私は魔眼の勇者またの名をただの女の子という
パグだふる
第1話 自分の人生を魔王討伐までダイジェストで振り返ってみた
私達は王様に呼び出されて謁見の間にいた。
あ、そもそもお前誰だよって話だよね。急に知らん奴のモノローグ入って困惑しちゃってるよね。シチュエーション的に知らない人が友達みたいに親し気に話しかけてきたみたいなものだからね。
私は魔眼の勇者……………またの名をただの女の子である‼
いや、何言ってるんだって?
それを語るには事の発端となったある事件。プグナ王国恒例の7歳児魔物討伐の儀式について語る必要がある。
魔物討伐の儀式とはその名の通り7歳になった子供が親の監視のもと魔物を討伐するという鬼畜過ぎる儀式のことだ。
まぁ、あとで聞いた話だとあくまでも魔物の怖さを体感し、自主的に強くなるように…もっと言えば鍛錬をしっかりこなすような意識づけのための儀式(魔物事態は親が倒してくれるらしい)だったそうなのだが、あろうことか私はその魔物を倒してしまったのだ。
しかもこう、ビュンって目からビームが出る形で。
いや、何を言ってるんだって思ってるでしょう?
私もそう思った。
目からビームなんて出たら網膜焼ききれるわ⁉いくら子供でもそんな嘘に騙される訳ないでしょう!って。私の目には急にモンスターが爆ぜたように見えてたし、誰かが倒したと思ってた。
でも、出てたんすわ目からビーム。
私が全然信じないから、親が私をまた魔物の下に連れてったんだけど、……出てたんすわ、ビーム。こう、スナイパーのレーザーポインターみたいなのが、ピューって。
視線を動かすとビームも動いて一面火の海になったんすわ。
まぁ、一面砂漠だから大した被害も無かったんだけど。
人体の不思議。
因みに大人たちが言うには魔眼というものらしい。
まぁ、そんなこんなで魔眼の存在が明るみになった(私すら知らなかった衝撃の事実‼)私は先々代の勇者の孫と共に狩りに駆り出されるようになった。
当然だけど、先代勇者と違って今まで訓練のくの字もしたことが無い普通の女の子がモンスター相手に戦えるわけがない。
戦えるわけが無かったんだけど…………。
初めて、先々代の勇者の孫と魔物討伐に言った日。
「グォォォォォォぉぉぉぉぉ……」
そんな唸り声を出しながら、私に突撃してきたモンスターは息倒れた。
意味が分からないって?
うん!私も意味わかんない!
いや、ほんとに何が起きたの⁉
私に分かるのは砂に潜っていたモンスターが私に突っ込んできたと思ったら、砂漠から打ち上げられていたってことだけだ。
今度は別に目からビームが出たわけでも無い。
気付いたら打ち上げられていた。
もう唖然としすぎて表情筋一つ動かなかったよ。
しかも、そう言ったことはその後も頻繁に起きた。
ある時は空を飛ぶ怪鳥を叩き落とし、ある時は火山地帯に住むダンゴムシみたいなのを水の檻で窒息させた。
流石にここまで来れば私も「魔眼ってなに?」ってなって魔眼について調べたよ。
そしたら、魔眼の正体っていうのは精霊が赤子の頃に人間の魂に住み着いたものなんだって。
いや、精霊が魂に住み着いているって何だよ‼
住み慣れた自分の家で知らないおっさんと出会ったくらいの衝撃だよ‼
声すら聞いたことないし‼
しかも、何で魔眼なんだよッ。目全く関係ないじゃんって思ったけど、魔眼について深く調べていくと、どうも人体で最も魂に近い場所、魂の影響を受ける場所が瞳らしい。
ほらっ、濁った眼をしているとか澄んだ目をしているとか言うでしょ?あれは魂が瞳に影響を与えてるんだって。
魂って不思議。
つまり、私に危害を与えようとしていたのを大精霊が倒していたってことらしい。
ただ、大人たちはそんなこと知る由もないし、何なら私が魔眼の力を使いこなしているとすら思われている。
理由として私が魔物を倒すときに常に無表情だったからなんだって。
でも仕方ないじゃん!魔物が倒されてるのって全部私の意図したものじゃないし、目の前で自分よりもおっきくておっかない怪物たちが死んでいく事に普通の女の子である私が反応出来る訳ないでしょ!
