鈴山 想葉花 

第1話 出会い

あいつに初めて会った日は、夏休みの前日。

嫌というほどに暑くて、

空は綺麗な青だった。


今日、

俺は飛び降りる。

決心は揺らがなかった。

屋上への階段を一歩ずつ登る。

1段上がる度に心が軽くなるのを感じる。

ああ、これでやっと楽になれる。

逃げ出す俺は身勝手だろうか?

錆び付いた屋上の扉を開ける。

ギィ

鈍い音を立てながら、扉は開いた。

ふと前を見ると、1人の男子生徒が目に入った。

一歩ずつ、一歩ずつ。

彼の足は前に進む。

「飛び降りる」

なぜだか、直感的にそう思った。

止めないと。

足が勝手に動き出し、

腕が彼のことを抱き止める。

ああ、

なんでこんな事をしているんだろう。

俺も今日、飛び降りようと決めていたのに

頭ではそんな事を考えていても、体は勝手に動き続けた。

「死ぬな、生きてくれ。」

あいつに初めてかけた言葉は、身勝手すぎる言葉だった。

あいつも俺も、一緒だったのに。

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