衣が力を込めて言う。

「そうよ、私は30前半で結婚したから、世間の風当たりが強かったのよ。」

「ありがとう。私も30手前で結婚したけど、そうよね、30前後まで結婚しない女はどこかおかしいもの。」

「そうよ、出産のことを考えたら、普通はそのあたりで結婚するのよ。」

「奇形児や障害のある子が生まれるのよ?わが子がそうだったらと思うとぞっとするわ。」

「ねー。かと言って生涯独身を貫くのもね?」

「でも、誰にも選ばれなかった劣った女の遺伝子を後世に残すのもどうかと思う。」

「賢さって女由来だからね。馬鹿な女は滅びるべきよ。どうして存在するのか理解できないわ。考えなしに、子供をたくさん作るのよね。少しは脳みそを使ってほしいものね。」

「社会保障費がかさむ要因よ。私の子に負担を負わす気?子なしは、とっとと死んでほしい。」

会話は更にヒートアップする。良識とやらがはびこっている世間では言えない本音をぶちまける。個人の尊厳や自由なんて毒にも薬にもならない。結局のところ、優秀で美人な女が生き残るのが、世の常だ。そうして歴史が作られ、千景ら勝ち組が存在している。

「30以上の独身女に、安楽死なんて必要ないわ。今まで独身で楽しんできたんだもの。その代償として、死刑にするべきよ。」

「それは言いすぎよ、百合子。」

「慈悲深いね、麻衣。」

「話が脱線しすぎてない?」

千景が起動修正をする。

「そうかしら?でも、出産の適齢はあるんだし。」

「そうね。」

「それに、若い方が自然な出産ができるのよ?」

「あー、帝王出産で生んだって聞くと、ちょっとずるしているって思っちゃう。」

「無痛もそうよね。」

「確かに。」

「シェイクスピアにもあったわよね、帝王切開は普通じゃないって。」

「そうなの?ちーちゃんは物知りね。」

麻衣がお菓子に手を伸ばした。ジャムを挟んだビクトリアケーキ。ケーキの屑が零れそうだったので、手皿で受け止めた。

「そんなことないよ、麻衣は上品ね。きちんと手皿で受け止めて。」

「そうかな?」

「歳を重ねても美しくて、品があるって完璧じゃない!」

「麻衣は、生まれた時から和の心が備え割っているからね。」

褒められてむず痒いが、悪い気はしない。むしろいい気だ。

姦しい話はまだまだ終わらない。

「百合ちゃんだって、今日着物じゃない?」

「ネットで買ったアンティークだけどね。でも和っぽい?和っぽい?」

小首をかしげて麻衣に問う。

「うん、よく似合ってる。」

子供にするように、麻衣は百合子の頭を撫でた。百合子は満足そうだ。

「やっぱり、このメンバーだと言いたいこと言えるから、楽ね。」

「そうね。友情に乾杯ね。」

千景が、ティーカップを掲げ、麻衣のカップに乾杯する。カップに罅が入るかもと思ったが、もう遅い。仮に罅が入ったとしても、麻衣のために乾杯したのだ。罅など些細なことだし、麻衣のために疵がつくのであれば、それは名誉なことだ。ホテルはそう思わなければならない。

「すみません、カップに罅が入ったので交換してもらえるかしら。」

千景がスタッフを呼ぶ。スタッフはニコリとして、カップを下げ、すぐに新しいカップを持ってきた。

「ありがとう。」

形式的にお礼を言った。

「千景偉いわね。」

「常識よ。それに、こんな仕事しているのよ?可哀そうじゃない?労ってあげないと。」

憐れみの目線をスタッフに向ける。千景は己の優秀さのせいか、大企業のサラリーマン、士業、公務員以外はすべて見下す傾向がある。日本では勉強をする機会が平等に与えられているにも関わらず、誰でもできるくだらない仕事に従事しているのが不思議でならない。ということは、努力が足りないのだ。そして、自分はそんな彼らを後目に、努力を続け、結果を出してきた。国公立の院卒で幹部候補生として、採用された。途中、欧米で開催されるシンポジウムにも参加を打算された。生憎、麻実を妊娠していたころなので、参加はできなかったが。とにかく、自分の努力が足りず、誰でもできるくだらない職業についている人間は、千景は理解しがたい。とは言え、年を重ねるにつれ、彼らを表立って批判することは控えるようにした。世間では、職業に貴賤はないことになっているし、それに下賤な職業がないと、社会は回らないことも理解するようになったからだ。劣等遺伝子を持つ人間は、優勢遺伝子を持つ人間のために存在するのだ。その事には感謝をしないといけない。その意識から出た発言だった。