ただ、元々人見知りだった私はそんな突っ込みを入れることも出来ず無言で「…そ」としか返すことが出来なかったことも勘違いを加速させる要因になった。
しかも、プグナの先代勇者の孫、名前はランスっていうんだけど、その子からも勘違いされて一緒に頑張ろう的な感じのことを言われてしまったのも今考えれば痛かった。
あれのせいで、私がプグナの戦士としてこれからも戦っていくって思われてしまった。
きっと、辞めると言い出す勇気がでずズルズル仕事を続けている大人もこんな気持ちなんだろう。
そんな色々があって、いつの間にか無表情且つ一歩も動くことなく敵を殺す魔眼の姫と恐れられるようになった。
そして、魔物の討伐依頼も多くなった。
当然断りたかったけど………………陰キャだから断れなかったよ。
だって、だって口が動かないんだもん。
色々言いたくて口をもごもごさせて最終的には「…はい」って言ってしまう。
しかも、もごもご言ってるのも何故か、自分の内に居る精霊と話していると思われている始末。
いや、精霊となんて話したことないよ!晩年引きこもりだよ!私に似ちゃってさ‼
いや、私は外には出てますけどね?ただ、人見知り拗らせているだけで。
そんな私の勘違いも行くところまで行ってしまったらしい。
私はある日、突然体が発光し、特別な力を使えるようになった。
力の名前は
勇者が神から与えられる神の力の一端。
いや、ちょっと待って?
何で私に力が宿ってるの?
せめてランスじゃないの?
私、勇者になっても魔王討伐なんで出来ないよ⁉
流石にこれには神様に異議申し立てをしなくてはと思ったものの、その後、王様から話を伺い今回の勇者は9人いるらしいことを知った。
不幸中の幸いだったよ。
確かに団体行動が苦手な私だけど、流石に一人で魔王討伐なんて出来るわけ無いよ。
私に出来るのなんて訓練場の掃除くらい。訓練場の掃除なら他の子が私に押し付けて先に帰ったとしてもぶつくさ言いながら一人で片づけますよ?
ただ、魔王を一人で片づけるのは陰キャには不可能だよ。
だって、魔王ってめっちゃダークって感じだし、きっと陰キャの王だよ。
しかも、今回の魔王って誰一人として自分以外の魔族を戦場に出さず、自分で生み出した使い魔だけで全人類と戦争してるって話だし、きっと人望が無いんだよ。
そんな覚悟ガンギマリのキングオブ陰キャ相手に私程度のなよなよ陰キャに何が出来るっていうんだ。
もし、魔王を倒せる人間がいるなら、それは太陽みたいな陽キャ集団だけだよ。
よし、魔王討伐は断ろう。
そう思っていたんだけど、いざ王様に「お前たちは我が国の誇り、魔王討伐期待している」って言われたら「……はい」って言っちゃったよ!
だってだって、謁見の間でこれ言われたんだよ?しかも貴族の方たちも凄い拍手喝采送ってくるんだよ⁉
断れないよ‼
でも、イヤイヤ初まった旅だったけど、正直、ちょっぴり楽しかった。
リューちゃんとかフェンちゃんとか友達も出来た。
特にフェンちゃんは狼の耳と尻尾が生えてる黒髪ロングの10歳児でお人形さんかなってくらい可愛い女の子なんだけど、人見知り拗らせすぎて、傍から見ると常に他人との間に壁を作っている意識高い系みたいになっている私に対して、良く話しかけてくれたんだ。
性格も笑顔が素敵で明るくて優しくてしっかりしている陰キャにも優しいスーパーエリート陽キャ。
完全に天使、多分陽キャによって生活圏を追われてしまった可哀そうな陰キャ(私とか)を助けるために天界から降りて来たんだ。
きっとそう。
ミューちゃんは青い髪に少しカールがかかっていて頭から小さい羽根の生えている女の子。
後、首元に少し鱗が生えているのも特徴かな?この子も凄い可愛い、というか勇者基本的に顔面偏差値皆高い、そこがちょっと居心地悪かったよ。
この子とは歌を通して知り合ったの。
というか、ミューちゃんが凄い歌が上手で、偶々それを聞いていた私が歌を褒めたら、心を開いてくれて仲良くなれた。
この子も良い子。
ただ、陰キャかと思っていたんだけど実は陽キャだった。ミューちゃんの故国であるグロリア国だと歌って踊れる人気者だったって、マカローさんが言ってた。
ミューちゃんの裏切り者―!
