第7話 挑戦の影で
コミュニティセンターでの演奏会が新たな道を開いた後、雅史と神子の前には次々と機会が舞い込んできた。彼らの名前が地域内で広まり、小規模ながらも彼らの演奏を楽しみにしている人々が増えていった。
しかし、成功が続く一方で、内心ではそれぞれが新たな挑戦とそれに伴う不安を抱えていた。雅史は、人前で演奏する度に感じる緊張がなかなか解消されないことに悩み始める。吃音という個人的な課題が、公の場での自信に影響を与えていたのだ。
神子もまた、期待を一身に背負うことのプレッシャーを感じていた。彼女の純粋な心は、人々を喜ばせたいという願いと、失敗への恐れとが交錯し、感情が不安定になることがあった。
ある晩、二人はグループホームの庭で静かに話をする機会を持った。星が瞬く静かな夜、彼らは心の内を素直に打ち明け合った。
「人前で演奏するたびに、心がすごく揺れ動くんだ。喜びもあるけど、緊張でいっぱいにもなる。」雅史がポツリと言うと、神子はそっと彼の手を握った。
「私もよ。みんなに楽しんでもらいたいって思うけど、失敗したらどうしようって…。でもね、雅史さんが隣にいてくれると、勇気が出るの。」
この言葉に、雅史は深く心を打たれる。二人は互いの弱さを受け入れ合い、それでも一緒に進んでいくことの大切さを改めて感じた。
「神子さん、ありがとう。君がいるから、僕も頑張れる。僕たちなら、どんな困難も乗り越えられるはずだ。」
この夜、二人は共に成長することの意味を再確認し、新たな決意を固めた。彼らは自分たちの音楽を、不安や恐れに打ち勝って、さらに多くの人々に届けるために、一歩ずつ前進していくことを誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます