第101話 ゲームで倒せ

「私はそのゲームで勝ったことが無い」


 クロリスは即答した。

 なるほど。


 つーか、魔族にもあるのか。

 やったことがない、って答えにならないあたり。

 頭の片隅で思う。

 ……このゲームも起源は魔族だったりするんだろうか?


 その答えを聞いた兄さんは、私に


「タンザは?」


 こう訊いてきたので


 私はこう答える。


「私は白黒陣で負けたことは今まで1度もありませんね」




 そんな答えを返すと。

 兄さんの持ち込んだゲーム……リバーシで、兄さんと勝負することになった。


 リバーシは8×8のマス目に、このコイン型の駒を交互に並べて行って。

 同じ色で別の色の駒を挟むと、その駒が同色になる。

 それで最終的に、自分の色で盤面をより多く染めた方が勝ち。

 死ぬほど単純なゲームなんだよね。


 白黒陣は盤面が10×10で、リバーシと違って、白石、黒石が別々にあって。

 同色で挟むと、別色の石を取り換える。リバーシはひっくり返すけどね。


 こういうやり方をするんだけど。


 ……ほぼ同じ感覚で遊べるなぁ。


 リバーシの方が、より手軽って感じ。


「まぁ、とりあえずやってみよう」


「よろしくお願いします」


 私たちは地べたに座って向かい合い。

 双方、頭を下げた。


 そして開始する。

 私が白。兄さんが黒。


 で、1時間くらい経っただろうか。



 ……盤面が真っ白になっていた。



 また私、何かやっちゃいました?



 こういうときにこういう風に言うべきと、勇者関係の古文書に書いてあったから私は心で呟いた。

 決して口に出すなとも書いてあったけど。


「……強いな」


 私に完敗した兄さんに


「兄さんは目先の手で最良手を取ることばかり考えているんですよ」


 私は人差し指を立ててそうアドバイス。


 すると


「リバーシは、ミスを少なくして、優先的に端っこを押さえていくゲームだろう?」


 うん。それは白黒陣でもそうなんだけど

 そこからまだ、先があるんだな。


「全体像を把握しないと駄目です。盤面中央部分を支配する感覚」


 その感覚が無いと、終盤に一気にやられるんだな。


「兄さんの打ち方は、リバーシを理解していない人間にしか勝てない打ち方です」


 そこのところを指摘すると


「なるほど……そこはすごく心当たりがある」


 そう言った兄さんは、なんだか少し嬉しそうだった。


 で、そのとき。


 私の脳裏に、チュー助が見聞きした情報が流れ込んできて。


 純白の壁に、真っ赤な絨毯を敷いた部屋で。

 キャンバスに向かって絵を描いている魔族女性……


 ユリ義姉さんの姿を発見した。

 ちょうどいいや。


 絵に夢中みたいだから、背後に門を出せば、気づかれないかもしれない。


 最後に、確認。


「ええと、お義姉さんを見つけたんですが……」


 リバーシで勝負を挑んで、お義姉さんを負かせてみる。

 この作戦で良いんですね?


 私のそんな最終確認を、2人は頷いて了承してくれた。

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