【KAC20247】その赤って本当に赤?

きんくま

その赤って本当に赤?

新参ながら隣国まで名が轟くブラン商会。

そんなブラン商会の会長は船で遠く離れた国を目指していた。


会長にはごく親しい者にしか明かしていない秘密がある。

『異世界転生者』、会長の知識はこの世界で有利に働くことが多い。

しかし逆もある。



「青いたこはないよなぁ」


会長にとっての異世界は前世の常識で測れないことが多い。

先ほども空飛ぶ青い蛸に襲われ撃退した。

そして船員たちはそれを躊躇いなく食べた。



「船乗りさんは別としてうちの子まで食べるなんてさ…」


ここで会長はふと不安に駆られた。

会長は猫の特徴を持った種族だ。

そして会長が”うちの子”と呼ぶのは犬の特徴をもつ種族の双子の子供。



「犬とか猫って『赤』を認識できないよね…」


犬は青が一番認識しやすい、だから躊躇いなく食べたのか?

自分は色を認識できるが、子供たちはどうだ?

常識の押し付けは良くない。

分かっていても会長は確かめずにはいられなかった。



「二人ともちょっときてー」


会長は双子に手招きする。

そしてパタパタと駆け寄る子供たちを撫でながら質問した。



「ねぇ、赤と言えば何を思い浮かべる?」


「「りんご!」」


良かった。

そう思ったが、すぐにその考えは打ち消された。

自分の知らない赤を赤と認識していたら?

確かめようがない、それでも何故か会長は質問を止められなかった。


青は?

緑は?

黄は?


次々と聞いた。

きっと会長は同じ景色を観れていなかったら?

そう考えると、不安で悲しかったのだろう。


幾つもの色を聞き、最後に会長は尋ねる。


「白と言えば?」


双子は顔を見合わせて笑顔で会長の髪を指さした。

会長の髪色は晴れた日の雲の色。



「そっか…そうだよね」


会長は自分が愚かだったと反省した。

愛しい子供たちの白は自分、それは会長の心を満たした。

今まで考えていた不安が吹き飛とんだ会長は我が子を抱きしめる。


例え観てる景色の色彩が違ったから何だと言うのだ。


「もし見てる色が違っても、一緒にいる事実は変わらないよね」

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