第71話 幼馴染ライクな精霊と叡智の独断に怒りが沸騰したのは悪くないはずだよな。




「僕はそこまで酷くはないって。も~う失礼な子だなあ……」


 ナチュラルに心を読んでくるのはキツイ。

 どうして、ついこの前まで一般人だった人に心の中まで制御しろというのだろう……

 流石にそれは滅茶苦茶が過ぎる。


「そう言われても困るんですけど……」


「まあまあ、それは許しちゃうから。でー僕、あのクレープ食べたーい!」


 あのクレープって? クレープなんてどこにもないだろ。

 少なくとも俺には見えないぞ。


「ほら! あっち側に30キロ先のあのお店だよ! 精霊眼持ってるなら見えるよね?」


 そんな遠くの話題を出すなよ。

 しかも見てる前提っていう……なんだろうとにかくしんどいって感じがする。

 疲れる。本当に疲れる。主に精神的に。

 いつも通りの話だろって言われたらまあそれまでなんだけど……

 これがいつも通りって波乱万丈過ぎません?

 本来ならば俺って序盤の街の村人Aみたいな性格だし。

 こんなツッコミ体質じゃないし……


[スキル『ツッコミ』がスキル『聖ツッコミ』に進化しました。]


 聖ツッコミとは?

 剣聖術みたいなものなんだろうけどさぁ……

 無理矢理が過ぎませんかね?

 やっぱり通知の奴、俺のこといじりたいだけだろ。

 見え見えなんだよ思惑がなあ!

 ……はあー疲れる。本当に疲れる。マジで疲れる。


「『精霊眼』発動」


 えっと……?

 何かうん、視点がバグってる。

 これは……三人称視点かな?

 ゲームやってるみたいで気持ち悪…… 


[スキル『コマンド操作レベル1』、『確率調整レベル1』、『遊戯レベル1』、『HPゲージ表示レベル1』、『MPゲージ表示レベル1』、『コマンド表示レベル1』、『スタンゲージ表示レベル1』、『奥義ゲージ表示レベル1』、『予備動作察知レベル1』、『攻撃範囲表示レベル1』を獲得しました。]


[スキル『コマンド操作レベル3』、『確率調整レベル3』、『遊戯レベル3』、『HPゲージ表示レベル2』、『MPゲージ表示レベル2』、『コマンド表示レベル2』、『スタンゲージ表示レベル2』、『奥義ゲージ表示レベル2』、『予備動作察知レベル2』、『攻撃範囲表示レベル2』に統合しました。]


 うっざ。一々ゲームって単語に反応……


[スキル『コマンド操作レベル1』、『確率調整レベル1』、『遊戯レベル1』、『HPゲージ表示レベル1』、『MPゲージ表示レベル1』、『コマンド表示レベル1』、『スタンゲージ表示レベル1』、『奥義ゲージ表示レベル1』、『クールタイム表示』、『予備動作察知レベル1』、『攻撃範囲表示レベル1』を獲得しました。]


 もう良い。頭おかしくなりそう。

 ……それにしてもヤバい視点酔いしそう。……冷静に考えて視点酔いってなんだよ。あーもう狂い過ぎ。


「そうそう! そのまま視点を動かしてみて!」


 え? どうやって?


「そうだねー君の世界っぽく言うならゲームキャラを動かす感じでやれば視点を動かせるよ!」


 動かせる? それは一体どういう……

 困惑してる中で言われた通りにやってみたらできた。

 こう、コントローラーとかキーボードの十字キーを動かす感じでやったらできた。


[スキル『コマンド操作レベル1』、『確率調整レベル1』、『遊戯レベル1』、『HPゲージ表示レベル1』、『MPゲージ表示レベル1』、『コマンド表示レベル1』、『スタンゲージ表示レベル1』、『奥義ゲージ表示レベル1』、『クールタイム表示』、『予備動作察知レベル1』、『攻撃範囲表示レベル1』を獲得しました。]


「……すぅ……はぁぁぁぁ〜〜〜〜」


 コホン……でもな……やっぱり視点酔いが……

 頭では気持ち悪いのに身体がそう感じてないのも相まってより変な感じもするし。


「あ、それ聞いたことある! 何だっけ……? あ! 思い込み効果だよ、それ!」


 今その解説いらね〜〜


「地味に嫌だねーその感覚。僕にも伝わってきたよぉ……よーし治してしんぜよう! それっ!」


 うわっ、治った。

 何だよ俺の苦労が水の泡じゃないか。

 こんなんで辛さがめっきり減るとかヤバ過ぎない?

 この人らズル過ぎません?


「僕は人じゃないよー」


 知ってるわ!

 ただ単にそういった表現がないだけだわ!

 本当に何なの? 人としての常識がないだけ?


! 僕は人じゃないってば!」


 反応するところ本当にそこで大丈夫か?

