冬といえば

 猫もコタツで丸くなる。そんな言葉があるが、コタツが好きなのは猫だけじゃない。現に俺もコタツで横たわって読書をしている。冬といえばやはり、コタツとみかんだろう。さて、横になってばかりじゃあ体に悪いし、座り直すか、とゴソゴソとしていると足が何かにぶつかった。はて、なんだろうか?


「あら、私の足にぶつかったのは君の足だったのね」


 どうやら舞さんの艶かしい足だったようだ。


「お姉ちゃんだけずるいー。私もー」


 今度は茜が足を絡ませてくる。これはこれでいい。


 いや、俺はさっきから何をしているんだ? まあ、たまにはイチャイチャするのも悪くない。この家に来てから半年、俺にも女性への免疫ができたらしい。免疫を越して女性とイチャイチャするのが楽しくなってきた。いやー、ハーレムはいいな。


「あらあら、二人とも子供ね」


 美里さんはさすが。大人の余裕だ。でも、わがままを言えば美里さんともコタツでイチャイチャしたい。まあ、そんなタイプには見えないが。



 食卓につくとそこにはローストビーフにローストチキンがあり、これぞクリスマスと言ったラインナップだった。あれ、今日はクリスマスイブだったか? いや、今日は12月23日、クリスマスイブイブだ。明日、明後日は土日だ。別に今日クリスマス仕様にする必要はないのでは?


「美里さん、もしかして日にちを勘違いしていませんか? 今日は23日ですよ?」


「あなたが言いたいのは、なぜ土日にクリスマス料理を出さないのか、ということね。理由はあとから話すわ」


 理由? もしかして、土日はみんなが揃わない理由でもあるのだろうか。料理に舌鼓を打ちつつも考える。



「さて、みんな料理を食べ終わったわね」


 いよいよ美里さんから何かの発表の時間になった。


「あなたが来てから半年経ったわね」


 俺を見つめながら言う。確かに半年経ったが、まさかいまさらクビにするのか? もしかして、これが最後の晩餐だから豪華だったのか?


「私の勘違いじゃなければ、あなたは私を含めた三人に気があるはずよ。そして、その三人もあなたに気がある」


 一瞬の静寂。


「同じ屋根の下暮らすのだから、四人の仲がいいのはいいことよ。でもね、それとこれとは話は別。いつまでも宙ぶらりんにすべきじゃないわ。そこで、明日、つまりクリスマスイブを誰と過ごすかあなたが決めなさい」


 誰か一人を選ぶ。果たしてそんなことができるのだろうか。


「私とは駅の中央入口、舞は東入口、茜は西入口で待ち合わせ。あなたは明日、クリスマスイブの朝八時に選んだ人の場所へ行きなさいな。舞、茜、いいわね?」


 美里さんの提案に二人は小さく頷く。


 

 俺はベッドの中で悩みに悩んだ。そして、一つの結論を出した。明日、俺が行くべき場所は――。

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