第39話 使い魔

 私は、たった1人で街に出ていく。

 らしい服が無いから、クロリスに借りた。


 身長はコピーできたけど、胸囲まわりがコピれなかった。

 胸がーぶかぶかー


 あ、私は今、真言魔法の「変身」を使用して、魔族に化けて出てるんですけど。


 私が今目指しているのは「総督府」

 そこにいるはずのアカイの一日を観察し、アカイの超能力の秘密を探る。


 木造平屋建ての建物群の中を歩きながら、通行人に道を聞きながら歩いているんだけど。


 ……住人は特に不幸そうには見えない。


 総督府の方向が分からなくなった、って聞くと


「魔族の方、方向としてはあっちですね」


「巡回ですか? ご苦労様です」


 親切だ。

 正直、魔族が憎まれているようには思えない。


 そして


『アスラ総督府』


 大きな建物。


 敷地としてはかなり広大。

 平屋建てだけど。


 このままここに入りたい気持ちだ。


 だけど


 私はここで使い魔を放した。


 ……私の使い魔はネズミ。

 黒いネズミだ。


 使い魔。

 真言魔法中級位階に到達した魔術師が、儀式により契約することができる、術者と感覚を共有できる生き物。


 その生き物はさ、色々あるんだけど。

 私はネズミを選択した。


 クロリスはフクロウ。

 あれはあれで高い位置で見回すときには役に立つんだけど。


 私の思想はそうじゃなくて


 潜入を考えて契約したんだよ。

 ネズミなら目立たないし。


 契約の儀式って、魔法陣を書いてやるんだけどね。

 何が出てくるのかは分からないんだ。


 なので術者は、欲しい使い魔が来るまで何度も儀式をやり直すんだね。


 私のネズミも3巡目くらいでようやく引いたんだよね。

 この辺、キリサキさんに説明したら「ガチャだな」と言われた。


 ガチャとは一体……!


 欲を言えば、この子の色が目立たない色ならもっと良かったんだけど。

 黒は見つかると異様に映るからなぁ。


 ちなみに一応名前はつけている。

 チュー助だ。


 チュー助を総督府の中に放して、総督府正門を去る。


 私とチュー助は魔術的に感覚が繋がっているので、チュー助が見聞きしたものが私の感覚として流れ込んでくる。

 アカイがどこにいるか分からないので、総当たり。


 どこにいるのやら。




「総督府にネズミを放って来ました」


「ご苦労だった。私の使い魔では潜入には使えんからな」


 橋の下に戻ってきて報告すると、クロリスに労われる。

 繁みで変身を解き、着替えて服をクロリスに返す。


 で、いつもの簡易ローブ姿になるんだけど。

 そこでとんでもないことに気づいた。


「食べ物はどうしましょう?」


 ……そう。


 私たち、お尋ね者の勇者様御一行だから。

 店屋に入って、ご飯を食べるわけにはいかないんだよね……

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