第36話 5歳となり★☆

 メイリーにとって待ちに待った日がとうとうやって来た。

 5歳の誕生日を明日に控えた今日、メイリーは『豊穣の儀』を行っていた。何故かステンド家で盛大に。

 『豊穣の儀』自体に懐疑的なメイリーは、それすらも別に遠慮したかったが、本来ならばライルやリリーと同様に自宅で行う筈であった。

 しかし魔獣増加による経営悪化に伴い2人ほど大掛かりに取り仕切るのが難しく、両親としても何とかしようと動いていたが、ライルが彼を指示する派閥の者たちを連れて、


「そんな余分な金は出せないだろう。メイリーにはお得意の魔法があるんだから」


 と言い放ち、メイリーもそれに同調したことで、メイリーの『豊穣の儀』は、かなり質素になる予定であった。

 

 メイリーとしてはスキル授与がと言うよりも、5歳となれば晴れて冒険者として自由に冒険が出来ることに喜んでおり、『豊穣の儀』が質素だろうが興味は無かった。

 しかしそれを聞きつけたティーチやマリアがそれならば『豊穣の儀』の資金やら用意はこちらでと言い出した。

 色々とややこしくなるに違いないと確信したメイリーは、全力で拒否したのだが、マリアが優しい声色で


「メイリーちゃん。遠慮しなくていいのよ。」


 と言って来た。

 笑顔の圧力にはメイリーも敵わず、気が付けば綺羅びやかに飾り付けられ『豊穣の儀』に臨んでいた。『豊穣の儀』の演目には神父からの有難いお祈りや、メイリー自身が豊穣の舞を踊ったりと、堅苦しく面倒な物が満載であった。

 しかも準備を貴族家が取り仕切ってるので、一つ一つが無駄に長ったらしい。全てが終了する頃にはへとへとになってしまう。


(これをテイルも受けたのか。私は前世の知識があってこれなのに、凄いな)

 

 テイルの好感度が地味に上昇した瞬間であった。  

 『豊穣の儀』を済ませたメイリーは家に帰り、射殺すような瞳で見てくるライルを無視しつつ、自身に運気上昇魔法をかけて、そのまま泥のように就寝するのであった。


  次の日、目が覚めたメイリーは、自身に授けられたスキルが何であるか自覚できた。

 授けられたスキルは3つ、『地図化』と『鑑定眼』そして『自動回復』であった。   


『地図化』は行った事のある場所を自動でマッピングしてくれるスキルであり、迷宮などに潜る事も多い冒険者にとって有用なスキルであった。

 『鑑定眼』は人や物の良し悪しを判定する魔眼であり、色々な職業でこれを持つ者が優遇される良スキルであった。特に大都市で活躍する商人たちにはこの魔眼持ちも多いと聞く。

 そして最後の『自動回復』なのだが、効果自体はその名の通りなのだろうが、その効果がどの程度なのかがわからなかった。


(そうだ。折角だし『鑑定眼』でっと、おお。)


 『鑑定眼』を使用してスキル『自動回復』を調べてみる。すると、


「全ての傷、怪我、病気などを自動的に回復させる。重症度に応じて瞬間的から数日間程度、回復する時間に変化がある。か。これは中々」


 メイリーは『鑑定眼』で鑑定した結果に驚く。

 この説明の通りだったとすると、メイリーは生きてさえいれば数日間で全ての傷が完治すると言うことなのだ。

 冒険者として危険な旅をする予定のメイリーにとってこれ以上のスキルはないと思える程、凄まじいスキルであった。


(これは、家族もティーチ様たちも驚くだろうな)


 メイリーの予想通り、家族やステンド家の面々は、まず3つもスキルを授かった事に驚き、その3つとも有用な事に驚き、最終的に『自動回復』の凄まじさには、驚きすぎて最早、呆れてしまうのであった。


――――――――――――――――――


 現実世界に戻ってきた芽依は、メイリーが授かったスキルについて考えていた。


「ある程度、予想通りだったな。マップと道具や人の解説機能、そして宿屋機能か? まあでも鑑定と自動回復は戦闘で使えるし、地図化も遠距離への転移の補助として便利だし、概ね良いか」


 スキル授与に関しては、ある程度決まったスキルが授けられるとは思っていた。RPGでメニューを開くと使える機能をスキル化するとまでは、思っていなかったが。

 リアルな転生生活を感じさせるため、露骨なサポート機能を導入できなかった故の措置だろう。

 

「まあ、宿に一晩泊まると全回復とかあったら、ゲームかと疑うからな、流石に」


 とは言え、今回授けられたスキルには概ね満足している芽依なのであった。


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