「ちーちゃんのそういうとこを見ているから、麻実ちゃんもしっかりしているんだと思うわ。」

「しっかりしてたら、結婚前にいなくならないわよ。」

「若いからね。反抗期もなかったんでしょ?今がその時なのかもよ。大丈夫よ、賢くてしっかりした子だから。」

「さすが麻衣ね。ありがとう。」

麻衣のいう通り、麻実は反抗期はなかったと言える。思春期特有の情緒不安定さはあったが、親に歯向かったことはなかった。彼女の精神のゆらぎに、穏やかに論理的に向き合ってきたつもりだ。彼女も親譲りの賢さか、(知能指数は母親からの遺伝なので、千景の遺伝に違いない)千景の指摘を受け入れていた。千景も口うるさい母親にはなりたくなかったので、過干渉はしないように心掛けていた。流行りの服が千景の趣味と合わなくても表立っては否定しなかった。ただああいう服を着るということは、下品であり、一部の変質者のターゲットになることである、人の趣味だから否定はしないが、世間ではそういうレッテルを張られ、引いては自分が損するのだと。第三者から見れば、十分否定しているのと同じだが、千景は気づいていない。賢しげに言葉を紡いでいるが、ただただ愚かしい。その滑稽さを指摘する友人など千景にはいなかった。


「ねえ、これ麻実ちゃんじゃない?」

百合子が会話に割り込んできた。携帯端末のアプリの画面を見せて来た。インスタグラムである。

「どうしたのよ?」

娘のアカウントなどとっくの昔に知っているし、失踪してから更新されていない。

「麻実ちゃんの友人の友人のアカウントにいたのよ。」

「そ、そこまで見てたの?」

正直長年の友人の行動に引いた。

「やあね、オシントってやつよ。情報分析の手腕よ?」

この友人は、ネット黎明期からネットを嗜んでいるせいか(おかげか)玄人はだしの技術を断片的に取得している。

「でどうなの?」

「そう、これよ。」

端末には、飲み会の写真がアップされていた。

「…何、この下品な集まり。」

「仕事仲間の集まりみたいね。」

日本人だけでなく、黒人やその他アジア人が多い。ムスリムやアーミッシュもいる。確かに仕事関係の会合らしいが、千景には許しがたい光景だった。

「でもこんな低俗な集まりにでなくても…。」

千景は、田舎のステレオタイプの価値観を保持している人間だ。海外であれば、欧米が一番で素晴らしい。逆に、黒人や日本以外のアジア人は野卑で救い難い人間、いや人間扱いしていない。ムスリムは、TVでみるテロリズムで男尊女卑のレイシスト、アーミッシュは宇宙人だ。これは、麻実を授かる前、ヨーロッパの研修に誘われたことがある経験から来ている。返事をする前に、妊娠が発覚したので、研修は別の人間になったが海外、しかも欧米の教育研修に声をかけられたことが、千景を増長させていた。

「下積みの時期だから、こういうところにも出ないといけないんじゃないの?」

麻衣がフォローをかける。

「でも、だからといってこんな水商売みたいなこと…。キャリアにさせる仕事じゃないわ。だから日本は後進国なのよ。」

フェミニズムとレイシズムが顔を出す。

「そうよね。私たちの時期も酷かったのに、今もあるのね。」

ここから、日本の駄目なところやら、ありもしない欧米の男性の紳士を並べ立てる。

日本の地政学上、アフリカや東南アジアとの交流は必須なのだが、千景は気づかずに年を重ねた。なまじ優秀なために、己の知性に絶対の信仰をもっている。狂信的と言っても過言ではない。自身の正しさが指標であり、その指標を周囲に押し付ける。それが原因で人間関係に軋轢を生み、少なくない人間が彼女の元を去っていった。それでも千景は自身の正しさを信じ、その正しさを受け入れる人間、麻衣と百合子とあと数人しか受け入れられない。それが彼女の愚かさであり、哀れなところでもあった。

