慣れない住み込み

 晴れて茜の家庭教師になって数日、住み込みをして感じたのは、ともかく居心地が悪い。いや、これは正確な表現ではない。モテたことがない俺には女性に免疫がない。それゆえにどうしていいのか分からないのだ。ともかく三人の怒りを買ってクビになるのは避けなければ。



 そんなこんなでゴールデンウイークを迎えたわけだが、俺は暇だった。とてつもなく暇だった。というのも、大学に友人がいないからだ。いや、正確には。授業が終われば即帰宅して茜の家庭教師をしなければならない。茜は俺と違って友人がいるだろうに、いつも家にこもりっぱなしだ。もしかして茜は学校でいじめにあっているのだろうか? そんな不安から舞さんにこそっと聞いてみたところ「君が来てからよ。大丈夫、そんなんじゃないから。心配なら今度、相談に乗ろうか?」と言ってくれた。


 ここに住み込みを始めてから分からないことだらけだった。なぜ茜は引きこもっているのか? なぜ美里さんは水曜日は上機嫌なのか? いや、美里さんの件は置いておくとして、茜の件は気になる。舞さんに「ぜひ相談に乗って欲しい」と頼んだ。




 そんなわけで舞さんに相談する日になったのだが、何かがおかしい。駅前の広場を待ち合わせ場所に指定されたのだが、家では話しづらい内容なのだろうか。よほど深刻に違いない。ベンチに座ってそんなことを考えていると不意に声をかけられた。


「君、そんなに眉間にしわを寄せてどうしたの?」


 いつの間にか隣に舞さんがいた。かわいらしい白を基調としたワンピースを着ている。いや、清楚といった方が正確かもしれない。


「ほら、行くわよ」そう言うなり、手を引かれて歩き出した。

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