あ、今名前が挙がったマカローさんは男の勇者で魔法使いの人、ちょっと胡散臭いけど、錬金術に長けていてピンチの時に便利な道具を出してくれるんだ、本職は魔法使いの方じゃなくて錬金術師だって言ってた。
後は男の人は幼馴染で無口だけど意識の高いランス君に陽キャ代表みたいなレイド君、回復魔法が得意でしっかり者のリペア君、金、酒、女の駄目な大人の三大欲求に忠実なリューさん。
私、リューさんは凄い苦手だったんだよね。私はそんなに可愛くないからちょっかいかけられなかったけど、ニューちゃんとイーグルさんに対して良くちょっかいかけてたし、他の男の子が間に入って止めてくれてたから良かったけど。
ただ、一回他の男の人がいない時にニューちゃんにちょっかいかけてきたのは怖かったなぁ。
わ、私とフェンちゃんが、こう、グッと睨みつけたら、どっか行ってくれたけど。
あと、リューさんと言えば不思議なことに焼け焦げている時とか、水浸しになっている時、地面から出てくるとき、空から落ちてくることがあるんだよね。一体何してるんだろう。
後はさっき名前を出した、イーグルさんが私たちの最後の仲間。
綺麗なプラチナの髪に青い瞳の女性で凄い綺麗な人、ちょっとサバサバしている所もあるけどカッコよくて頼りになるの。
そんなデコボコパーティーでの魔王討伐の旅は一筋縄じゃいかないことも多かった。
魔王の使い魔は一体一体強力なのに、山のように出て来るし、何なら山くらいの大きさの使い魔もいた。
この使い魔は極太ビームも打って来て、結局私達では勝てないという結論になって逃げたのだ。
そんなこんなで色々な苦難を乗り越え魔王との決戦、他者の介入を許さない魔王と勇者の一騎打ち、だと思っていたんだけど何と魔王、4人の使い魔をスタンバらせていました。
いや、私たちも9人いて大概ズルいけどもまさか魔王がそんなことをするなんて…。
そして、戦いが始まった訳だけど、魔王の使い魔の内2体が私のことを狙ってきた。
そんで残った2体の使い魔と魔王が他の8人の勇者を相手取るという形になっていた。
…………いや、何で?
何で私ハブられてるの⁉
酷いよ。私も仲間に入れてよ!
何で私だけ使い魔の相手をさせられてるの!寂しい、怖い‼
私が怖くて棒たちになっていると(魔眼の力で無傷だったけど)、魔王が「流石は4種の大精霊の祝福を受けているだけあるな」とか言ってきた。
4種の大精霊って魔眼のこと⁉ここに来て初めて知った衝撃の事実。私は魂に四体の大精霊が住み着いていた。
大精霊なのにも驚いたけど、何で4体もいて一度も話したのことないの?
あ、私に似て人見知りだからか
そうして暫くは使い魔の相手をさせられていたんだけど、途中で何故か使い魔が私たちの前からいなくなってしまったのだ。
………もしかして、使い魔ともビジネスライクの関係だったのだろうか?割に合わなくてストライキされてしまったのだろうか?
もしそうなら………………魔王さん来世があったら私と友達になりましょう。
貴方の痛みを私なら共有できます。
さよなら、魔王さん。
私達は無事に魔王さんを倒した。
倒した後は皆分かれて、故郷へ帰った。
フェンちゃんとミューちゃんとは再開の約束をした。
私はランス君とプグナ王国へ帰った。
そして今に至る。
王様の謁見の間、私とランス君は貴族の人たちもいっぱいいるこの場所に再度呼び出された。
式典とお褒めの言葉だろうか?
私がそう考えていると王様が口を開く。
「…まずは魔王討伐良くやってくれた。プグナ国王として鼻が高い。お前たちはこの私が認める偉大な英雄だ。
…さて、ここからが本題なのだが、お前たちにはどちらが勇者に相応しいか決めて欲しいと考えている」
ファッ!