彼女らの姦しいお茶会は終わりが見えないと思ったが、スタッフが終了の時間を告げた。

喋り足りないが、仕方のないことである。とは言え、河岸を変えればよい話だ。ホテル近くのチェーンコーヒー店に移ることにした。


楽しい時間は、終わりそれぞれ家路に向かった。

高揚した気持ちが段々と降下していく。現実は変わっていないからだ。

千景は思わずため息をついた。ため息をつくと幸せが逃げるというが、その程度の幸せならむしろ不要だ。千景はこれまでの人生、自分の実力で幸福をつかみ取ってきた。受験、就職、昇進、結婚、出産、子育て。それら全てに一定以上の成果を出してきた。これから年老いていく自分や夫、両親の介護があると思うが、それらは解決できるだろう。千景の人生は、傲慢そのものだった。それなのに、娘の失踪が台無しにした。真っ白な絹布に、墨をぶちまけられた気分だ。墨流しなら美しい反物になり、着物になるだろう。麻実のしたことは、そんな優雅なものではない。千景の人生を否定したのだ。それは罪深いことだ。娘には罰を受ける必要がある。

一方で、自分の娘だからこそ、許してもいいのではないか、という特別扱いをしてしまう。自分の血を、遺伝子を分けた最高傑作だ。それに見合う教育も愛情もかけてきた。彼女も千景の愛以上にかけた成果を出してきた。そんな完璧な彼女の若さ故の一時の過ちを、許さないのも道理ではない気がした。千景は、自分が認めたものには、特に、甘い。どこにでもいる普通の人間なのだ。


携帯端末が震えた。ニュースアプリか。それとも、 夫からのラインか。あまり期待をせずに画面を見て、目を見開いた。麻実からの連絡だ。急いでメッセージアプリを立ち上げ、着信内容を確認する。

「話したいことがあるから、お母さんだけ、駅前のファミレスに来てほしい。先に入っているから。」

なんとも素っ気ない文章である。マリッジブルーだがなんだか知らないが、あまりにも身勝手である。身勝手なのは、千景譲りで似たもの母娘だ。耳順を迎えるのに、人の話を都合よく解釈する。これが優秀な人間と自覚しているものの、実態かもしれない。千景は端末を鞄にしまい、指定された場所に向かうことにした。


駅前のファミレスは、繁華街に近いせいか、24時間営業だ。若者がたむろっており、落ち着いて話ができないと思った。が、すぐに思い直した。無意味な喧噪があったほうが、自分たちもそれに紛れ、あまり深刻にならずに話が進めることができるかもしれない。会話での一番のタブーはお互いが黙りこむことだ。この状態になると、進むものも進まない。不毛な時間だけが過ぎるだけだ。

千景は、従業員に案内され、麻実がいる席についた。

「…来てくれてありがとう。」

麻実は、どこか気まずそうに言った。

「いいのよ。」

努めて、冷静で物分かりの良い母親を繕う。本当は、怒鳴りたかったが、流石に騒がしいファミレスでもマナー違反だし、己のプライドもある。

「何か頼む?」

「ドリンクバーにするわ。」

恒久ホテルの本格アフタヌーンティーを堪能した後だったので、まだ空腹ではなかった。

それに、年を取るごとに摂取できる食事量は減ってくるのだ。

席のタッチパネルで、ドリンクバーを注文し、飲み物を取りに行く。ここは無難にコーヒーがよいだろう。ホットコーヒーを淹れ席に戻った。麻実は、携帯をいじっていた。

「単刀直入に聞くけど、どうして失踪なんてしたの?」

先制攻撃を繰り出す。

「ちょっと、考えごとをしたかったの…。それだけよ。秦くんにも連絡したわ。ごめんなさいって。」

「それで、終わると思っているの?」

「…。」

「どれだけの人に迷惑かけたと思ってるの?今回の件、あちらの家が寛容だから、よかったものの、破談になってもおかしくなかったのよ?」

麻実はうつむいたまま答えない。千景は更に続ける。

「秦くんのどこが不満なの?あれだけいい人なんて、そう簡単には見つからないのよ?それにいたとしても、自分に好意を持ってくれるなんて奇跡なのよ?貴方は恵まれているからそういうことに気づかないでしょうけど。」

