第68話 竜の短剣?

 使いたいときにすぐに手元に呼び出せる魔導器。

 そんなものを何故ずっと持ってるんだろうか?


 そんなの……


 ずっと所持していることに意味があるから。


 それ以外、無いよね?

 で……


 その「所持していること自体に意味がある」これが

 防御能力の上昇効果であること。


 この可能性、非常に高くない?


 ……いや、多分そうだと思う。

 超能力由来なら、持つ必要無いもの。

 短剣を。


 魔導器で短剣は……


 それは、竜の短剣だ。


 竜の短剣とはどういう魔導器なのか?

 それは……竜の能力を手に入れる能力なのでは。


 だってさ……


 光の斧が転移能力。

 キリサキさん曰く、おそらく自分を光に変えて任意の場所で実体化する能力。


 そして雷の槍が落雷を任意で起こせるチカラ。


 だったら、竜の短剣は竜そのものの能力を得るか、竜を呼び出し操る能力。

 このあたりが妥当じゃないかな?


 竜……ヘルブレイズ魔国に生息しているという伝説の生き物の名前だ。


 皮の翼と鋼より硬い鱗を持った巨大なトカゲであり、その頭には角。

 その牙は鋼鉄を噛み切り、口から灼熱の火炎を吐く。

 そしてその吠え声を聞くと恐怖が沸き上がって行動不能になる。

 高い知性を持ち、選ばれた魔族は彼らを騎獣にするんだとか。


 そんなとんでもない化け物のチカラを……手に入れられる短剣なのかな? アレは?


 ……無論、あの短剣が竜の短剣であることが前提の話だけど。

 でも、竜の短剣でないのであれば、ランニング中も装備し続けているのは変じゃない?


 ただのなんでもない短剣を護身用で持つくらいなら、魔軍騎士を数名護衛につけた方が良いでしょ。

 できる立場なんだし。


 だから


「ねぇクロリス」


「何だ?」


 私はクロリスに、自分が考えたことを聞いてもらった。

 彼女も同じように納得してくれたなら、これが真実である可能性は高いと思うし。


 すると……


「……竜の短剣の能力は、竜そのものになるものである可能性が高いと思うな。その2択なら」


 口元に手を当て、少し真剣に考えてくれて。

 そう答えを返してくれた。


「何故なら、召喚は時間が掛かるハズ。それなら召喚して出しっぱなしにしておくし……」


 そこでクロリスは不敵に微笑んで


「もし召喚であったとしても、それはそれで。……その場合は、竜召喚は無限には行えない。それがハッキリするな」


 なるほど。

 そうして、会話に結論が出たときだ。


「……しばらくだな」


 肩にフクロウを乗せ、私の魔術師の杖を携えた黒衣の男性……

 キリサキさんが私たちの潜伏場所にやってきたんだ。


「ケイジ様。出迎えに出ず申し訳ありませんでした」


 クロリスはキリサキさんにそう言って頭を下げた。

 彼女は使い魔越しでキリサキさんの接近を知っていただろうから、私と話をしていたせいで出遅れたのか。

 ちょっと悪いことしちゃったな。


 だけど


「キリサキさん! 聞いてください!」


 挨拶もそこそこ。

 私はキリサキさんが帰ってきたときに備えて調べてきたことを話し始めた。


 急がなきゃ、という気持ちがあったから。

 時間が無いもの。

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