第10話 悪魔の天敵
『※※※※※※※!!!!!』
エンペラーブレイズが声にならない叫びを上げ、魔力を爆発させる。次の瞬間には上空から炎の雨が降り注いだ。
「遅い」
その時にはもう、僕は走り出している。地面を蹴り砕き一気に加速した僕は炎の雨が降り注ぐ前にエンペラーブレイズの眼の前まで迫っている。その全身には、今にも爆発しそうな雷を纏っている。
「《ライトニングブレイク》!!!」
次の瞬間、雷によって光にも迫る超高速の一閃を繰り出す。僕の振り抜いた槍はエンペラーブレイズの胴体を真っ二つに切り裂く。
『※※※※※※!!!!!』
だが、真っ二つに分断したかのように見えたエンペラーブレイズは、炎と炎が粘り強く繋がっており、次の瞬間には分断した上半身と下半身がくっついていた。
「クソっ、、、打つ手なしか、、、?」
『おやおや、随分苦しそうですねぇ?』
超スピード、超威力、超耐久、さらには遠距離攻撃まで兼ね備えている化け物ゴーレムの前には流石に足が止まる。そんな僕の様子を見てデュランは楽しそうに笑う。
(いや、待てよ?このゴーレムは悪魔の権能で作り出しているものだよな?)
僕の脳裏に蘇るのは、かつてのセルスとの会話。夜寝る前のなんてことのないくだらない雑談が頭を過った。
《悪魔はね、黒魔力っていう悪魔特有の魔力で全身を構成してるの。だからいくら殺しても黒魔力が尽きない限り死なない。》
《そんなの、無敵じゃないですか。どうやって倒すんですか?》
《まぁまぁ、話は最後まで聞いてよ。そんな馬鹿みたいな特性を持つ黒魔力にも弱点があってね、それは光属性。光属性で攻撃すれば黒魔力関係なく悪魔を殺せる。》
一人のエルフの冒険譚に出てくる悪魔との戦い、その決着をつけたのも光魔術だ。僕の頭には在りし日の懐かしい記憶がどんどん蘇る。
「悪魔の権能で作り出してるんだから、当然このゴーレムも黒魔力だよな、、、」
『なにボソボソ笑ってるんですか?気持ち悪いですねぇ?エンペラーブレイズ、殺れ。』
僕はニヤリと笑う。それを見たデュランは不快そうな顔を浮かべてエンペラーブレイズに殺害の指示を出す。
『※※※※※※※!!!!!』
次の瞬間、エンペラーブレイズは熱を豪速で放出し加速することで僕の目の前に一瞬で移動する。その時には既に、炎によって象られた右拳は振り放たれていた。
「《ライトウォール》」
『※※※※※※※※※!!!!????』
僕は光魔術を発動して、目の前に魔力によって作られた光の壁を出現させる。その光の壁にエンペラーブレイズの右拳が触れた瞬間、奴の右腕は弾け飛んだ。
(成功!やはりこいつは全身を黒魔力で構成している!!)
さらに言えば、いくら殺しても死なないデュランの謎も解けた。やつも全身を黒魔力で構成しているのだろう、既に人間ではないという訳だ。
「はは、形勢逆転だ!《ライトランス・マシンガン》!!」
次に発動するのは、魔力によって作られた光の槍をマシンガンのように連続で放つ魔術。上級の光魔術だ、さぞかし辛いだろう?
『なっ!?避けろ!エンペラーブレイズ!!』
デュランの叫びも虚しく、エンペラーブレイズは大量に放たれる光の槍を避けきることができずに全身に風穴を開ける。それはさっきみたいに治ることはない。
「死ね、操り人形。《ライトブレイク》!」
全身を穴だらけにされたエンペラーブレイズの目の前に僕は既に居る。そして槍に高密度の魔力で形成した光を纏わせ、全力で振り抜いた。
『※※※※※※※!!!!!』
再び上半身と下半身を分断されるエンペラーブレイズ、だが先程のように再生することはなく、そのまま消滅する。
デュランの顔は一気に青ざめた。そりゃそうだ、自身の奥の手であるエンペラーブレイズを破壊され、フェネクスももう効かない。近接戦闘では絶対にかてることはできないし、既に黒魔力に気付いた僕は奴の再生を破ることが出来る。この状況はもう詰みなのだ。
『ま、待て!!私を殺したら組織が黙っていないぞ!!』
「知るか、今お前を逃したら大量の人が死ぬことくらい分かる。逃がすわけ無いだろ?」
『ッ!?死ねぇ!!!!』
奴の命乞いを無視すると、デュランは両手を翳してフェネクスを5体召喚する。
フェネクスは高速で空中を駆け、僕の心臓を貫こうとするがラウルス・ヒルドによって迎撃される。
『うらぁぁぁ!!!!』
挙句の果てには、慣れていない近接戦闘を仕掛けてくるデュラン。魔戒によって身体能力は強化されているため素人まるだしのパンチが殺人級の威力を誇っているが、放たれる右拳を僕は槍で簡単に弾き返す。
「終わりだ、デュラン。」
僕はデュランを蹴り飛ばし、そう告げる。次の瞬間には僕はデュランの目と鼻の先へ迫っている。
「《ホーリーライトブレイク》!!!」
聖級光魔術ホーリーライトブレイク。ライトブレイクの上位互換で、渦巻くような高密度の魔力で形成された光を僕は槍に纏わせる。
僕は残った魔力を振り絞り、身体強化を限界まで上昇させる。その状態で振り放った一閃は、デュランの上半身と下半身を勢い良く分断した。
『ぐはぁっ!!??、、、』
醜い叫び声を上げたが最後、デュランの肉体から体温が消えていく。
「はぁ、、、まったく、強すぎるんだよ。」
僕は息を切らし、地面に座り込みながらやつの死体を睨みつける。
しかも嫌なことに恐らく、デュランは組織の中では一般メンバーだ。あのアイアンが警戒する割には能力以外は大したことがなかったからな、アイアンなら一秒で奴を殺せるだろう。
だが、それでもこの強さ。特にあの魔戒という術を使ってから馬鹿みたいに強くなったのがヤバい、フェネクスの量も増えたしあのエンペラーブレイズとやらは化け物級に強かった。恐らくだが悪魔教にとって魔戒は奥の手なのだろう。
「まぁ良いや、街に戻ろう。」
人気のない場所で良かった。と呟きながら立ち上がり今日から泊まる宿を探しに街に戻るのであった。
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