「…それはママもでしょ?」

ようやく麻実が言葉を発した。

「は?」

「ママも同じじゃない。パパの何が不満なの?」

「それとこれは違うでしょ。それに夫婦はそれぞれなんだから。心配しなくても、パパとはこれかもうまくやっていくわよ。」

「…パパの心にママがいないの、知ってるでしょ?」

「何いってるの。そりゃ若い貴方が望む関係とは違うわよ。」

「小学生のころ、パパが若い女の人とホテルに入るの何回もみたの。」

「そんなことはとっくに知ってるわ。パパとのことは貴方には理解できない理屈なのよ。」

「何それ。意味不明。」

「それに、パパと秦くんは違うでしょ?」

「…秦は、私のこと何とも思っていないよ。」

「何言ってんの、確かにイタリア人みたいに愛を語るタイプではないけど、それでも好きじゃなかったら、結婚なんてしないわよ。」

「…」

「さっきから子供みたいにだた捏ねて何なの?自分が完璧って思い上がっていない?だから、秦くんにも不相応なものを求めているだけでしょ?」

「…。ママはいつも私の話を聞いてないし、秦、というか、秦のお母さんへの崇拝ぶりははっきり言って気持ち悪い。どうして、そこまで入れ込めるのか理解できない。」

「麻衣は完璧なのよ。何が悪いの。」

「…麻衣さんは、ママが思うほど完璧じゃないよ。その子供の秦も。」

「そりゃ人間だもの。欠点が全くないなんて思っていないわ。でも欠点が少ない人よ。」

「ママにとってはそうかもしれない。けどそれは私にとってはそうじゃない。麻衣さん、マルチにのめり込んでいるの、知らないわけじゃないでしょう?」

麻実は更に続ける。

「自然派だかなんだか知らないけど、マルチにはまって、強引な勧誘かけまくってるわよ。」

「まあ、旦那さんが警察のそこそこのお偉いさんだから、そこ関連には、勧誘かけていないみたいね。」

「そ、そんな事…。」

「私も、仕事の出先のカフェで、勧誘しているの見たのよ、何回も。それで、SNSで検索したら一発。掲示板にも載ってた。流石に顔はモザイクかけてたけど。」

確かに麻衣は、第一子を妊娠したころから、添加物を厭うようになっていた。でもそれは、妊娠したものにとっては当たり前の感情だ。わが子のために、最善を尽くしたいから。

「まあ、私は麻衣さんと結婚するわけじゃないから。」

「なら…。」

「その結婚相手の秦に問題があるって言ってるの。」

「さっさと言いなさいよ。」

「秦には、他の女がいるの。」

「そんなの、過去でしょ。過去のことをいちいち気にしてたら、人生やっていけないのよ?」

努めて冷静に話しかける。過去の火遊びにいちいち突っかかっては身が持たない。清いままでいても、倦厭されるだけだから、ある程度慣れていたほうが双方気が楽だ。それに千景も旦那も、初めての相手で結婚したわけではないのだ。

「現在進行形よ。それも複数。」

青天の霹靂だ。

「どういうことよ…。」

「言葉の通りよ。」

やけっぱちな口調で麻実は続ける。

「用途に分けて別々の女と付き合っているのよ。」

「そんな、あの子がそんなことできるわけじゃないでしょ?」

おしめを交換したこともある子なのだ。そんな不誠実な行為とは紐づかない。

「そりゃ、親に見せる顔は、いい顔に決まっているでしょ。その鬱憤を自分より格下相手にぶつけているのよ。」

「ああ、安心して。私には優しいから。」

麻実が皮肉めいた口調で言う。

「私にはって。」

「そう。私以外の女への扱い、酷いものよ。」

そう言って写真を並べた。

「ほら。」

数枚の写真には、秦とそれぞれ違う女性が写っていた。

秦が女性を殴っている写真。それだけではなく、性行為の写真もあった。女性の様子から見ても合意ではないのが明らかだ。女性の柔肌には、殴られた痣や、縛られた跡が痛々しく残っていた。

