異世界対悪人録(異世界誘拐事件録 続編)

明智吾郎

ChapterⅠ 抗争

第1話 はじまり

 2044年 7月20日 9時 東京都西成 最上組事務所


 日本最大の暴力団組織「最上組」、その新幹部、牧本は賑わう西成の街中に建つ

 大きな事務所でその引っ越し作業に追われていた


 牧本「こんなもんか...」

 煙草臭い木造の香りを堪能しながら、数名の部下と共に荷物や家具を運んだ


 半年前、かつて世界を恐怖に陥れた、異世界軍勢の侵攻


 それによって命を奪われた、仲間たち


 牧本は許せない思いでいっぱいだった。悔しくてたまらない

 人間の恐ろしさを見せてやりたい


 牧本はデスクで一息つき、埃被った段ボール箱を開いた


 その中には、皆で撮った記念写真の数々


 牧本「どうか見ていてください」


 牧本は涙を流し、写真をおでこに当てた


 半年前、23時 大阪府 最上組大阪支社


 夜の大阪の街にドカン!ドカン!と爆発音が鳴り響く

 一般人「きゃああああ!!!」


 一般人が逃げ惑う中、SATはそのテロリスト集団と攻防を繰り広げていた


 釜野「クソ!らちが明かない!」


 刑事だった釜野は黒のローブ姿のテロリストへリボルバーの銃弾を放った


 ローブ姿のテロリストは両手をビルへ向け、エネルギー弾のような物体を放つ


 ドカーン!

 その弾はビルへとぶつかると爆発を起こす


 テロリストたちは偶然、最上組の大阪支部へと爆発魔法を放った


 唐松「こっちです!さぁはやく!」

 大阪支部の唐松は出張で来ていた最上を車へと誘導していた


 最上「早く走れよ!」

 その瞬間、ドカーン!爆発弾が事務所へ衝突し、一面が炎で包まれた


 部下「ぎゃあああああああ!!!!!!」

 唐松「あっついい!!」

 唐松達は飛び火した火炎で体を焼かれた


 最上「あぁ!クソが!!!」

 最上は走り去り、その場を逃れた


 そして、突然ローブ姿のテロリストたちは、立ち止まり

 どこかへ消え去ってしまった


 大勢の死者や負傷者を出したこの抗争は、後に「大阪未知事件」と呼ばれるようになった


 田崎「入るぞ」


 一同「田崎さん!お疲れ様です!」

 牧本と部下たちはぺこりと頭を下げた


 田崎は部屋を見渡し「だいぶ片付いてきたな、朝礼を開始する、最上さんのとこ行くぞ」


 最上啓介、最上組の組長で、殿様の格好をしており、拉致した一般人を残忍に拷問するのが趣味である。その姿はまるで悪魔であった


 牧本たちが会議室に集ったとき、既に他支部の幹部たちも集合して、椅子に腰かけていた


 山崎「おせぇぞ、田崎」


 田崎「すみませんね、新人教育してたもんですから」


 部下「組長が入られます!」

 組員がそういうと、全員が椅子から立ち上がり、歩いてきた組長へ頭を下げた


 最上はイライラした様子で、長い机の先の玉座に腰かけた


 最上「...今回のは元からワシらの領地だったろうが、奪われたもんぶん取り返しただけでな~んも手に入れてねぇだろうが?あ?」


 先日、最上組の支社が別のヤクザに乗っ取られた事件が発生し、最上たちはそのヤクザとの戦争を終えた後だった


 最上「おめえら、ほんとに日本取る気あんのか?あぁ?」

 部下に拳銃を向け、バン!!!!と部下の頭を撃ち抜いた


 驚愕の光景に言葉が出ない組員たち


 山崎「我々の力不足です。申し訳ない」


 最上「けどなぁ、おめえら喜べ!!」

 急に笑顔になった殿様は何もない空間に両手を向けた


 組員たちは驚愕した


 突如、最上の目の前に円形のゲートが出現したのだ


 最上「昨日急に使えるようになってなぁ?その先の景色を覗いてみたんだわ」


 最上「そしたら、ぶっとい尖った耳の連中の街が広がっていたんだ」


 最上「わしゃあびっくりして腰抜かしたわ、なんじゃこりゃあってなぁ、でもこりゃあ、あのローブ共の住処にまちがいねぇだろ」


 牧本「行く気ですか?」

 牧本はわくわくしながら聞いてみた


 最上「あったりめぇだろ!カチコミに行って皆殺しじゃぁ!」


 最上組は異世界侵略に向け、準備を始めた


 同刻 東京 新宿 日本警察マル暴捜査本部


 釜野「オラぁ!」

 訓練道場にて、マル暴本部長の釜野は新人捜査官の新田を気合の入った背負い投げる


 新田「うお!」

 バタン!と叩きつけられた新田は痛がりながら座り込む


 新田「あいててて...少しは手加減してくださいよぉ」

 弱気になる新田


 釜野「甘えるな、新田。俺たちが相手にしているのは日本最大のヤクザだ、いつ奴らとの戦争になっても良いように訓練は怠るな」

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