 ……ヤバいこいつ狂ってやがる。

 沙耶よりはマシとはいえ同類だ。


「からかって悪かったって……謝るから……ね?」


「え? 無理だけど」


 正直沙耶に似てるってだけで無理である。

 あと話が変わるが地味にその魔力の放出がウザい。

 魔力感知でこのイジり魔しか感知しないもん。


「そりゃあ仕方ないよぉー僕だっていきなり強さが一万の半分倍になって力の制御がままならないんだから」


 あっそう……っていうかそれ五千倍で良くね?

 何で一万の半分倍とかいう回りくどい言い方をした?


「うーん……キリが良いから?」


 何で疑問系なんだよ。

 やっぱりなんとなくでいっただろ。


「バレたか。てへへ」


 キショすぎ。

 疲れてる相手にそれは怒らせてるとしか思えない。

 

「ゴメンってば! ここからはちゃんとやります!」


 ……信じられない。

 変な世の中荷なってから今までの経験でそれが当てはまったことがウンディーネさんという例外を除いて無かった訳だし。

 俺と同じ状況に他の人がいても同じような考えに至るはずだ。

 まあ、ここまで耐えられない奴もいるから一概にはどうとも言えないけど……それはともかくだ。

 絶対に信用しないほうが良い。

 最悪を考えてた方が後が楽だ。

 コイツは沙耶並みの暴君……そう沙耶並みの……


「……僕だって……ショックくらい受けるんだよ……」


 勝手に思考を読むのが悪い。

 それで文句を言われても俺の知った話ではない。


「あのね、そのー僕もう帰りたくなってきた……」


 これはどう答えるのが良いんだろうか?

 ウンディーネさんが呼び出せない以上、俺に呼べるのは後はクソ鳥だけだからなぁ……

 他は良くわからないっていうリスキーなやつだし。

 妥協した方がマシか。

 

「妥協って……僕にだって断るっていう選択肢はあるんだけど……」


 ウンディーネさんが呼び出せるようになるまで待つのが一番無難か。問題はそれまでどう過ごすかだな。


「む、無視ぃ……もういらないみたいだから……僕もう帰るね……」


[ユニークスキル『命令オーダー』を発動してユニークスキル『破壊の理』のランクによる権限の制限を一時的に解除します。……成功です。]


――ヒュー……ホワン……


[ユニークスキル『破壊の理(強制マスタースキル化)』を発動し、風精霊シルフィードの帰還の妨害を開始します。……成功です。]


 え? おい、何やってんだ叡智、てめぇ!

 勝手な行動は慎めって言っただろ!



[ユニークスキル『憤怒』が発動しました。]


[言われてはいません。今回の件、対外関係に関することでマスターからの注意をされたことはありませんが?]


 おいっ、お前俺を怒らせてそんなに楽しいか!

 ふざけんなよ! マジでふざけんなよ!


「あれ? 帰れない……えっと……何で? ねぇ何で!」


 明らかにお前のせいだぞ叡智!

 敵対でもされたらどうするんだよ。

 勝ち目なんかないぞ……死に目ならあるけど。


「……そゆこと。つまりは君のせいか……僕を怒らせて何がしたいの?」


 これ戦闘案件だろ……

 叡智……殺す。絶対に殺す。


 許せない。それがやらかしたやつが取る態度か?

 沙耶だって注意されれば流石に誤りはするぞ?

 つまりは沙耶以下ってわけだ。救えねぇな!


「……あれ? また無視……すぅ……!!」


「あ、そう。今だから」


「あ、うん、はい……」


 なぁ叡智、そんな舐め腐った態度取るようならな、お前を制御できるようになった暁には捨ててやるぞ!

 おい、少しは反応したらどうなんだよ! なあ!

 なあ! なあ……あれ意識が……クソ叡智め……


「……僕、どうして呼ばれたんだろう……ん? あーそういうこと。僕はあまりこういう魔法は得意じゃないんだけどなぁ……『超級魔法:ヘプタ罪源シンズ凍結サスペンション』っと」


[スキル『憤怒』が凍結されました。再使用までのスパンは2ヶ月ですよ。]


「どんなもんだい! これで少しは見直してくれたかな? ってあれ……気絶してる? なんだあ僕が関わる意味無かったじゃん。ちぇ……起きろ!」


「うわっ! え? あれ?」


「おはようだね! 僕は準備バッチリだよ!」


 えっと……なんの? ヤバい全然覚えがない。


「街に行くの! オッケー? 情報収集するの忘れた?」


 あれ、そうだっけ……記憶が曖昧で良くわからない。 

 良くわからないけどそうなのかな……?

 俺が良いようにやりてるような気もしなくもないけど……

 あー分かんね。考えるのはもうやめだ。

 取り合えず今はなんか何も考えたくないし、言葉通りに従おう。本当に疲れる……何で疲れてるんだろ、俺。

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