第4話
五つの指輪をはめた拓哉は、左手をグーパーしたりして感触を確かめる。別段、何か変わった様子は無いようだった。本当に強くなったのだろうか?拓哉は指輪の効力を疑う。
とりあえず、ハンター協会からの招集がかかっているため踵を返すとダンジョンから出るべく、元来た道を戻っていった。
ハンター協会とは。日本に居るハンターたちとダンジョンを管理する存在だ。
ハンターがハンターという役職を得るには、ハンター協会へと向かい、ハンター証書を作ってもらう必要がある。その証書を持っていない人間は例え常人が持たざる力を持っていようとも、ダンジョンの中に入ることは許されない。いるのだ、たまに。力に覚醒していないのにダンジョンに入ろうとする愚か者が。そのような者たちがダンジョン内で死んでいました、なんて事故を防ぐためにもハンター協会は存在している。
◇◆◇◆
一時間以上かけてダンジョンから出て来た拓哉は、急いでチューリップに肥料を与えると、ハンター協会指定のE級ダンジョンへと向かった。
ハンターにも強さがあるように、ダンジョンにも危険度というものが存在する。ダンジョンの危険度は、ハンターの強さを測る方法と同じでダンジョン内に充満している魔力濃度によって決まる。魔力濃度が濃ければ濃いほど、出現する魔物も強くなり、危険度も上がる。表記方法としては上から順に、
SS級
S級
A級
B級
C級
D級
E級
となっており、ハンターランクの表記と何も変わらない。
今回、拓哉が呼ばれたダンジョンはD級ダンジョンだ。D級ダンジョンはハンターになりたての初心者がよく潜るダンジョンだ。出現する魔物は弱い。しかし、E級ダンジョンの魔物ほど弱いわけではないため、実戦向きのダンジョンなのだ。
そんなD級ダンジョンだが拓哉にとっては違う。拓哉にとってD級ダンジョンいや、E級ダンジョンでさえ命がけの危険なダンジョンだ。なにしろ拓哉は魔力総量1なのだ。その強さはハンターとして覚醒していない常人と何ら変わりのない強さだ。そんな男が魔物とまともに戦えるはずもなく、毎日毎日怪我をして帰って来る。
幸い、今回のレイド(ダンジョンに潜り作業をすること)はC
拓哉たちハンターは一人の男を囲むような形で、ダンジョンの前に集まる。
「それでは、今回のパーティーのリーダーを務めさせていただきます。木島と申します。それではさっそく潜っていきましょう」
「ひさしぶり、鈴木さん。今回の回復者は私、坂本凛です。よろしく」
木島が挨拶をしている途中、円の後方にいた拓哉の隣の女性が拓哉に話しかけた。その女性は三か月ほど前のレイドで一緒になったC級回復者、坂本凛だった。
「ああ。お久しぶりです、坂本さん。今回もよろしくお願いします」
「あんまり怪我しないでね?私の仕事が増えちゃうから」
坂本はいたずらっぽく笑いながらそう言う。それに対し拓哉は苦笑いを返す。それもそのはず、前回一緒にレイドを行った際にも同じことを言われたのだが、レイドが終わるころには重症も重症の足と腕の骨折という怪我をしてしまったのだ。幸い、坂本がすぐに治療を施してくれたため傷は残らなかったが、坂本には悪いことをしたと、拓哉は思う。
と、そんな会話をしているうちにみんなが動き始めた。それに合わせて拓哉と坂本もダンジョンの中へと入っていった。
◇◆◇◆
「せい!」
「はあっ!」
数々の力強い気合の声と共に、金属と金属がぶつかり合うような音や、モンスターの断末魔がダンジョン内に響き渡る。
「皆すごいね。
「はは…ほんとですよ」
気合の声と共に、次々と魔物たちを一掃していくハンターたちを見ながら、坂本が感嘆の声をあげる。同じく感嘆の声を漏らしながら、ニヤニヤと周りのハンター達に馬鹿にされながら荷物持ちを任された拓哉は坂本に同意する。
みんながみんなとは言わずとも、ほとんどのハンターたちが今日で初対面のはずの攻略隊の動きは、まるで今までずっと共に戦闘を続けてきたようなパーティーのように洗練されていた。D級ダンジョンに集められたハンターたちとは言え、個々の能力がそれなりに高いのだ。
「ふう。これで全部ですかね」
リーダーの木島が
「それでは奥に進みましょう」
大体の魔石を取り終えたことを確認した木島は、そう宣言する。ここまで順調にレイドを行っているため、周りからの反対意見は出てくることはなく、ハンターたちはダンジョンの奥へと進んで行った。
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