君の結婚式をぶっ壊したい。

はやし。

君と漫画家になりたかった小学校時代。

 私の小学校は学年で十八人、そのなかの女子が九人、私はそのうちの七人と気があわなかった。

 そして残った一人の女子というのが、私のように、いや私以上にクラス浮いていたNちゃん。彼女は天然というかどこかふわふわしていて、「私ってかわいいでしょ」と素で言って周囲から引かれていたり、自作の漫画をみんなに見せていて「将来は漫画家になりたい」と言ったり、なんだか不思議な子だった。


 三年生までの私は、嫌われながらもほかの子と遊んでいたのだけれど、ある日体調が悪くて外で遊べなかったから、いつも室内で遊んでいるNちゃんと遊ぶことにした。たしか特別教室にあった碁盤で、オセロをしたと思う。ほかの子と違って、Nちゃんと話すときは「こう言えば嫌われないかな」なんて考える必要がなくて、楽だったのを覚えている。

 それからよく、Nちゃんの大好きなお絵描きをした。私も、お絵描きと空想が大好きな子どもだったから、夢中になった。一緒に交換日記のように、毎日一ページずつ漫画を描いたり、同じテーマで漫画を描いて見せ合ったり、楽しんでいた。小学四年生の作文の授業では、私も「漫画家になりたい」と書いて発表したし、卒業アルバムの将来の夢でも「漫画家」と書いた。このことを思い出すと、胃の奥あたりがちょっとキリッと痛む。

 私たちは漫画を描くとともに、おすすめの漫画やアニメも教えあった。Nちゃんはお父さんがオタクらしくて、私の知らないアニメをたくさん知っていた。そんななか、私たちはある少年漫画にはまった。繰り返しアニメを見たからセリフも一から覚えていて、頭から最後まで通してセリフを確認しあうかのように、声真似を交えながらアニメのシーンを再演する遊びをよくしていた。さらに主人公のセリフを真似して、自分のことを「俺」と呼び、「心は少年だから」などとよく言っていた。このことを思い出すと、みぞおちのあたりにヒュッと風を感じる。


 ちなみに浮いていたNちゃんと仲良くすることを、周囲の子はよく思わなかったらしく、絵をチラ見されて「変なの」と言われたり、「外に出て遊ばないからデブなんだよ」といじわるを言われたりすることもあったが、平気だった。私にはNちゃんがいたから、それで充分だったから。


 

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