少女高専-ESP ~少女らが視た「未知」の魑魅(チミ)~

イズラ

第1章【少女らが視た「未知」の鏡】

プロローグ

【解遊都市】

 ここは、解遊都市かいゆうとし。かつて『東京』という名で呼ばれていた地域の東部分。西部分はすでに都市としての機能を失っており、荒廃地域となっている。

 ――極度の人口減少。それが、今の国家が抱える問題だった。その上、都市への人口集中も加速している。そのため、解遊都市以外の土地のほとんどが過疎地域となっていた。


* * *


 私は、エリス・アンドール。

 この解遊都市に暮らす、ごくごく普通の女子高生。


 昨日、私の通う高校が廃校になった。

 ここ数年、この国はずっと不景気で、都立の高校もどんどん潰れていってたけど、ついにここ・・もか。


 雨ふる住宅街をうつむきながら歩いていた私。

 ふと、顔を上げるが、目に映るのは見慣れた家々いえいえに、電信柱でんしんばしら、そして遠くには学校の校舎。


「私の青春……、返して……」



 少し涙ぐんだ声で、独り言をつぶやくが、そんな哀しみの声を嘲笑あざわらうごとく、雨はザーザーと地を打っていた。

 さぁ、もう帰ろう。

 どんなに投げかけても、所詮しょせん、願いは願い。現実は現実なのだ。


 そう思い、体の向きを変え、帰路きろを歩み出す。

 ――だが、その時だった。


「後ろ……」



 かすれていて、雨音に打ち消されるくらい、小さな声だった。

 反射的に後ろを振り向くと、そこには何も・・なかった。


 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 そう、何も・・なかった。




 ――直後、視界がフッと真っ暗になる。

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