「写真だけじゃないわよ。」

更に紙を取り出す。クレジットの明細だ。男性向けのハイブランドばかりが記載されている。クレジット限度額いっぱいまで使い込んでいる。

「それ、他の女に貢がせているの。その子借金どころか、風俗で働いて秦に貢いでいるのよ。」

想定していない親友の息子の姿に頭が働かない。

「どうやって、これを知ったの?」

なんとか気力を取り戻して質問を返す。

「タレコミ。」

「誰よ。この写真だってフェイクかもしれないじゃない。優秀な秦君を妬んでこんな写真を作った可能性もあるでしょ?」

「本人たちよ。正確には、秦の同期の人が彼女らの訴えを取りまとめたのを、私に渡してくれたの。」

「なんか、前から秦の素行に違和感があったみたい。ただ、自分の勘違いかもということで、静観してたみたい。」

更に続ける。

「その人、繁華街で秦と私以外の女性がいるのを見たみたい。プロの女性でもないし、もちろん私でもない。それで、尾行してたの。」

麻実の話はようやくすると以下の次第だった。

彼らは路地裏で何かもめていた。同期の男(石本というらしい)が二人の死角にいて二人のやり取りを聞いた。どうも、女が秦の子を身ごもったから、出産費用、せめて堕胎費用を出してほしいと。その言葉を聞いた秦は、女の腹をけり、更に顔を殴った。風俗嬢ごときが、自分に何かしてほしいなど、おこがましい。底辺の女が俺みたいな上流の相手をしてもらっただけありがたいと思え。むしろ、お前みたいな相手をさせられたのだから、慰謝料を払ってほしいと言い放った。更にこのことを警察や弁護士に訴えれば、ダークウェブに女の個人情報、ハメ撮りの写真をばらまくと。日本人の女というだけで高値がつく。

今までの慰謝料代わりとしてもらっておくと。そう言って、更に女の下腹部に蹴りを入れ、秦は去った。石本は秦が去ったことを確認し、彼女を介抱した。と言っても、屋外でできることなど限られている。応急処置を施し、警察病院に連れて行った。そこで処置はしてもらったが、胎児は流れてしまった。彼女は、長尾明美といい、秦とは、マッチングアプリで知り合ったらしい。交際を始めた時期を鑑みて、麻実との交際期間と重なる。最初こそ優しかったが、段々扱いが雑になってきた。本来であれば、そこで関係を絶てばよかったのだが、秦に依存させるように仕向けていたため、別れることなどできなかった。そこからは、坂道を転げ落ちるように、転落していった。秦に会うためには、なんでもした。彼が望むもの全て差し出した。お金も時間も。流石に、妊娠が発覚して目が覚めたとのことだ。せめて、彼に責任を取ってほしいとのことで、呼び出したのだが、結果は石本が目撃した通りである。石本は、彼女に被害届を出すことを進めたが、(秦とのやり取りは携帯端末で録音済みであるので、事は明美に有利になるだろうという計算もある)、被害届を出し、法廷で争うことは、自分がしたこと、されたことを公の場で公表することである。しかも記録が残る。裁判をする気力も、世間の好機の目に晒されることも、耐えがたい。だから、泣き寝入りするしかない。と泣きながら石本の提案を断った。石本は、せめても償いとして、彼女の治療費を全額建て替えた。石本は秦の様子から、手慣れていること