いや、勇者に相応しいのはどう考えてもランス君ですよ。ほら、ランス君返事しなさい。
私はその思いを込めてランス君に視線を向ける。その視線を受けてランス君もコクリと頷く。
も、もしかして、以心伝心。
魔王討伐の旅を経て好感度が上がりまくって親友の域に達してしまったの⁉
そう思ったけど、残念ながら違った。
仕方ないよ。ランス君堅物だから。
「…王様、何故そのようなことを?」
言われてみればそうだ。
式典とかをやるなら、私たちは強制的に二人とも参加の筈。
代表制ではないと思う。
なのに何で、勇者に相応しい方を選ばないといけないんだろう。
「うむ、最もな意見だな。実はな今日私は神からの啓示を受けたのだ。
その内容が真の勇者と認められたもの一名に一生涯にわたり、神の力を貸し与えるというものでな。」
何だってー。
説明しよう。
そう、つまり、ここで真の勇者と認められたものはその時間制限をとっぱらい好きに
こりゃとんでもねぇぞ。
「だが、真の勇者の選定方法が重要でな。」
あ、王様はまだ喋っていた。集中しなくては。
私は再度王様の言葉に耳を傾ける。
「一つが勇者同士の合意の下での譲渡。これはお互いが譲渡される対象こそ真の勇者に相応しいと思っていなくてはいけない。この方法で九人分の
…………そして、もう一つなのだが、勇者を殺した勇者は問答無用で
えぇぇぇぇぇ、とんでもない厄ネタじゃないですか。
え、いらない。真の勇者とかいらない。
ランス君こそ真の勇者だよ。きっとそうに違いない。
「……あなたが、なって」
私はランス君に
そんな血みどろの戦いに巻き込まれそうな厄ネタは早めに押し付けるに限る。
「うむ、どちらが真の勇者になるか決まったようだな。では早速力の譲渡方法について教える。まず手を握り、譲渡する側が『我神に誓う、汝こそ秤、善悪を区別する者。奇跡の代行者、まだ見ぬ大地に種を蒔く、星の導き手。神が握らぬ神の槍』そして、それに対し受け取る側は『我神に誓う、我こそが星、神の標、秩序を保ち、鍵開けるもの。祝福受けし、黄金の林檎』と言えば、譲渡は完了するそうだ。」
私達は王様に言われたようにお互いの手を握り、譲渡の儀式を初める。
「『我神に誓う、汝こそ秤、善悪を区別する者。奇跡の代行者、まだ見ぬ大地に種を蒔く、星の導き手。神が握らぬ神の槍』」
「『我神に誓う、我こそが星、神の標、秩序を保ち、鍵開けるもの。祝福受けし、黄金の林檎』」
すると、ランス君と繋いでいる方の手が発光し、ランス君の方に流れていく。
おぉぉぉぉぉ、これが譲渡の儀式。何か力を託してる感あっていいなぁこの演出。こう少年心をくすぐられてしまいます。いえ、私は勿論乙女ですけどね?
とにかく凄い。……ランス君後のことは任せたぜ
しかし、儀式の途中、ランス君の腕に流れて行った光は何故か私の方に戻ってきてしまった。
え、どゆこと?私は視線をランス君と自分の手の間で何度も往復させる。
「…やっぱりだめだ。俺は君よりも自分が勇者に相応しいとは思えない」
急に何を言い出しますか⁉ランス君。
というか、君が原因だったのか、一瞬もしかして私がランス君を認めていないのかって疑っちゃったじゃない。
というか、急に日和らないでよ。こんな物騒なものずっと持ってたくないよ!
だけど、その後もやっぱり上手くいかなくて、お開きになった。王様ももう少し考える時間があった方が良いよね、的なことを言いだすし。
でも、そうだよね。確かに急にこんなこと言われても困っちゃうよね。
私は自分の家に帰った後、荷物をまとめる。
うん、確かに、ゆっくり決める時間も必要だよね。気持ちの整理と覚悟を決めないといけないもんね。
っと、よし、準備も出来たし
夜逃げすっか。
私は大きな荷物を持ってこの街を後にした。
いやだって、このままこの力持ったままこの国に居たらリューさん辺りが殺しに来そうだしね。
○○○○
後書き
因みに主人公の最初の独白は緊張を紛らわせるための茶番であり、メタ発言とかではないです。
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