今日も藤巻刑事は新人を育てる その五
久坂裕介
出題編
「うーん、どうしてなんだろう……」
すると
「どうしました? 何を考え込んでいるんですか?」
奥野は、答えた。
「えーと。今、色について考えているんですよ」
「色、ですか?」
「はい。
藤巻刑事は、
「なるほど。疑問を持つことは、いいことです。『どうしてだろう?』という疑問が、事件を解決する場合もありますから」
「はい。で、藤巻刑事は知っているんですか。どうして白い粉末なのに、青酸カリと呼ばれているのか?」
藤巻刑事は、説明した。おそらくですが。青酸カリは、シアン化カリウムとも呼ばれます。シアンとはギリシャ語で青という意味の、
奥野は、頷いた。
「なるほど~」
すると藤巻刑事は自分のデスクの、ノートパソコンを操作した。
「そういえば
藤巻刑事はノートパソコンに表示された、
奥野は白鳥という
「白鳥ってあの、多くの
「はい、そうです。隆道氏は白鳥グループの、
「なるほど。それじゃ萌美さんは、
藤巻刑事は、首を
「でも本人にとっては、そうではなかったようです」
「どうしてですか?」
そして藤巻刑事は、説明した。萌美さんには当時、
奥野は、聞いた。
「え? 無理やりって、どんな手を使って?」
「はい。白鳥グループ企業の
奥野は、
「へー。令和元年にそんな
藤巻刑事は、説明を続けた。事件は、隆道氏と萌美さんの結婚披露宴の
奥野は、渋い顔をしながら聞いた。
「そりゃあ、結婚披露宴どころじゃ、なくなりますね」
「はい。警察は当然、萌美さんの
奥野は、
「うーん……。萌美さんの遺体から青酸カリが見つからなかったということは、自殺ではない。でも隆道氏を含めた参加者も、青酸カリを飲ませた犯人ではない。うーん、これは一体……」
すると藤巻刑事は、告げた。
「はい、なので結婚披露宴に参加していた萌美さんの幼馴染の、正悟さんが疑われました」
奥野は、驚いた。
「え? その結婚披露宴に、正悟さんも参加していたんですか?」
藤巻刑事は、説明した。正悟さんを呼んだのは、隆道氏でした。何をするか分からないという理由で、披露宴の会場で
奥野は再び、渋い顔をした。
「うわー、
「いえ。結婚披露宴に参加していた人の話によると、正悟さんが萌美さんに近づいたのは
奥野は、
「ただ?」
藤巻刑事は、説明を続けた。ただ正悟さんが萌美さんに挨拶にきた時、萌美さんは
奥野は、納得したようだ。
「なるほど、確かにあやしい行動ではありませんね。で、正悟さんは、それからどうしたんですか?」
「結婚披露宴の参加者の話だと、正悟さんはそれからすぐに帰ったそうです。でも……」
奥野は、再び興味深そうに聞いた。
「でも?」
藤巻刑事は、説明した。結婚披露宴会場で萌美さんが亡くなったので、正悟さんが住んでいたアパートも警察によって調べられました。すると正悟さんも、青酸カリが
部屋には青酸カリが入った、
奥野は腕組みをしながら、更に考え込んだ。
「うーん。そうすると正悟さんが、怪しいですね。萌美さんに青酸カリを飲ませたのも、正悟さんかも知れません。青酸カリが入っていた小瓶を持っていたので。でも結婚披露宴会場に行った時は、持っていなかった。警備員が身体検査をして、怪しいモノは持ってないと判断したので。うーん、正悟さんは一体どうやって結婚披露宴会場に、青酸カリを持ち込んだんでしょうか?」
すると藤巻刑事はキッパリと、答えた。
「いえ。正悟さんは結婚披露宴会場に、青酸カリを持ち込んではいません」
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