に気づいた。秦の動向を調べ、明美のような女性が複数いることを突き止めた。彼女らから話を聞き、証拠となる情報をまとめ上げ、それを麻実に渡したということだった。

「その人は、秦君を貶めるための話をしたのよ。」

そうであってほしい。むしろそうでなくては困る。

「メリットないわよ。彼、秦の上司なのよ。部下の行動に注視するのは、仕事でしょ?」

「なら、直接言えば…。」

「同期だからね。穏便に済ませたかったみたい。それに、秦に他の女の影がいるのは知っていたの。正直、親同士で決められた縁談だったし。」

「…。」

「別れてもネチネチあんた達に嫌味言われるのはしんどかった。なら、結婚してしまえば、あんた達の干渉が減るのかと思ったから、結婚することにしたのよ。」

「だから、秦の心に私以外の女がいても仕方ないと思ってた。でも、これは話が別よ。」

「自分のストレスを、自分が見下している相手にぶつけるなんて。その事実を知ってしまったのだから、一緒には暮らせない。」

「貴方に向かないなら…。」

「だから、いつ格下と認定されるのか、それは秦次第ってことでしょ?」

「男の人は立ててあげないといけないでしょ?」

「それが女のたしなみ?」

「そうよ。そういう男の人を上手に操縦するのが、賢い女性なのよ?」

「…限度があるでしょ?秦の行動は、法に抵触しているわよ。」

ああ言えば、こう言う。反抗期がなかった娘が、今母親に口答えしている。何があったのだろう。従順な娘だったはずなのに。

「秦には心療内科に通うことを提案したわ。もちろん断られたけど。」

「そりゃ、そうよ。」

「友人として、できることはしたわ。あとは、秦の家族の問題よ。」

麻実が席を立とうとした。その手を掴んで、阻止する。

「ちょっと、離してよ。」

「…、駄目よ。麻実と秦くんは結婚しないといけないの。」

「は?だから言ったでしょ?生理的に無理だって。」

「駄目よ。計画が狂っちゃう。」

「何よ、計画って。」

「駄目よ。」

千景の目には狂気が宿っていた。その目の妖しい輝きに怯んだ麻実は、席に再び戻った。

「貴方は、秦と結婚して、その子供をつくらなきゃいけないの!」

「何言ってんの?」

「だって、だってそうじゃないと、私と麻衣が一つにならないじゃない。」

「きっしょ。」

「これは天命なの。あの素晴らしい遺伝子が…」

「もういい!」

麻実は会話を遮断した。

「ママのその考え、理解できない。何かあれば麻衣、麻衣って…。」

更に続ける。

「麻衣さんのこと親友って言ってるけど、本当は自分が見下せる相手だから付き合っているだけでしょ?」

「自分の方が学歴も高いし、仕事もしている。子供の学歴も同じ。」

「だから安心できる。自分より下で自尊心を満たしてくれるからね。」

「…。」

反論しようとしたが、麻実の勢いに口を挟めない。

「そのくせ、自分より抜きんでようとすることを許さない。こんな小さな人間の娘だなんて生き恥もいいところよ!」

「私はこのまま弁護士のところ言って、婚約破棄を申し立てる。破棄の慰謝料は払えるから。」

「だ、だめよ。」

やっとのことで絞り出した声は弱弱しい。生命力溢れる若者に、老人は敵わない。

「もう無理だから。それに私、新しい恋人いるから。」

「な、どう…。」

千景は言葉を紡げない。

「秦のことで相談に乗ってもらってた人よ。これ以上貴方は私の人生に関わらせたくないから言わない。私は大人なんだから、自分の結婚したい相手は、自分で決めるわ。」

「じゃあね、今までお世話になりました。パパにも会わないわ。」

麻実は万札を取り出し席を去った。

千景は、何も言えなかった。


その後、どうしたのか覚えてない。とにかく店から出て町をさまよった。

自分の生涯をかけた夢が崩れ去った。麻衣との子を結婚させるために、夫と結婚し麻実を設けたのに、その麻実が秦の結婚を拒んだ。女同士では子をなせない。なら、自分の子に託すしかないではないか。麻衣と一つになるには、己の子供を麻衣の子と結婚させるしかないのに。麻衣は千景で千景は麻衣のはずだ。千景は自己と他者の境界が薄い。それ故、コンプレックスを刺激された時、己の心を守るために排除するか、同一化するかのどちらかである。麻衣に対しては後者だった。その結果が、麻実のことを考えていない大変身勝手なことを考えるようになったのだ。

千景の不幸は、自分と他人は違うことをその優秀な頭脳をもっても理解できなかったことだ。それを指摘する人はいないこともなかったが、全て排除して生きてきた。

目標を失った今、千景はあてもなくふらふら歩いた。

ゴンっと鈍い音がした。そのあと、鈍い鈍痛が襲った。

「い、いたい…。」

前をよく見ず歩いた結果、電柱にぶつかったらしい。打ちどころが悪かったのか、目の前が暗くなり始めた。顔に濡れた感じがした。血が出ているのだろう。救急車を呼ぼうと、携帯を出したが、道に落としてしまった。

「ど、どうしよう…。」

助けを求めようにも、ここは夜の住宅街だ。通りすがる人はいない。

いや、このまま人生を終えてもいいかもしれないと、千景は思い始めた。麻衣と一緒になることは敵わず、麻実は自分から去っていった。生きる意味を失ったのだ。目的もなく生きるということは、死んでいることと同じだ。なら、このまま浄土に向かっても問題ない。

そうだ、それがいい。そのまま倒れこみ、千景は事切れた。この傲慢で考えなしの女が天国行かどうか、甚だ疑問である。冷たい風が、吹き続けた。



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愛の結晶 @yukoko1234

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