1. 小学校卒業式

「咲有波香」

「はいっ!」

今日は、小学校の卒業式。

ほとんどのみんなは、地元の中学に進むんだけど、何人かは受験をして外部へ。

私もその一人なんだ。

咲有波香、12歳。

寂しいけど、晴れて今日、五月野小学校さつきのしょうがっこう卒業です‼

卒業式練習の通り、赤いテープまで歩いて行って、一歩前へ出て、校長先生から左手、右手の順で卒業証書を受け取る。

目を合わせてお辞儀して、左手に持って右足を後ろにして右回り。

前に出てる右足を戻して、左足から階段を降りる。

袴のお作法も忘れずに!

私が受験した中高一貫校は、すっごい偏差値が高くて、合格するか全然分かんなかった。ていうか、塾の先生には、合格率1%って言われたくらいなんだ(受験勉強を始めるのがめっちゃ遅かったから)。

だから、安全地帯で袴にした方がいいかなって思って袴にしたんだけど…。

私には、好きな人がいる。その人は…ほら、私の次、すぐに呼ばれた。

「篠原来矢」

「はい!」

篠原くんだ。

クラスがえされた5年生の時から、篠原くんは出席番号の関係で、席がいつも近かった。

だから、少し話したりとかしてたんだ。

そういうことをしてるうちに、篠原くんって優しいんだって、改めて気づいて。一緒にいて楽しいなって思って、それで私は篠原くんを好きになった。

嬉しいことに、篠原くんとは同じ学校!

どこの中学に行くかとか、聞いてもなかったのに、受験会場にいたんだよね。

その時もちょっと話したんだ!

で、篠原くんが異常に理科が得意ってことを知ったり、楽しかったな…!

晴れて2人とも合格で、本当によかったよ!

篠原くんの動きは全てキリッとしてて、ちゃんと卒業式練習に真摯に取り組んでたんだな、って感じがする。

でも、こうやって体育館にいるのも、今日が最後か。

後ろにいる在校生と保護者の視線も、いつもなら圧迫感があるのに、今日は暖かい。

後輩にも何人か友達はいるから、1年後、同じ中学に入ってくれたらいいな。


「2組~~~!!全員集まれ~~~!クラス写真撮るぞ!!」

篠原くんはクラスの人気者で、私も結構明るいほうではあるけど、頭も良くて運動神経も良くてイケメンで、もう最高の王子様って呼ばれてるくらいすごいんだ。だから、こうやって大声を出すとすぐ人が集まる。

そんな人に恋して、フラれる結末しかないんだけどね…。

「おっ、咲有さん。ここ来て!」

篠原くんが早めに来た私に、自分の隣を指さして言った。

「えっ、いいの?」

いや、いいの?とか言ったら気持ちが丸見えでしょ!波香!

自分で自分にツッコミを入れて恥ずかしくなるけど、篠原くんはその台詞セリフに驚いたり恥ずかしがったりする素振りは無く、少し安心してしまった。

「34、35、36、37!全員揃った!撮ってもらうぞ!」

いつの間にか目の前に親たちが集まって、パシャパシャと音がし始めている。

「咲有さん、笑顔!」

「あっ、うん!」

クラスの中のど真ん中で、少しぎこちない笑顔をした私と、全開の笑顔の篠原くんが写っていた。

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