擬似転生記

和ふー

第1話 プロローグ☆

 何者かの手による浮上感で彼女は目が覚ます。

 目覚めてすぐに自身よりも巨大な何かによって持ち上げられる感覚に動揺を隠せない彼女。しかし声を出そうにも思ったように声が出てくれない。


「おぎゃああぁ! おぎゃあああ!」


 自分の意思とは異なり、口から出た声は赤ん坊の泣き声のようなもの。動かしにくい体ををどうにか使って周りを見渡しても赤ん坊らしき者は見えない。その時、彼女は自分自身が赤ん坊となっていることを認識する。


(どういうこと?もしかしてこれが世に聞く転生なのか? だけど私は転生前に神様にも会ってないし、前世の自分のことなんて名前すら覚えてないぞ。ああ、なんだかとっても眠くなってきたかも…)


訳の分からないことが多過ぎて混乱した彼女は、頭の使いすぎと泣き疲れによって眠りについてしまうのだった。


―――――――――――――――


彼女が転生を果たしてから一週間が経過した。その頃には彼女もおおよその事情を把握できてきていた。

 彼女は前世を記憶喪失した状態で転生してきてしまったようであったが、幸い前世の知識や経験は覚えていた。実際、赤ん坊であり、誰からもまだ教わってない筈のこの世界の文字を彼女は難なく読めていた。


(文字の読み書きが出来るのはありがたいけど、それなら記憶もそのまま引き継ぎたかったな。何でこんな中途半端なんだか…まあいいけど。)


この世界でメイリーと名付けられた彼女は、そこそこ田舎の街で一番の商会の娘として産まれ、家族構成は両親に兄、姉が一人ずついることが分かった。

 この世界のことをまだ何も知らないメイリーであるが、前世の何となく察することもある。


(商会の子供で上に兄と姉が要るって。将来真っ暗な予感がするな。)


  メイリーは軽く絶望するのだった。

 しかしすぐに気持ちを切り替える。


ばぶばふまあなんとかなるでしょ


ここに前世の知識と経験を兼ね備えたメイリーの新たな人生が幕を開けるのだった。


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