『臨場』という名の悪魔祓い

神崎 小太郎

プロローグ

 この章はコンテスト用に描いています。読者の皆さまは本編からご覧ください。



 都会の喧騒を離れた聖護幼稚園は、夜が訪れると、まるで異世界への扉が開くかのように静寂に包まれる。その静けさを唯ひとつ破るのは、近くの公園で風に揺れる無人のブランコの音のみ。


 そこで、男がひとり謎の死を遂げていた。戸丸東警察署の刑事たちは現場周辺での情報収集に励んだが、犯人を捕らえるには至らなかった。


 しかし、幼稚園の平穏は、捜査が終焉を迎えると、怨霊が囁くわらべ歌によってじわじわと侵されていた。そのとき、やさぐれた刑事が立ち上がる。


 二十年前の悲劇――ひよりという小さな魂が失われた日。そして、その後に起こった一連の不吉な事件を解明するため、野々村刑事は、若き部下と園長の幸子と共に、忘れ去られた謎に挑む。彼らは色褪せた記憶を辿り、謎が科学では解けないと悟り、静かに悪魔祓いの儀式を行う。


 命日の深夜、丑三つ時に、幼稚園の象徴である黄色い帽子をかぶったひよりの怨霊が、この世に静かに現れる。母親は娘への絶え間ない愛と、死すらも恐れない決意を胸に、呪文を唱え続ける。


 だが、怨霊はその呼びかけを拒否し、魔法陣は崩壊の危機に瀕する。そんな絶望的な時に、意外な救いが現れる。ひよりの悪魔祓いに参加した百合子たちの父親が復活し、母親を救い出し、絶望を希望に変える。


 ひよりは母親の愛に心を動かされ、精霊に転生する。そして、ゼウスの神が見守るうさぎ座へと旅立ち、皆はひよりの魂が安らかに眠れるように祈る。


 翌日、野々村は、園児たちがメタセコイヤの新芽に水をやる姿に感動する。幸子は野々村に百合子との結婚を勧めるが、彼はそれを軽く笑い飛ばす。


 野々村は、やさぐれた刑事として、そしてひとりの人間として、この不思議な事件の解決に尽力した。彼が得たものは、明らかになった真実と、失われた命への深い哀悼の念だったのかもしれない。

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